キャリア・教育

2016.02.25 07:01

シンギュラリティ大学CEOが語る「新しいリーダーに必要なこと」

シンギュラリティ大学のロブ・ネイルCEO / photograph by Ramin Rahimian

シンギュラリティ大学のロブ・ネイルCEO / photograph by Ramin Rahimian

人類の最も困難な課題に加速度的に進化するテクノロジーで取り組むため―。「未来に最も近い大学」を率いるロブ・ネイルCEOが未来のリーダー像を語る。

シンギュラリティ大学で心がけているのは、リーダーがテクノロジーや未来について新しい視点を見いだす一助となるような授業だ。未来をつくり上げていくにはどのような役割を果たすべきか―。シリコンバレーのベンチャーなど地元の専門家を中心に国外の専門家も多数登壇するが、参加者は受講後、他人とは違う未来像やビジョンを垣間見たように感じるはずだ。

次世代のあるべきリーダー像は、現代のリーダー像と根本的なところは変わらない。現状に疑問を投げかけ、正解を模索し続ける姿勢だ。とはいえ、今後、リーダーを取り巻く環境は激変する。テクノロジーの進化のペースがエクスポネンシャルに速まるからだ。その結果、企業や指導層へのプレッシャーが増すだろう。

まず、テクノロジーの進化で業界の参入障壁がかつてないほど低くなっている。エネルギーにせよコンピュータにせよ、起業が格段に楽になった。クラウドソーシングのおかげで、資金・要員集めも楽にできる。もはや投資家など必要ない。

一方、大企業がイノベーションを起こすには、巨費を投じて新プロジェクトを立ち上げる必要があるし、マンパワーも必要になる。若く機敏で、順応性に富み、ハングリー精神と情熱にあふれ、資本をほとんど必要としない起業家と競うのは大変なことだ。

このように、次世代のリーダーには、かつてないほど大きく前進できる環境が整いつつあるが、半面、優位性を保つことが非常に困難になっていく。トップレベルの製品を開発しても、新たな新製品が容易に生まれてくるためだ。

だから、これからのリーダーには、「順応性」が最も重要な特性のひとつになる。変化のペースに追い付き、新しいツールや知識を仕入れ、状況に順応できるようにすることが大切だ。絶えず新しい機会をうかがい、その業界の最先端で走り続けられるように、変化に敏感であることが求められる。

次世代のリーダー像で次に面白いトレンドが、(35歳以下の)ミレニアル世代だ。彼らはお金のためだけに働くのではなく、いかにして世界に影響を与えられるかという仕事の「意義」にこだわる。今後は、そうした意義深い機会を見つけ、自分のビジョンを人とシェアすることが、リーダーの成功の決め手になる。つまり、世の中の問題を解決し、世界を良くすることが先で、収益はその成果としてついてくるという考え方だ。

時代は、こうした新統合ビジネスモデルへとシフトしており、世の中のために良いことをやっている企業は多い。例えば、われわれも協力しているホームセンター大手のロウズ。ユニセフ(国連児童基金)と提携し、世界の水不足問題に新しい解決法を見つけるべく活動している。人類の大きな課題に取り組むことで、競合他社との差異化を図っている。

次に(アイルランド系)産業機器メーカー大手のインガソール・ランド。同社は、われわれが(昨年)スポンサーになって募集した水不足問題解決プログラムに参加し、冷暖房空調設備を使って空中の水を採取するという斬新な解決策を編み出した。将来、大きなイノベーションにつながるかもしれない。世界の重要な問題を解決することは、新しいビジネスと収益を生む可能性を秘めている。

次世代のリーダーで思い浮かぶのが、米テスラモーターズ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクだ。非常に面白い人物で、卓説したエンジニアにしてイノベーターでもある。テスラで電気自動車市場の推進に一役買ったように、宇宙産業も開拓していくだろう。

グーグルの共同創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンも、複数の気球を成層圏に飛ばし、全人類に無料のインターネット接続を提供する一大研究プロジェクトに資産を投じている。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOも無人航空機による同様のプロジェクトを口にしている。(後編に続く)


世界中から英知が集るシンギュラリティ大学

シリコンバレーの広大な米航空宇宙局(NASA)リサーチパーク内にあるシンギュラリティ大学は、世界にふたつとないシンクタンク兼インキュベーターだ。

アメリカの著名未来学者レイ・カーツワイルとXプライズ財団・創設者兼会長の起業家ピーター・ディアマンディスが共同で2008年に立ち上げた。「エクスポ ネンシャル(飛躍的・指数関数的に成長する)・テクノロジー」を合言葉に、ロボット工学や人工知能(AI)、コンピュータ、ナノテクノロジー、デジタル製 造・医療、デジタル生物学など、最先端の講義が繰り広げられている。

受講生は、エンターテインメント大手21世紀フォックスからチョコレートメーカー大手ハーシーまで、フォーチュン500社の幹部をはじめ、最新のイノベーションで知られる国内外のエクスポネンシャルな起業家、学者、著名人、政府関係者など、そうそうたる顔ぶれだ。

受講でインスパイアされた各界のリーダーが、貧困や環境問題など世界の難題解決に取り組み、世の中をより良くして「10億人に影響を与える」ことが究極の使命。「シンギュラリティ」とは、コンピュータが人類の知性を超える技術的特異点のこと。


sam
『Forbes JAPAN』4月号(2月25日発売)では、「『ゼロからイチ』を生むリーダーシップ」特集を掲載。世界が注目!「未来のビル・ゲイツ」30選と称して、シンギュラリティ大学のロブ・ネイルCEO独占インタビューをはじめ、ビル・ゲイツのリーダーシップに関する記事、ベン・ホロウィッツが語る「世界を変えるチェンジメーカーに必要なこと」、フォーブス誌恒例の「30 Under 30(30歳以下の有望な若手リーダーたち)」を誌面で紹介する。【4月号の目次、購読はこちら

文=肥田美佐子

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