フェイスブックは、今後数か月以内にメッセンジャーアプリ内で企業から顧客にメッセージ広告を送信できるようにするという。企業が無分別にメッセージを送らないよう、対象は過去にやり取りをしたことのあるユーザーに限定される。テッククランチはフェイスブックが広告主に送ったリーク資料を入手し、この新サービスが今年の第2四半期にも立ち上がる予定だと報じた。
現在、メッセンジャーには8億人ものユーザーがいるが、フェイスブックはマネタイズをしていない。ユーザーらは突然、企業からメッセージが送られてきたらスパムのように不快に感じ、TelegramやKikなどの他サービスに乗り換えてしまうかもしれない。このため、フェイスブックとしてはメッセンジャー内での広告配信を慎重に進める必要がある。
ティーンエイジャーたちに人気のKikでは、約80もの企業がチャットボットを使ってユーザーと会話している。筆者もKikを利用しているが、先日はバーガーキングからチキンナゲットとミルクシェイクのクーポンが送られてきた。特に不快に感じなかったのは、過去に筆者がバーガーキングのボットと会話をしたことがあったためだ。
筆者の場合はチャットボットに関する調査のために自らバーガーキングのボットに接近したが、一般的にはユーザーがチャットをしてくるまで広告配信ができないというのは、広告主にとって歯がゆいことかもしれない。筆者は送られてきたクーポンを使用しなかったが、バーガーキングにとっては自社のアプリをダウンロードしていない筆者のような顧客にリーチできたメリットは大きい。
しかも、Kikを経由することで、スマホのロック画面という最高の広告スペースにノーティフィケーションを表示することができるのだ。
ユーザーに不快感を与えるリスク
「若者世代は子供の頃からSMSを使って友人と交流している。我々は彼らの習慣を変革するのではなく、さらに発展させようとしているのだ」とKikでメッセンジャーサービスの責任者を務めるマイク・ロバーツは話す。
こうした先行事例はあるものの、フェイスブックがメッセンジャーに広告を入れたらユーザーに不快感を与えるリスクはある。フェイスブック内にも広告を掲載しているが、それが成り立っているのは、ユーザーが友人たちの投稿を受動的に消費しているからだ。これに対し、よりパーソナルな場であり、自らメッセージを送信するメッセンジャーでは事情が大きく異なる。
だからこそ、フェイスブックはこれまで長い時間をかけて準備を進めてきたのであり、サービスのリリースは、「Business on Messenger」(ビジネス用メッセンジャー)を立ち上げてから一年以上が経過する今年の第2四半期を予定している。Business on Messengerの責任者であるFrerk-Malte Fellerによると、同サービスを利用している企業は現在のところ24社程度に止まっているという。顧客には、ハイアット・ホテルズ、スプリント、Canadian telco Rogers、ウーバーの他、EC企業のZulily、Everlane、Shopifyなどが含まれる。
例えばEverlaneの場合、ユーザーはカスタマーサービスの担当者とメッセンジャーを使って会話することができる。同社の社員2名程度が一日200件ほどの問い合わせに対応しているが、大半は注文した商品の追跡に関する質問だという。現状はメッセンジャーに決済システムが導入されていないため、ユーザーはEverlaneの商品をメッセンジャー内で購入することはできない。
この点についてFellerは、企業はトランザクションばかりを追求するのではなく、顧客と継続的にコミュニケーションを取って関係を深めることが重要で、メッセンジャーはその機能を果たしていると話す。
「企業は、友達や家族との会話と同じように顧客とのやり取りを大切にする必要がある。そのために、企業はより深く顧客ニーズを理解しなくてはならない」とFellerは言う。
ユーザーが企業からのメッセージを迷惑行為と受け取らなければ、メッセンジャー広告はフェイスブックにとって新たな収益を得る有望なサービスになるだろう。