元Mozilla社員開発の「本当に使える顔認識カメラ」 250ドルで発売へ

face recognition / Shutterstock

MozillaでブラウザFirefox OSを手掛けたアンドレアス・ガルは、現在のIoT(モノのインターネット)について、「“スマート”の名が付く製品のほとんどは、実際にはそれほどスマートではなく、言葉だけが独り歩きしている。デバイスに搭載されているソフトウエアは、インターネットと接続し、スマートフォンからの操作を可能にする程度の能力しかない」と評価した。

彼は自らの不満を解決するため、スタートアップSilk Labsを立ち上げ、IoTデバイスにより適したオペレーティングシステムの構築に取り組んでいる。シードラウンドで250万ドル(約2億8,000万円)を調達したSilkは2月16日、初めての商品となるWiFi接続型セキュリティカメラ「Sense」をクラウドファンディングサイトKickstarterで発表した。Senseの販売価格は250ドル(2万8,000円)で、今年暮れごろの出荷を予定している。

カメラ向けに改作されたクアルコムのSnapdragonモバイルチップセットを搭載したSenseは他のセキュリティカメラと違い、録画ビデオを常時クラウドに送ることはしない。人やペットのような特定の物体を識別したうえで、例えば知らない人物を検知すると、デバイスはユーザーに知らせ、クラウドにビデオを送り始める。

既存のセキュリティカメラの大半は、デバイスそのものの処理能力は小さく、情報処理の大半はクラウドで行われる。膨大な録画ビデオは企業のクラウドサービスに送られるため、ハッカーに攻撃されるリスクをはらむ。“見かけだけのセキュリティ”と言われるのはそのためだ。また、家庭の内側の光景が企業のリモートサーバーに送られ続けるのは、ユーザーにとって気持ちのいいものではないだろう。

Silkが提供しようとするもう一つの画期的なサービスは、端末をつなぐ暗号化技術だ。デバイスからクラウドに送られたビデオには、ユーザーのスマートフォンでしかアクセスできず、会社はデータの閲覧すらできないという。グーグル傘下のNestのホームセキュリティカメラでは、会社がスマートフォンから企業のサーバーに送られたデータ全てを閲覧できるのとは対照的だ。

SilkはSenseと他のデバイスやサービスをつなぐためのソフトウエア開発にも乗り出し、デバイスを活用したユニークなアイデアも募っている。SilkはSenseのようなハードウエアの構築を目指しているわけではなく、ハードウエアメーカーにSilkのシステムに対応したデバイスの開発を任せたいと考えているが、ガルはMozillaでの経験を通じ、ハードウエアメーカーに新たなプラットフォームを導入させる難しさを熟知している。

グーグルのアンドロイドとアップルのiOSへの対抗をもくろんだ第三のモバイルプラットフォームFirefox OSは、スマートフォン市場で大きな成果を出せず淘汰された。

Firefox OSに携わった仲間を連れて昨年6月にMozillaを去ったガルは、新たな挑戦について、「IoTデバイスメーカーは自身のソフトウエアを持っているが、ソフトウエアのことはソフトウエアの専門家がやった方がいい。我々はその役割を担いたい」と語った。

編集=上田裕資

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