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田中翔平 代表取締役社長 / 写真=若原瑞昌(D-CORD) スタイリスト=井田正明 ヘアメイク=SUGO(Luck Hair)

インターネットを通じて資金の貸し手と借り手を結びつける「P2P(Peer-to-peer)」型の金融サービス「ソーシャルレンディング」が、日本でも少しずつ根付き始めている。ラッキーバンク・インベストメント(LBI)は、この分野で不動産特化型ファンドを始めた先駆け的存在だ。

LBIは、2014 年春の会社設立半年後に第1号ファンドを公開し、わずか1年で累計募集金額が30億円を突破した。全案件に不動産担保を付けて貸し倒れリスクをヘッジした商品設計が特徴。6~10%の高利回りにもかかわらず1万円単位から始められる手軽さが、30~40代を中心に支持されている。

ソーシャルレンディングは、多数の個人からお金を集めて、銀行の融資が回りにくい中小事業者へ橋渡しをするというもの。その運営形態から「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれる。ただし、資金を集めてファンド化する機能が重要なのではない。既存の金融機関や機関投資家などのプロの手を経ないことに加えて「社会的意義のある目的に共感した、多くの一般消費者が主役となる新しい金融の仕組み」だと、LBI代表取締役社長の田中翔平は強調する。実際、同社のファンドのユーザーは、限られた富裕層ではなく、年収500万円から800万円の一般サラリーマンが多くを占める。

一人当たりの平均投資金額も300万円前後だ。自分のライフプランに照らして、複数ある投資先のポートフォリオの一つとして、不動産投資を組み込んでいるという。

既存の銀行とは喧嘩しない共存共栄の道

ソーシャルレンディングは、結果として、金融機関をバイパスするルートを開拓することになる。そのため「フィンテックで金融機関がいらなくなる」という見方もあるが、「それは違う」と田中はいう。

ITの発達によって銀行の仕事が細分化することはあっても、その役割がなくなることはない。既存の金融機関にとってかわるのではなく、彼らの視線が届かない部分にフォーカスするという。あるいは、同じ案件をシェアすることもある。

たとえば、ある企業が10億円のプロジェクトを進めるに当たって、銀行では7億円の融資枠が上限だったとする。足りない分を他で調達できなければ事業が回らない。これに対して、残りの3億円をソーシャルレンディングで融資するのである。リファイナンスまでの“つなぎ融資”、銀行やノンバンクが嫌がる短期融資にも対応する。期限前返済のペナルティもつけないため、機動的に利用しやすい。

「銀行だけでカバーできない穴を埋めるのが、ソーシャルレンディングの役割です。むしろ銀行と共存共栄できる協調融資に近い。それによって銀行も安心して融資を実行でき、事業者はプロジェクトを稼働できる。そして我々はスプレッドの取れる融資ができる。三位一体の仕組みです」

付加価値の創出と街の活性化につながる投資に共感が広がる

田中が不動産にフォーカスした背景には、資産コンサルティング会社での経験がある。不動産証券化による小口化商品を組成する事業に携わる中で、田中は「複数で持つことによって一人当たりの投資額を少額にできること。デリバティブや金融商品と違って、実物資産の不動産に紐づけられることによって、日本人にとって安心感のある商品設計ができること」を学んだ。

ただ、小口化商品の顧客は、年配の富裕層が多く、当時、在籍していた会社は対面販売を基本にしていた。数億円単位で投資するケースがほとんどで、いわば一般消費者には“閉じられた世界”だ。これに対して田中は、ネットを使って幅広く開放すれば、そこにはニーズがあるのではないかと考えたのである。

「幸い、当時は日本のソーシャルレンディングに不動産特化型がほとんどありませんでした。不動産を核にすることで、スタート時点で独自性が出せるうえに、将来的に我々が商品バリエーションを広げるときに国際展開も考えられると思いました」 と、田中は起業の動機を語る。

不動産は国民生活や企業活動に欠かせない基盤だ。にもかかわらず、その販売の担い手である不動産業そのものに、大きなボトルネックがある。ここに新しいサービスの可能性を見出した。過去20年間で銀行の貸出額は約400兆円から250兆円へ激減した。そのしわ寄せを受けたのが中堅・中小企業だ。

また、国内で不動産業に従事する法人は約30万社に及ぶが、そのうち東証に上場しているのはわずか110 社。不動産業は、ほとんどが中小零細企業だが、そこに資金が回らない。大手デベロッパーが手掛ける大型開発プロジェクトには、昔も今も数百億円単位の潤沢な資金が投入される。だが、金融緩和で“金余り”の時代と言われても、中小企業向け融資の増加にはつながらない。

中小不動産事業者が多く手掛けるビルのリノベーションやコンバージョンなどのプロジェクトは、一件当たり数億円単位と投資額が小さい。その投資ができれば不動産の付加価値を高め、優良な都市ストックの形成につながる。たとえば、大資本の目が届かない、古くからの商店街が賑わいを取り戻し、人が集まり、雇用が生まれる。これがひいては経済循環に貢献するようになるだろう。ソーシャルレンディングなら、その回路をつなぐことができる。「個人の投資が企業への融資を通して事業を支援する」という仕組みができるわけだ。

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ソーシャルレンディングは、多数の個人からお金を集めて、銀行の融資が回りにくい中小事業者に橋渡しをするサービスだ。

そのため、LBIが組成するファンドは単に不動産に紐づけるだけではなく、付加価値の創出や地域活性化につながることを重視した。「融資先の選定に当たっては、事業者を精査するという通常のプロセスに加え、具体的なプロジェクトの市場性も検討します。たとえばリノベーションの内容、入居予定のテナントやターゲット層、業態の集客力まで踏み込んで調べ、成功の確率を判断します。出口戦略まで想定していれば、万が一デフォルトしても、流動性を確保できますから」

プロジェクトの詳しい情報を把握して開示することは、ユーザーの投資判断にも役立つ。単に利回りの高低だけには左右されず、自分の投じた資金がどう生かされ、地域の活性化につながっているかイメージしながら選んでいるユーザーも多いという。それがソーシャルレンディングの「ソーシャル」たる所以でもある。

寄付型クラウドファンディングである「ふるさと納税」が「街おこしへの貢献」とすれば、LBIのファンドは「街づくりへの参加」という性格を持つ投資といえる。

不動産市場のクラッシュも怖くない

米ブルームバーグによると、世界の不動産ソーシャルレンディングサービス市場は、2015 年に3,000億円を超えた。ここ数年は前年比2.5 倍の勢いで増加。日本ではまだまだ認知度が低いが、成長が見込める分野だ。

実物資産である不動産はインフレに強く、万が一の事態でも株や債券のように“紙くず”になるおそれはない。とはいえ、不動産マーケットも揺れ動くだけに不安要素がないわけではない。これに、田中はどう対応するのか。

「マーケットをにらみながら、優良案件の発掘に努力するしかないでしょう。ただ、東京都心5区の不動産は、仮に経済がクラッシュしても必ずニーズはある。日本経済がリセッション入りして不動産価格が下落したとしても、収益還元法などの指標面から下方硬直性がある。資産性だけではなく、収益性にも目を向ければ、日本の不動産は海外のプレーヤーにとっての投資妙味が増すことになり、流動性が確保される。むしろ一度クラッシュしたら、ソーシャルレンディングのボトムが見え、そこでファンダメンタルズがわかる。そういう波を乗り越えて成熟していくのでないでしょうか」

若きアントレプレナー、田中は冷静にマーケットを見極めている。

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田中翔平◎1990年生まれ。船井財産コンサルタンツ(現・青山財産ネットワークス)に入社後、個人コンサルティング事業部にて資産コンサルティング業務及び、相続税対策に従事。不動産事業会社を経て、2014年5月にラッキーバンク・インベストメントを設立。26歳。(photo:スーツ 262,000円、シャツ 42,000円、タイ 20,000円(ダンヒル/リシュモン ジャパン 03-4335-1755)※他、スタイリスト私物)

ラッキーバンク・インベストメント
所在地:東京都中央区八重洲1-1-3 壽ビル9F
貸金業者:東京都知事 (1) 第31541号
金融商品取引業者:関東財務局長 (金商) 第2807号
宅地建物取引業者:東京都知事 (1) 第97921号
加入協会:日本貸金業協会
https://www.lucky-bank.jp/

文=木村元紀

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