NY市警が市民のモバイル通話を無断傍受 人権団体が抗議の声

James Darell / gettyimages

スティングレイ(Stingrays)は最近、プライバシー保護活動家の間ですっかり有名になったデバイスだ。Harrisが製造するその機器は、数キロメートル範囲で行われた通話やテキストのやり取りをすべて傍受する。米国の警察権力はそれを利用して犯罪に関わると推定される情報を収集しているが、その対象は罪のない人々の通話記録にも及んでいる。

ニューヨークの人権団体、NY自由人権協会(NYCLU)は2008年から2015年5月にかけてスティングレイを用いたニューヨーク市民の通話・通信の傍受が1016回も行われたことを突き止めた。

「携帯電話の所有者は、軍事レベルの監視機器に身をさらしているようなものだ。ほぼ全てのニューヨーカーのプライバシーが筒抜けになっている恐れがある」と、NYCLUのエグゼクティブディレクター、ドンナ・リーバーマンは述べている。
「NY市警が罪のない人々を監視下に置いてきた歴史を考えれば、スティングレイのような傍受機器の使用に関しては、少なくとも事前に捜査令状をとった上で、傍受がなされるべきだ」と彼は指摘している。

スティングレイはIMSI(加入者識別番号)キャッチャーという名前でも知られている。IMSIキャッチャーは携帯電話の基地局を偽装し、IMSIを収集する。IMSIはSIMカードとリンクしているため、誰の携帯電話かを特定できる。人権活動家たちは、この方法によって、適正な監督や個人情報の保護を行わずに、大規模な監視が実行されうると主張する。

NY市警はスティングレイを用いたデータ収集の実態を、「捜査中の案件に絡むデータが収集された場合に限って」、公開する義務があるとされている。この事実はアメリカ自由人権協会(ACLU)の調査で明らかになった。

NYCLUは以前にも、エリー郡の保安部門が過去4年間でStingraysを47回使っていたという記録を発表している。

フォーブスによる警察技術展示会の取材でも、IMSIキャッチャーの売れ行きの良さが分かっている。中国や英国、イスラエルにもメーカーが存在し、圧倒的大手のHarrisからマーケットシェアを奪おうと狙っている。装置の販売価格は最高で14万8,000ドル(約1600万円)にのぼるが、一部のハッカーらは5,000ドル(約56万円)程度でこのデバイスを作成可能だ。

編集=上田裕資

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