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2016.02.16

国内市場が萎むコカ・コーラとペプシコ 途上国に照準

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両社の新興市場への進出は、悪評高いたばこ業界の戦略と同じ方針に基づいている。米国のたばこ市場は健康意識の高まりから縮小が続いており、メーカー各社は中低所得国の貧困層を標的としている。

こうした国の公衆衛生当局は、国民の健康についてより重大な問題を数多く抱えており、肥満や糖尿病、心疾患、特定のがん、その他の病気への対策が後回しにされている。そうした状況が、これら各国の炭酸飲料水の消費量増加を許している。

ハーバード公衆衛生大学院の研究者らが2013年に発表した調査結果によると、世界全体の死者数のうち約18万人の死因が肥満に関連していた。さらに、その肥満の一因は炭酸飲料水の摂取だった可能性がある。また、18万人のうち78%は中低所得国の国民だった。

特に両社の新興市場進出の「象徴」となり得るのがメキシコだ。両社は過去およそ30年にわたって同国市場に集中的に投資を実施。その結果、国民の炭酸飲料水からのカロリー摂取量は1999~2006年の間に2~3倍に増加した。メキシコの炭酸飲料水の1人当たり消費量は2013年、世界トップクラスの135リットルにまで急増。2型糖尿病の患者数は世界最多となり、肥満の子供の数は世界で4番目に多く、成人の肥満も1, 2位を争う多さとなっている。

この危機的状況を受け、メキシコ政府は2014年に1リットル当たり1ペソの「ソーダ税」を導入。炭酸飲料水の価格を約10%引き上げた。その後に発表されたデータによると、増税によって平均消費量は少なくとも6%減少したとみられる。

しかし、同様の施策を実施している途上国はほとんどない。消費量の増加に伴い、肥満関連の内科疾患や医療費は今後、膨れ上がることになるだろう。

CSPIは報告書で、新興国は炭酸飲料水の広告などに対して断固たる措置を講じる必要があると指摘。砂糖の摂取と健康問題に関する啓蒙活動の実施や20%のソーダ税導入による健康プログラムへの財源確保、学校や政府関連施設への炭酸飲料水の持ち込み禁止、炭酸飲料水のボトルへの警告ラベル貼付の義務化などを推奨している。

編集 = 木内涼子

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