スポーツ分野で活躍のRFIDチップ NFL選手らの動きをライブ追跡

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クレジットカードの安全性を高めるために使われているICチップが、アメフトの世界にも大きな変革をもたらしている。NFL(米プロフットボールリーグ)は、1年ほど前から選手の肩パッドに25セント硬貨ほどの大きさのRFIDタグを左右各1個埋め込んでいる。

これにより、試合中の選手の位置を正確に把握し、タグに内蔵された加速度センサーで選手のスピードをトラッキングすることが可能になった。この技術を提供しているのは、シカゴに本拠を置く位置情報ソリューション企業のゼブラ・テクノロジー(Zebra Technology)だ。

NFLの全スタジアムに設置された20基のレシーバーが、RFIDタグから毎秒25回発信される無線信号を受信し、カリフォルニア州サンノゼにあるZebra Technologyの専用サーバへ120ミリ秒で伝送している。

現状、取得したデータは主に放送局が使用し、選手の正確な位置やスピードをリアルタイムでテレビに表示している。NFLファンにとっては目新しい情報ばかりで、テレビ観戦を一層面白くしている。

「NFLのスタッツ(選手の成績)は、四半世紀もの間何も変わっていなかった」とゼブラ・テクノロジーで位置情報ソリューションを担当するジル・ステルフォックス(Jill Stelfox)は話す。新たにデータを取得できるようになったことで、プレーごとの選手の位置やスピードを高い精度で割り出し、ゲーム分析に役立てることが可能になった。

最近ではコーチも練習でチップを活用し始めており、多くの選手が心拍数モニターや脱水症状を検知するパッチを装着している。ゼブラ・テクノロジーのRFIDタグはBluetooth対応なので、各選手の生体情報をリアルタイムに取得することが可能だ。マイクロソフトのSurfaceタブレットを使うと、選手が走り過ぎているときや、脱水気味のとき、心拍数が上がり過ぎているときなどに、専用アプリに警告が表示される。現状、NFLは試合中に選手の生体情報を取得することを禁じているが、いずれは解禁されるとStelfoxは予測している。

RFIDは第二次世界大戦中に開発された技術だが、1990年代に研究者たちがインターネットを利用するようになってから広く普及した。これまでゼブラ・テクノロジーは主に製造業や流通業でRFIDを活用してきたが、2014年からNFLに技術提供を始めた。当初は18のスタジアムで情報収集を開始し、現在では全てのスタジアムでデータをトラッキングすることが可能だ。同社はNBAなど他のプロスポーツにもチップの活用を提案しているが、導入には至っていない。

「NFLとの取り組みは、スポーツ選手のトラッキングにおいて世界最大規模だ。これは最先端のテクノロジーで、試合に例えればまだ第1クォーターにいるようなものだ」とステルフォックスは話す。

編集=上田裕資

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