ゴールドマンサックスが指摘するのは、「英国がEUから離脱すれば外国人投資家が動揺し、経常赤字の改善に必要な資本流入が枯渇する可能性がある。そうなれば、経常赤字はより切迫した問題になる」「外国からの資金の流入は、英国が経常赤字を改善するために必要なものだ」という点だ。
また、「英国の経常赤字には改善がみられるものの、依然として同国経済の脆弱(ぜいじゃく)性の要因となっている」という。
「賛成派」を後押し?
しかし、こうしたゴールドマンサックスの指摘は、英国にとって非常に良いニュースだといえる。予測される状況は、英国が拡張的な緊縮政策を維持できるということを意味するからだ。英国は財政赤字をコントロールすると同時に経済成長を加速させなければならず、この政策を維持する必要があるということになる。
ケインズ主義者たちはそろって目くじらを立て、財政緊縮策の実施と同時に財政拡張はできないと主張するだろう。だが、実際にこれらは同時に行うことができる。必要なのは、財政政策が緊縮的である以上に、金融政策が拡張的であるということだ。
これは過去にも行われたことだ。英国が1930年代の深刻な景気後退から抜け出すために実施したのが、まさにこの政策である。米国経済は世界恐慌の影響から回復するのに14年を要したが、英国経済はわずか1年半で立ち直ることができた。
英国政府がこのとき行ったのが、緊縮財政による財政赤字の削減と、金本位制の放棄によりポンドの下落を認めたことだ。ポンドは当時、約20%下落。英国は拡張的な措置を取ったといえる。
脱EU賛成派はこう言うだろう──「ブレグジット」を歓迎するもうひとつの理由が明らかになった。離脱すれば、英国は財政赤字を改善できると同時に、経済成長を加速することができる。英国民にはぜひ、離脱「賛成」の票を投じてもらいたい。