過去10年で、何が変化したのだろうか?さまざまなことだ。だが、中でも最も重要な点は、中国政府の政策はビジネスにおける主要な推進力ではないということだ。ドバイに進出している中国人の起業家たちは一様に、「習近平国家主席は一足遅い。一帯一路政策が打ち出されるずっと前から、私はすでにこの地で儲けていた。儲かる場所ならどこでも行くよ」と話した。
要するに、一帯一路政策に関する論議は盛んではあるが、民間企業を中心とした中国人のビジネス・コミュニティがこの政策にどう反応しているのかもまた、同様に重要だということだ。そして、そうであればドバイは、中国のシルクロード経済圏の確立に向けての最前線になるということだ。ドバイにはシルクロード地域で最大の中国人コミュニティがあり、約12万人が暮らしている。そしてその数は、増加を続けている。ドバイにはまた、中国の民間企業も大手国営企業のコングロマリットも進出している。
重要なのは市場原理
インタビューの結果から分かったことで、特に印象深かったのは次の2点だ。
UAEの中にある中国と呼ばれる巨大モール「ドラゴン・マート」は、この10年近くにおける中国のビジネス分野における中東地域への関与の象徴だ。中国製品を販売する中国の貿易業者でほぼ埋め尽くされたこのショッピングモールは、2004年のオープン当初から中国政府の支援を受けてきた。
しかし、その支援は実際にどの程度、進出した企業にとって重要だったのだろうか。「政府の後押しは、もちろん見逃すことはできない」と中国人事業者は語る。「でも、我々はいずれにしても、ドバイに来ていただろう。ここなら稼げるんだからね」
ほとんどどのインタビューでも、私はこうした意見を耳にしてきた。ドラゴン・マートのおかげで、中国の貿易業者の仕事がしやすくなったことは間違いない。中国政府による当初の支援は正当に評価すべきだ。しかし、ドバイの中国人コミュニティ急拡大を説明するのは結局のところ、市場原理だ。