グーグル ドローンや自動運転車に「機械学習」導入の動き

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グーグルのサービスの多くにとって、機械学習(マシンラーニング)は今や欠かせない技術となっている。写真検索や音声認識技術などが良い例だ。機械学習とはコンピュータが学習し、予測を立てたりパターンを認識することを可能にする技術だ。これらを実現するための複雑な処理の多くはグラフィック処理ユニット (GPU)を使ってクラウドで行われている。

現在グーグルが取り組んでいるのは、機械学習の処理を端末で完結させることだ。グーグルで機械学習を担当するグループは1月27日、半導体スタートアップのMovidiusからチップのライセンス供与を受けると発表した。Movidiusは低消費電力のビジョン・プロセッサ・チップ(VPU)を開発している。今後グーグルはMovidiusの最新チップMyriad 2 VPUを同社の端末に搭載するという。

「我々のビジョンは、身の周りにあるデバイスをもっと自立制御できるようにすることだ」とMovidiusのCEOであるレミ・エルクザンはインタビューで語っている。「我々は、ニューラルネットワークのリーダーであるグーグルと協業して機械学習をクラウドから現実世界へ持ち出す機会を得た」

新技術を搭載する端末の詳細は未定で、分かっているのは「次世代デバイス」ということだけだ。「スマホに搭載したら便利になることは容易に想像できる。グーグルは、アプリやサービス、Android OSで既に機械学習を採用している。これにより、例えば音声アシスタントは毎回データセンターに通信する必要がなくなり、回答の遅延やデータ通信料が削減される。

エルクザンによると、グーグルとのコラボはスマートフォンに限定していないという。「チップはOSに依存せずにあらゆるデバイスに搭載することが可能だ。詳細は明かせないが、グーグルは今回の協業がなければ実現しなかった新デバイスを開発中だ」

機械学習の技術は、ドローンや自動運転車などの分野でも重要だ。クラウドで全ての処理を行っていては衝突を防ぐことはできない。

「機械学習は、我々がこれまでやってきたことを全て変革するコアな技術だ」とグーグルのCEO、サンダー・ピチャイは昨年ウォールストリート・ジャーナルに対して話している。「我々はよく検討しながら、機械学習を検索や広告、ユーチューブ、Google Playなどあらゆるプロダクトに採用している」

Movidiusとグーグルが最初に組んだのは、2014年に開始したプロジェクト・タンゴ(Project Tango)だ。このプロジェクトは、3Dセンサーをスマートフォンに装備するというもので、初期のプロトタイプにはMovidius製のMyriadチップを搭載していた。しかし、最初にリリースされるProject Tangoを実装したスマートフォンはレノボ製で、クアルコムのチップを搭載している。販売時期は年内になる見込みだ。

最近では、半導体のスタートアップは珍しくなっている。チップの開発には多額の費用が必要でリスクが大きいため、ベンチャーキャピタルは出資に積極的ではない。Movidiusも事業が軌道に乗るまで時間が掛かっている。同社は2005年にアイルランドで設立され、PitchBookによるとこれまでに総額9500万ドルをベンチャーキャピタルから調達している。昨年4月には1社から4000万ドルを調達している。これまでに公表されている同社の提携先はグーグルだけだ。大手のインテルやクアルコム、エヌビディアなどもコンピュータビジョンや機械学習に取り組んでいる。
「我々は市場がまだ存在していないときからビジネスを行っている。まるで砂漠をさまよっているようなものだったが、ようやく太陽が輝きだした」とエルクザンは言う。
「今後2年間で組み込み型の人工知能は爆発的に増えるだろう。我々は適切な分野で適切な技術を持っている企業だと言える」

編集=上田裕資

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