介護者の苦労を軽減する尿意センサー

トリプル・ダブリュー・ジャパン社長の中西敦士氏。中西社長の左手上にある下半身モデルの白い装置が「DFree」。超音波で尿意の兆候を察知してスマホに伝える。 / 写真=岡田晃奈

国の≈政策は高齢化社会に追いついておらず、介護予算も介護人員も切迫している。介護者たちが「最大の問題」という排泄問題を解決できれば、介護負担は軽減する。

それを「爆弾」と称する人もいる。突然の尿意や便意、そして失禁など、人知れず排泄の悩みを抱えている人は多い。その切実な悩みに応えるべく、尿意や便意の兆候を検知して知らせる製品の実用化にめどをつけたのがトリプル・ダブリュー・ジャパン(東京都港区)の中西敦士社長だ。

製品名は「DFree」。Dとは英語のdiaper(おむつ)で、つまり「おむつからの解放」。仕組みはこうだ。排泄をする前になると膀胱や大腸が膨らんでくる。この膨らみや変化を、お腹に付けた小型の超音波検知センサー「DFree」が感知し、「もうすぐだ」と予測してスマホに通知する。

通知は本人だけでなく、トイレを介助してくれる家族や介護スタッフにも送信することができる。何分前に知らせるかは、自由に設定できる。さらに、実際の排泄までにどれぐらいの時間がかかったかのデータをクラウド上に蓄積し、独自のアルゴリズムで予測精度を高めていく。「使い込めば使い込むほどデータが増え、予測も精緻になっていきます」(中西)

現在、介護施設での検証作業が行われている。まず2016年4月に排尿タイプを、続いて同年中をめどに排便タイプを実用化する。販売価格は1台1万8,000円(排尿のみ)から3万6,000円(排尿・排便両用)程度になる見通しだ。当初は介護施設に特化して販売し、一般販売は17年ごろになる見通し。

ユニークな製品を発案したのは、自身の失敗がきっかけ。「アメリカ留学中に引越しをした際、お腹の具合が悪く漏らしてしまった」。あまりに恥ずかしい経験をしたのを機に調べてみると、日本では介護絡みの自殺や殺人が年間370件ほどあり、なかでも排泄介助の問題がいちばんの苦労になっていた。
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文=船木春仁

この記事は 「Forbes JAPAN No.19 2016年2月号(2015/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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