イベントで読む2016年の世界経済

illustration by PATRICK HRUBY

ROAD MAP OF THE GLOBAL ECONOMY

2016年の世界経済を見渡すと、中国の減速と資源価格下落の影響を新興国が引き続き受ける見通しだ。一方、先進諸国は、国民一人ひとりは豊かさを享受しているものの、全体でみれば低インフレと低成長から抜け出せずにいる。

世界は今、どこに向かおうとしているのか。2016年のロードマップを見ていこう。

アメリカ
GDP 1位/1人当たりGDP 5位
2016年11月に大統領選挙、議会選挙を予定。下院では共和党が過半数を維持するとの見通しが強く、大統領選で共和党が勝たなければ、大統領と議会の「ねじれ状態」の関係は解消されない。FRBの利上げがトリガーとなり、新興国からの資本流出がさらに加速し、世界経済に大きな影響を与える可能性もある。

中国
GDP 2位/1人当たりGDP 71位
2016年3月の全人代で第13次5カ年計画が採択される予定。5年間の平均成長率目標をこれまでの7%前後から、6.5%前後に修正すると見られるが、前半は7%前後の成長目標を維持へ。イノベーション、シルクロード経済圏構想、投資から消費への転換、戸籍制度改革、省エネ・環境などがテーマになる。

日本
GDP 3位/1人当たりGDP 25位
2016年5月に三重県志摩市で先進7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を開催。夏に参議院選挙。国内経済では、17年4月の消費税率10%への再増税を控え、それに耐えうる景気回復を持続することができるかの議論が大きな焦点になろう。併せて、日銀の追加緩和の可能性などにも注視していきたい。

ドイツ
GDP 4位/1人当たりGDP 19位
難民急増問題にEUとして取り組むことを模索しているが、東欧や南欧の反発が強い。国内からもメルケル首相の難民政策に批判が高まっており、2017年9月の議会選挙の大きな争点となり得る。

イギリス
GDP 5位/1人当たりGDP 13位
EU加盟継続の是非を問う国民投票は2016年中に実施の見込み。世論調査で賛成と反対が拮抗しており、不透明要因となる可能性が高い。英中銀がFRBに続いて利上げを開始できるかも注目される。

フランス
GDP 6位/1人当たりGDP 21位
テロとシリア問題への対処で成果を挙げられるか、2017年に大統領選挙を控えるオランド大統領の正念場。これまでの構造改革が景気回復、失業率低下、財政健全化という果実をもたらすかも問われる。

インド
GDP 7位/1人当たりGDP 141位
モディ政権の改革の進展、州ごとに異なる間接税の統一、民間投資を活性化する土地収用法の行方に注目。

ブラジル
GDP 9位/1人当たりGDP 75位
2016年夏にリオでオリンピック開催。通貨安、インフレ、金融引き締め、不況という負のサイクルに終止符を打てるか。極端な低支持率からルフ政権崩壊の可能性も

ロシア
GDP 15位/1人当たりGDP 76位
2016年9月に予定される議会選挙で波乱は見込まれず。地政学的リスクの高まりでロシアの存在感が増すと予想されるが、資源頼みの経済は脆弱で、16年に景気後退を脱することができるかが注目点。

タイ
GDP 30位/1人当たりGDP 89位
2015年9月に否決された新憲法の草案を修正し国民投票で新憲法を通せるかが、軍事政権から民政移管実現のカギ。

フィリピン
GDP 40位/1人当たりGDP 122位
2016年5月に大統領選が行われる。経済成長、汚職対策、財政再建に実績を残したアキノ大統領の後継者が決まる。

欧州全体
難民急増問題、テロ対策、EU改革など政治課題が山積。EUの在り方や存在意義が問われる年になろう。景気は緩やかな回復が見込まれるが、低インフレ状態を脱するには時間を要し、ECBは緩和継続。

編集=大木戸歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.19 2016年2月号(2015/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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