中国・アリババと40,000人の盗賊
中国が誇る、世界最大のショッピングサイト「アリババ」。ここが、空前の量のコピー商品や粗悪品を世に送り出している。だが、まがい物を排除すれば「アリババ帝国」は土台から揺らぎかねない—。
ジャック・マー(馬雲)は、弁護士が本当に嫌いだ。彼が築き上げた「アリババ帝国」を、弁護士たちが土台から突き崩そうとしているからだ。
ニューヨークの一流弁護士たちは、「グッチ」や「イヴ・サンローラン」などのブランドを傘下に持つフランスのケリング社の代理人として「マーが商標権を侵害し、模造品を販売した」と訴えている。インタビューの中で模造品問題に触れると、マーはソファから身を乗り出して語気を強めた。「和解する可能性は皆無だ」と。
「敗訴して金を失うかもしれない。だが、威厳と敬意は勝ち取れる」
彼の言う「敬意」は、アリババが運営しているショッピングサイト「タオバオ(淘宝網)」に出店して生計を立てている何十万人もの中国人からのそれを意味している。アリババ傘下のサイトは2014年、3,940億ドルものありとあらゆる商品を売り上げた。この金額は、米ショッピングサイト大手イーベイ(eBay)の実に5倍にのぼる。マーにとって出店者たちは命の源であり、出店者たちにとってマーは中間層への道を開いてくれた「資本主義のヒーロー」なのだ。
ただし、ここには公にされることのない真実がある。アリババ帝国はかなりの程度、違法な模造品の上に築かれてきたのだ。