出品されるブランド品の8割が偽物?
ハンドバッグに自動車部品、スポーツウェア、宝飾品と、タオバオには常に数百万点の疑わしい商品が売りに出されている。試しにタオバオ上で検索語に「グッチ」を指定し、希望の価格帯を真正品よりもはるかに安い300元(50ドル)未満に設定したところ、3万件もの検索結果が表示された。4点を出品していた業者に確認したところ、デザインは真正品と同じだという。残る大半もオリジナルのデザインを取り入れつつ、たとえばハンドバッグの絵柄の「G」という文字を「D」に差し替えるといった微修正を施したものだった。
有名ブランドがネット上の模造品と戦うのを支援しているネットネームズ社によると、ブランド側はタオバオで自社製品として売られている商品のうち、8割は偽物だと見なしている。
スニーカーメーカーの「ニューバランス」で、グローバルでのブランド保護の責任者を務めるダン・マッキノンも、タオバオ出品者の中には自社公認の業者は1社もないことから、ニューバランス製として販売されている商品の8割以上は偽物と見ている。
その一方で、アリババ側は模造品比率の推定値を公表していない。それは無理な相談なのだ。
マーは14年、ニューヨーク証券取引所で世界最大のIPOを成功させ、250億ドルを調達した。同年、アリババの売り上げは直近2年間の倍以上となる123億ドルに達し、純利益は3倍近い39億ドルとなった。マーの個人資産も218億ドルだ。
アリババが傘下のショッピングサイトから模造品を一掃したら、何が起こるのだろうか。知的所有権が専門のベテラン弁護士ハーレー・リューインは言う。
「彼らは破綻するだろう」
それでは、マーには何の得もない。
しかし一方で、彼にはアリババを「中国の巨人」から「世界を支配する小売企業」へと大きく飛躍させたいという野心がある。そのためには、あらゆる国の消費者と信頼関係を築くことが肝要だ。悪評が立てば、その信頼は損なわれる。
日産自動車の北米部門でブランド保護を担当するウィリアム・フォーサイスは言う。
「彼が世界展開を図るつもりなら、国際的な商標を保護するシステムを導入する必要があるでしょう」
だが、これは難題だ。偽物を取り締まりながら、なおかつサイト内の小規模業者を潰さずにおくという舵取りができるだろうか。
「グッチにしても他のブランドにしても、なぜバッグにそんな高い値段をつけられるんだ?どうかしてるよ」と、マーは言う。中国で2番目に裕福なこの男は、何千ドルもするベルトやアクセサリーを売る高級ブランドビジネスそのものを、本質的に滑稽だと見なしているのだ。
「ブランド企業が不満を持つのは理解するが、同時に彼らに言いたい。自分らのビジネスモデルを見直してはどうかとね」