加熱する中国のフィンテック投資 ロンドンのIT企業に集中

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ヨーロッパのテクノロジー系スタートアップにとって要であるロンドンに、中国からの投資が流れ込んでいる。資金は特にロンドン等の主要なハブに集まっているのが現在の潮流だ。

香港のサイバーポートで開かれた香港ロンドン・テックフォーラムでもっぱら聞かれたのが、中でもフィンテック系のスタートアップがこの潮流に乗れそうだという話だ。香港とロンドンの2都市はどちらも、フィンテック分野で世界のリーディング・ハブの座を争っている。

イギリスと中国のテック市場の距離を近づけている動きは他にもある。中国のプライベート・エクイティ・ファンドCocoon Networksは、ヨーロッパのスタートアップに対し7億1,300万ドル(約844億円)を投資するとしている。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンと協力し、テック系の起業家がインキュベーターやアクセラレーターとの接点を持ち、資金の調達や知的財産の管理において助言を得られるようなエコシステムを作ろうとしているのだ。

また、オンラインゲーム企業Beijing Kunlun Tech Co.は、世界最大の住宅ローンのP2Pマーケットプレイスを運営するロンドンのLendInvestに3,400万ドル(約40億円)を投資するとした。インディーズ映画のストリーミングを行うロンドンのMUBIも、香港で上場しているHuanxi Media Groupから5,000万ドル(約60億円)の投資を受けた。

2月25日にロンドンで開催されるテック系イベントSilicon Dragonでは、Cocoon Networksの創設者でありCEOのJohn ZaiやLendInvestの共同創設者でありCEOのChristian Faesなどが、中国とイギリスの強まる結びつきについて話す予定だ。

ロンドンがベルリンを抑えてヨーロッパ最大のテック・ハブだという証拠は、ロンドンの観光促進を担当するLondon & PartnersのCEOであるGordon Innesが先週香港で示している。ヨーロッパで誕生した40のユニコーン(企業価値が10億ドル以上のスタートアップ)のうち18社がイギリスの企業であり、その中の13社がロンドンを拠点としている。さらに2015年にイギリスで行われたベンチャー投資額36億ドル(約4,260億円)のうち65%がロンドンの企業が対象で、その半分がフィンテック系スタートアップだ。

ロンドンはヨーロッパの中で最も中国からの直接投資が多い都市だ。アリババ、ファーウェイ、 Cheetah Mobile、そしてゲーム企業Rekooも拠点を置いている。ロンドンに拠点を設置した中国企業はこの9か月で28社に上り、3月末までには40社に増える見込みだ。

ロンドンのテック系企業のネットワークも活発だ。テック系の人材のネットワークTech London Advocatesなどのイニシアチブが立ち上がり、2012年のロンドン五輪会場にはテック系企業が集まるHere Eastが作られ、Central Workingのようなコワーキングスペースが設立された。これらの全てが、ロンドンのスタートアップシーンに満ち溢れるエネルギーを象徴している。

編集=上田裕資

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