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2014.12.09

ブームに沸いた「ワイン投資」に、いま何が起きているのか?




ワイン投資という言葉を耳にしたことがある人も多いだろう。プレミアムワイン(ヴィンテージワイン)を現物で売り買いしたり、ワインファンドに投資したりする手法のことだ。株や債券など伝統的な投資商品とは異なる、オルタナティブ投資のひとつとして近年脚光
を浴びている。

 ところが最近、そのワイン投資に異変が起きているのをご存じだろうか。英国のロンドンに本拠を置くワイン取引所「Liv-ex」(ライブ・エックス)が発表している「Liv-ex Fine Wine 100」という指標がある(グラフ左)。これは投資向きのワイン100銘柄の取引価格を指数化したもので、ワイン取引の重要なベンチマークとされる。

 このグラフを見て一目瞭然、2011年夏をピークに相場は下降を続けているのだ。高値から、実に30%以上も下がっている。

 ワインバブルは崩壊したのだろうか。だとすれば、ワイン投資はあまり旨みのないものになってしまったのか。あるいはいまこそ、一級のワインを手頃な値段で買える絶好のタイミングなのだろうか?

 300年以上の歴史をもつ、英国王室御用達のワイン・スピリッツ商「ベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)」は、顧客同士がワインを直接売買できるサイト「BBX」を10年に開設した。このBBXは面倒な口座開設の手続きが必要なく、また購入したワインを同社が所有するロンドンの保税倉庫で管理してもらえるとあって、現物投資のプラットフォームとして人気を博している。

 BB&Rの7代目、サイモン・ベリー会長に相場下落の真相を尋ねた。
「11年は確かにバブルでした。その前の09年と10年はボルドーワインの作柄がよく、価格が高騰していました。ところが、11年になると世界経済が急速に悪化し、ヴィンテージワインの値段も値下がりしたのです。また、それに続く3年間は天候に恵まれず、ブドウの出来がよくなかったということもあります」
ワインは基本的に農産物であり、その年の天候の影響を強く受ける。加えて、株価や金利ほど敏感に反応するわけではないものの、やはり景気の動きとも無縁ではない。08年の金融危機の際も、5大シャトーをはじめとするボルドーワインは大きく値下がりした。(中略)

どうやら、「ワインバブル崩壊」というより「ボルドーバブル崩壊」と言い換えたほうが正しいようだ。

 ということは、これからワイン投資を始めるなら、ボルドー以外の高級ワインに目を向けたほうがよいのだろうか。ベリー会長は言う。
「いいえ、確かに世界に目を向ければイタリアやカリフォルニアなどにも優れたワイナリーが増えていますが、まだ投資に向いているとは言えません。アンティークの市場と同じで、ボルドーのように本当に少量しか存在しない最高品質のヴィンテージの価値は不変です。ロシアやブラジル、中国、アフリカなど世界中の人が、ますます最高級のワインを求めるようになっています」ボルドーワインに一時のような過熱感はもうない。ベリー会長をはじめとする業界関係者も、Liv-ex 100が再び上向く日は近いと期待している。

 とはいえ、もしワインの現物投資で損をすることがあっても、それほど悲観することはないだろう。ワインは、株券のように紙くずになったりはしない。たとえ値段が下がっても、至極のワインを愉しむという最高の贅沢が残されているのだ。

文=増谷康

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