アルジャジーラは米国では結局、反イスラエル闘争(インティファーダ)のためのプロパガンダ部門、広く知られたテロリスト集団の一つ、といったブランドイメージを自らに根付かせただけだったのではないだろうか?
少なくとも、ケーブルテレビ(CATV)局のアルジャジーラ・アメリカを米国の基準に基づき、信頼に足る報道機関として位置づけるという責任を負った人たちは、これまで身を粉にして働いてきたはずだ。元CBSのデイブ・マーシュやその他のジャーナリストらを採用、報道機関としての業績もいくらかは残した。アル・ゴア元米副大統領らが設立したカレントTV買収にも成功。この買収は恐らく、世の中を5年ほど先取りした行動だったといえるだろう。若年層をターゲットとした視聴者参加型のインターネットメディアであるカレントは現在、月間の動画再生回数が7億回を超えるまでになっている。
だが、多額の資金を投じて必要な人材を採用しても、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のペイトン・マニング選手のドーピング疑惑を報じて大きな注目を集めても、米国内での評判を変えるというあまりにも大きな課題は、克服することができなかった。報道機関をうたうアルジャジーラの報道倫理に対する姿勢を疑う声は、消えることがなかったのだ。
アルジャジーラは1月13日、今年4月末までに米ケーブルテレビ局のアルジャジーラ・アメリカを閉鎖すると発表。カタール・ドーハの本社は声明を出し、「既存の国際的なデジタル配信サービスを拡大する」との方針を示した。
「アルジャジーラ・アメリカは全米各地で視聴者を獲得し、テレビ報道における重要な新しい声として認識されるようになってきた。だが、メディアを取り巻く経済的な環境の変化により、事業の縮小と米国からの撤退という戦略的な決断を下した」という。
アルジャジーラの決定については米紙ニューヨーク・タイムズが、「十分な視聴者を得ることができなかった。プライムタイムの視聴率も、3万人前後にとどまっていた」と報じている。
また、CNNの記者は原油価格の下落が一因と指摘。「米での閉鎖は、1バレル当たりの価格が12年ぶりに30ドルを下回ったことによるものとみられる。カタール政府系のアルジャジーラ・メディア・グループが親会社である同局にとって、これほどの値下がりは重大な影響を及ぼす」と説明した。
しかし、アルジャジーラがアラブ諸国のひとつが保有するネットワークであること、過去にテロリストのプロパガンダと批判を受けたことは事実に変わりない。
さらに、同局のロゴはアラビア語をもとにしている。残念ながら米国では、真摯(しんし)に仕事に取り組むジャーナリストたちも広告販売の担当幹部も、ケーブルテレビの関係者らも、これには初めから反発を感じてしまうのだ。