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Jun Sato / Getty Images

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の勢いが止まらない。2016年1月6日、『アバター』(2009年)の7億6050万ドルという全米興行収入記録を抜き去って、史上最高額を達成した。アメリカで一番チケットが売れた映画という栄誉を新たに手にすることになったこの作品でなにより特筆するのは、スーパーヒーロー映画でありながら女性のレイを主役に据えたことだ。

この映画ではまぎれもなく女性が主役だ。レイという娘が新しい仲間たちと出会うなかで、ジェダイの力がみずからに備わっていることを自覚し、大いなる使命をおぼろげに感じ取るというこの新作を取り上げたブログ記事は星の数ほどあるが、スター・ウォーズ・シリーズの新三部作の主役をレイにしたことを好意的に評価する声が引きも切らない。ウォルト・ディズニーとルーカスフィルムの両社が下したこの英断は、大ヒットシリーズの設定をひっくり返しただけでなく、ハリウッドにはびこる性役割についての社会通念をくつがえし、「ガールズ・アンド・ボーイズ」という映画のあり方についての貴重なロールモデルを提供することにもなった。あらためて、レイを主役にしたのは英断だった。

とはいうものの、性役割をめぐる固定観念や決めつけはいまだに根強い。玩具大手のハズブロ社を筆頭に数多くのメーカーが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』関連商品からいまだにレイを除外しているのがその動かぬ証拠だ。男の子は女性キャラクターのおもちゃなんか買わないし、女の子はそもそもスター・ウォーズのおもちゃは買わないという決めつけが、その裏にはある。

だが、そんな思い込みの誤りをまざまざと示した映画もある。2015年の『ボーダーライン』(原題:Sicario)はドラッグ密輸をめぐるスリラー映画だが、この作品の脚本家はあるスポンサー候補から、主役のFBI捜査官を女性から男性に変更してはどうかと提案されたのだという。だが、その要請を受けたとして、どんな男性俳優が主役を演じることになったとしても、最終的に女性を主役に撮られたこの作品ほどの興行的成功は収められなかったであろう。

ハリウッドにはげんに女性差別がはびこっていて、ACLU(米国自由人権協会)やEEOC(雇用均等委員会)が複数の女性監督を対象に、なぜ映画産業ではここまで女性が軽んじられているのかと聞き取り調査を行ったほどだ。

だが、女性を主役にした映画が男性主人公の作品になんら引けを取らないということは、『トワイライト・サーガ』シリーズ、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』、『ハンガー・ゲーム』、『アナと雪の女王』など、具体的な作品名を挙げて主張することができる。さらに、それらの作品を筆頭とするここ数年のヒット作をつぶさに眺めれば、女性客を当て込むことは決してリスキーでもニッチ狙いでもないと、確信を持って言うこともできる。そこにダメ押しのように登場したのが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』だ。SFアクション超大作のストーリーの核、「選ばれし者」の役柄に女性を据えたこの作品が、史上最高収益の座を手にすることになったのだ。長らくつづいてきた議論の形勢が、これで決定的に動いたのだ。

つまりこの映画は、マッチョな強面男や人に抜きんでる何かを秘めた青年、そして下品な野郎どもが画面を占領する、これまでのどんな映画よりも多くの金を稼ぎ出したのだ。主役を女性にしたところで作品の興行的成功は揺るがないということを『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』はまざまざと示したわけだが、この期に及んでそれに異論を差しはさむ人がもしいたとしても、女性を主役にすることが少なくとも害にはならないということは、認めざるをえないはずだ。

ただしもちろん、物価上昇という要因も忘れてはならない。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の全世界興行収入が8億5000万ドルを超えることは確実なわけだが、その時点ではまだ、売れたチケットの枚数でいえば、『風と共に去りぬ』、『サウンド・オブ・ミュージック』、『タイタニック』、『エクソシスト』、『白雪姫』、『101匹わんちゃん』といった過去の大ヒット映画には及ばないのだ。しかし、それらの作品名を見るにつけても興味深いのは、映画史の歴代上位を占めるそれら名作に、女性が主役か、あるいは男性と差がなく活躍する作品がどれだけ多いかということだ。

映画には女性客が決して少なくはないことと、女性同士で連れ立って映画館に行く人もかなりいるということからも、女性キャラクターをめぐる従来の議論には、そろそろ終止符が打たれねばならない。なぜなら、その議論の答えはすでに見えているからだ。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』について、レイを主役ではなく、主人公と恋に落ちる女性というふうにするべきだったとハリウッドの社会通念に凝り固まった人たちは言うだろうが、それは取りも直さず、ハリウッドの社会通念が現実から乖離していることの裏返しだ。女性客を当て込んだ映画についても、もっと考えていくべき時期にきているのだ。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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