プロテウス・デジタル・ヘルスが開発、「プロテウス・ディスカバー」と名付けられたこの新型のツールは、摂取可能なセンサー(胃酸に接すると作動)を埋め込んだ錠剤と、パッチ型の小型検出器を使用するもの。患者のバイタルサイン(生命兆候)や薬を服用した時刻などの重要な情報を、医師らと患者の双方に提供してくれる。
このツールは米食品医薬品局(FDA)の承認を取得し、臨床試験でも有効性と再現性が確認されている。錠剤にセンサーを搭載することで、薬に関するコンプライアンス(服用の順守)をはじめ患者の状態を把握し、個々の患者に向けた最も適切な治療方法を提供することが可能になる。
プロテウス・ディスカバーの機能
プロテウス・デジタル・ヘルスのアンドリュー・トンプソンCEOによると、錠剤に搭載される砂粒ほどの大きさのセンサーは、ごく少量の微量元素を含んでおり、胃酸に接すると作動する。センサーは患者の左上腹部に貼り付けたパッチ型の検出器に信号を送信。心拍数や活動と休息など、患者の状態に関するデータが自動的に記録される。その後、パッチはそれらのデータをスマートフォンやiPadなどのモバイル機器に転送する。
現在のところ、血圧の測定などには別の装置を介在させる必要があるが、トンプソンCEOは、将来的にはこうした慢性疾患の治療に関連した数値も直接、計測可能にしたい考えだ。
デジタルメディスンの登場
デジタルメディスンは、新たに登場した「スマートメディスン」と呼ばれるカテゴリーに含まれるもので、医師らが診察と次回診察の間の患者の行動を評価・追跡・監視することを可能にする。これにより、慢性疾患の患者の治療方法をより双方向的でカスタマイズされ、改善されたものにすることができる。
慢性疾患に苦しむ人は、米国だけでも約1億1,700万人に上る。さらに、その50%近くが、治療を受けても症状に改善がみられないという。
治療に効果がみられない人が多い理由としては、主に二つの要因が挙げられる。一つは患者が処方通りに服薬していないこと、もう一つは経過観察と適切な処置の不足だ。これらが原因で生じた年間の医療コストは、2009年には2,900億ドル(約34億円)に達したとされる。
バートン・ヘルスのクリント・パーバンスCEOは、「患者たちはさまざまな理由で、処方どおりに薬を服用することに苦労している。きちんと服用しない人には症状の改善がみられないが、医師は指示通りに服用していることを前提に考えてしまう。これが不要な治療方法の変更につながり、医療費がかさむ原因になっている」と指摘。「新製品によって、患者と医師の間のデータに基づいたコミュニケーションが可能になる。結果として、患者に適切な薬の服用や日常の活動レベルと習慣の変更に関する理解を深めてもらうことができる」と述べている。
デジタルメディスンがもたらす将来
プロテウスの技術は、糖尿病やうっ血性心不全治などの心疾患にも対応可能になる見通しだ。さらに、脳卒中や心臓発作、糖尿病による四肢切断の減少といった好ましい結果をもたらすと期待される。
このほか2人のCEOはいずれも、慢性疾患の病状管理の手法として今後10年の間に、デジタルメディスンは非常に一般的なものになると見込んでいる。患者に対し、医師が勧める症状改善に向けた行動を積極的に取り入れるよう促す際に、有用なツールになると期待している。