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日銀の金融緩和で衝撃を受けるのは、何も市場関係者だけではない。すでに、その余波が一般の消費者や大企業の経営陣を襲おうとしている。

 (中略)黒田総裁は、その動きをあざ笑うように突然、金融緩和をした。市場に資金を供給するということは、少なくとも短期的には日本株の上昇要因になる。すなわち、日本株を持たないプロの投資家は、ライバル(世界株インデックスや競合他社など)に負けてしまうことになる。

 そこで、空売りをしていた人は慌てて買い戻し、日本株をアンダーウェイトにしていた人は日本株を買わざるを得なくなった。日本株の急騰は、世界の投資家の市場心理の裏を突いたのである。初戦は成功だ。海外の大手金融紙に、「真珠湾攻撃のようだ」という見出しがついたのもわからなくもない。
 しかし、実際の株価は、最終的に資金の流通量だけではなく、景気や企業の経営状況に従う。2015年以降の株価動向は、今後の景況によって決まるのだ。(中略)

 「プチ贅沢」を促すには、企業側の努力も欠かせない。より魅力的な商品開発、お値打ちを感じさせる価格設定、魅力的なおまけの存在、消費者心理をくすぐるマーケテイングなどあらゆる知恵を総動員することが重要だ。そのためには経営陣、とりわけ社長が成長を目指して奮闘努力をする必要がある。

 いままでの問題は、経営者がそれほど「頑張らない」ことにあった。(中略)リスクを取りに行った場合、成功したところで給料は増えないし、株式もあまり持っていないので資産価値もたいして上がらない。法令遵守をして会社が傾きさえしなければ、それほど業績が伸びなくてもクビになることはなく、「会長→相談役」という道筋を歩むことができるのだ。
 また、機関投資家をはじめ多くの投資家も、法令遵守に問題さえなければ、そのようなヌルい経営陣に反対票を出すことはなかった。逆に、リスクを取って会社が傾いたときの痛手が大きすぎる。

 ところが、一橋大学の伊藤邦雄教授を中心に作られた「伊藤レポート」は、そのようなヌルい経営者に対して退場を命じるような強い方向性を示している。(中略)
 これは常日頃から私が主張してきた「大企業の経営陣のサボタージュにある」ということを100ページ以上の論文で喝破している。そして、それに呼応するように、機関投資家の議決権行使の助言をしている大手のISS社が「15年の株主総会から、5年間の平均ROE(株主資本利益率)が5 %未満の会社の経営陣に対して再任を拒否するよう推奨する」というのだ。(中略)
 これは、黒田バズーカ以上のインパクトになるだろう。ただし、今回は「直近のROEの数字が5%を超えていればOK」という形になったものの、次回以降はその基準が変わる可能性がある。

 黒田バズーカによって「動かない人」は「動く人」への変革が迫られ、伊藤レポートとISSの新基準によって日本のコーポレート・ガバナンスのあり方が「大過なく」から「リスクを取って成長をしたかどうか」に変わることになる。これは、非常に大きな変化である。来年の株主総会の前から大きな話題になることであろう。

藤野英人

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