ワンダはレジェンダリーの株式を100%取得し、両社は新たな法人を立ち上げる。記者会見でレジェンダリーの創業者CEOのトーマス・タルは「ワンダとレジェンダリーはかつてない世界的エンタテインメント企業になります」と発言。自身はこれまでと同じ業務を行い、レジェンダリー製作作品も自社が管理するとした。
2017年には中国の映画市場がアメリカを抜いて世界第一位になると見られている。2015年の中国の興行収入は前年比49%増の67億ドル(約7900億円)。米国の興行収入は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『ジュラシック・ワールド』などが大当たりした影響で110億ドル(約1兆2000億円)を記録した。
中国一の富豪が米、ハリウッド制作会社を買収
中国一の富豪である王健林が率いるワンダは商業不動産会社としてスタートし、ホテル経営、Eコマース、エンタテインメントなどへ事業を拡大してきた。中国で映画館チェーン大手のワンダ・シネマ・ラインを経営するほか、2012年に米国の映画館チェーンAMCエンタテインメント・ホールディングスを26億ドル(約3069億円)で買収した。
その一方、コインランドリーチェーンの経営、金融業を経て映画界に進出したタルは20015年にレジェンダリーを設立。ワーナー・ブラザースやユニバーサル・ピクチャーズと組み、『ダークナイト』や『ストレイト・アウタ・コンプトン』などのヒット作を製作してきた。近年、単独製作に乗り出したが、製作費5,500万ドル(約65億円)をかけた『クリムズン・ピーク』の興行収入は7,700万ドル(約91億円)ドルと期待外れに終わっている。
王は記者会見で、世界の映画産業は「少数のアメリカの映画会社」によって支配されていると示唆。その中でキープレーヤーになるために「我々はグローバルに存在感を示さなければいけない」と語った。時期は未定だが、いずれはレジェンダリーを新規株式公開させるつもりだ。また王はレジェンダリーのコンテンツをテーマパークに展開する計画も明かした。
今回の買収は、米中企業の垂直統合の一例と言えるだろう。レジェンダリーが得意とするアクション大作は中国で人気があり、両国で映画館チェーンを営むワンダに利益をもたらす。一方、中国では外国映画の年間上映数が制限されているが、レジェンダリーはワンダと組むことで中国マーケットに入り込みやすくなる。
中国の映画産業について、王は政府の検閲に関する質問には答えなかったものの、「アメリカから30-50年は遅れている。ハリウッドから学ぶべきことは多い」と語った。
買収の詳しい条件は明らかになっていないが、タルは買収後もこれまで通り10億ドル(約1181億円)の純資産を保有し続ける。契約をまとめた弁護士はタルが「会社の業績によって多大なインセンティブを受けるだろう」と話した。
ワンダがレジェンダリーの株式を取得する噂は昨年12月から業界紙ヴァラエティで報じられていた。また今月上旬、LAタイムズがレジェンダリーの出資者であるソフトバンクや投資会社ワデル・アンド・リードが持株をワンダに売却することに合意したと報じていた。
ワンダの最新の収益報告によると、2015年の同社の年商は前年比19%増の441億4,000万ドル(約5兆2,160億円)。レジャーと金融部門の売上増の影響が大きいと見られる。