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Palenque / Shutterstock.com

発展途上国では現在も、毎日800人近い妊産婦が予防可能な合併症のために命を落としている──驚くほどの数だ。医療機関の一部がスウェーデンのトライス・イメージングが開発した「トライス」を使って、離れた場所から妊婦の診断を行っていると知った同社のアサ・ノルドグレンら共同創業者たちは、世界各地の妊産婦の命を救うために国際市場への進出を決めた。トライスはもともと、病院の記録管理の合理化を目的に開発されたものだ。

医師や看護師、助産師らはトライスにより、画像装置から直接、医療画像を患者の携帯電話などに送ることができる。ノルドグレンによれば、トライスは携帯ネットワークを利用して超音波装置のデータを送信するもので、「独自の方法によって、最低限の医療サービスしか受けられない地方の村とも画像を共有することを可能にした」。その真価を発揮するため、同社は米クアルコムとモロッコで共同プロジェクトを実施。患者一人当たりの診断コストを従来の80ドル(約9,500円)から2ドルへと大幅に削減でき、診断の所要時間も2週間から24時間以内に大きく短縮できることを確認した。

医師や医療関係者らはトライスの技術を使うことで、MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)、超音波検査の画像を直接、手元のスマートフォンやタブレット、コンピューターの画面で確認しながら話し合ったり、セカンド・オピニオンを提供したりすることができる。

ノルドグレンはプロジェクトの成功について、創業者らに医療用ITのバックグラウンドがなく、技術主導で進めてきたことが一因だと指摘する。自身も最高執行責任者も最高人材活用責任者も、デジタルメディアと消費者の視点から開発に取り組んできたという。顧客のニーズを聞き取り、それに応えるための最も簡単な方法を探したのだ。医師が画像装置に患者の電話番号とメールアドレスを入力し、「送信」ボタンを押すだけ (車で移動中にも送信できる) というこのシステムは、非常にユーザーフレンドリーで、どのような現場条件にも導入可能だ。

同社の「トライスファイ」システムはビジネスモデルもシンプルで、競合他社とは明確に差別化されている。ノルドグレンは、「医療用ITの顧客はこれまで、大型のハードウェアに投資し、不当に高いライセンス料や管理費を支払ってきた。また、あまりに長い時間と多額の資金がかかるITプロジェクトを行ってきた。トライスの技術は前払い金も不要で、利用者はクリックの回数に応じて料金を支払う。データプランを購入する携帯電話料金の支払い方法と同じだ。ただ、通話した分数ではなく、患者とのやりとりの回数で料金が決まる」と説明する。システムは特に説明を必要とすることもなく、10分ほどで導入が完了する。

さらに、このシステムは環境面にも予想外の利点をもたらした。電子カルテを導入している大規模な医療機関でも、超音波検査の結果を印刷してホチキスで紙に留め、スキャンして手動で患者のカルテにアップロードしている場合が多い。だが、トライスの技術を導入すれば、有害物質を含み、値段も高い感熱紙を使う必要がなくなる。さらにクラウドストレージが利用できることから、バックアップ用の紙の記録を耐火キャビネットに保管しておく必要もなくなる。

ノルドグレンは、「妊産婦の死亡の50%は、専門家の診断を受けられれば回避できるものと推定されている。ネットワークに接続され、持ち運び可能で安価な超音波診断装置は、死亡率の低下に大きな影響を及ぼすはずだ。我々はより迅速かつコスト効率の高い診断を実現することで、妊産婦の命を救うことに尽力していく」と話した。

編集 = 木内涼子

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