激増する患者数と、医療コストに逼迫する社会—。悪夢のようなシナリオから世界を救うのは、意外にも“元投資家”かもしれない。
ヴィヴェク・ラマスワミ(29)は、バイオ医薬品会社アクソヴァント・サイエンスの創業者兼CEOとして他社が開発中止した薬品を買収し、自社や傘下企業で再開発している。その中には英製薬大手グラクソ・スミスクラインが手放したアルツハイマー型認知症治療薬「RVT-101」も含まれている。
ハーバード大学で生物学を学んだ彼はヘッジファンドに就職したものの、「投資したい薬が会社の事情により世に出ない」という製薬業界の現実に苦しんでいた。そこで、自らの投資と経営によって医薬品開発を進めたいと考えたのだ。「社会に有用な薬が見捨てられているのかもしれません。これは倫理的な問題でもあるのです」
ヴィヴェク・ラマスワミ◎製薬会社アクソヴァント・サイエンスの創業者兼CEO。最優秀の成績でハーバード大学を卒業後、ヘッジファンド会社「QVTフィナンシャル」のアナリストを経て現職。開発中止になった治療薬の買収や製薬会社のM&Aといった経営手法を通じて、迅速な薬品開発を目指している。目標は、「製薬業界のバークシャー・ハサウェイ」。