テクノロジー

2016.01.12 10:40

加熱する「自動運転カー向けチップ」開発戦線 クアルコム、NIVIDAら激突

Photo by: Justin Solomon/CNBC/NBCU Photo Bank via Getty Images

自動運転カーの登場を視野に、クアルコムはモバイルの経験を自動車産業に持ち込もうと動いている。

クアルコムは米国で開催中のCESで、最新のスマホ向けプロセッサーを自動車向けに改造したSoC「Snapdragon 820A」を披露した。SoCとは必要な機能のすべてを、一つの半導体チップに集積したもの。820Aは64ビットCPUのKryoとQualcomm Adreno 530 GPUを内蔵。DSPにはQualcomm Hexagon 680 DSPを搭載し、車載インフォテインメントを4Kグラフィックで稼働させるパワーを持つ。

さらに、820AはディープラーニングのアルゴリズムZerothと連携している。Zerothはスマホ向けのSnapdragon 820で導入され、イメージやサウンドの分析・分類に使われた。CESにおいて、クアルコムはZerothが人間や動物、あるいは身振りなどの具体的な物体を認識する流れを実演してみせた。

今後、より多くのカメラやセンサーが車に搭載されるようになれば、このようなイメージ認識技術は将来の自動運転において重要な役割を担うだろう。Snapdragon 820AはクアルコムのLTEモデムと統合される予定だ。同社の新製品x12 LTEモデムは下り最大600Mbps、上り最大150Mbpsまでスピードアップし、搭載されたチップはWiFiのホットスポットになる。

クアルコムは2014年のCESで、カーインフォテイメントにフォーカスした初代SoC「Snapdragon 602A」を発表した。そして2年後の今回、独自動車メーカーのアウディが2017年モデルの自動車にSnapdragon 602Aを搭載することが公表された。

クアルコムの自動車向けチップは、モバイル向けSnapdragonをアップデートし、飽和状態のモバイルマーケットの外で新たな成長機会を見出す戦略を具現化したものだ。同社はモバイルマーケットでの経験を他のあらゆる分野に応用できると考え、ドローンやカメラ向けのチップも開発している。

クアルコムは次世代カーで主導的な役割を担う意欲を見せているが、自動車産業を将来の大きな成長機会と捉えているチップメーカーは少なくない。Nvidiaは4日、自動車の自動運転用CPU「Drive PX2」を発表した。ランチボックスサイズのスーパーコンピューターは1秒間に24兆回のディープランニング演算が可能だ。Nvidiaは既にテスラのModel Sのような自動車への実装に対応したSoC「Tegra」を発表している。

ディープラーニングソフトZerothがあるとは言え、大規模な処理能力を持つNvidiaの小型スーパーコンピューターにすぐに追いつくことは難しい。そして、このような高速処理こそが、未来の自動運転カーが必要としている技術だ。

クアルコムは自動車にチップを搭載する場所を見出すべく、ほかの手も打っている。昨年8月に24億ドル(約2840億円)で買収したCSRは自動車用Bluetoothの大手サプライヤーとして、市場の3分の2のシェアを持つ。この合併でクアルコムはCSRの顧客である自動車メーカーを取り込んだほか、Bluetooth技術をチップに統合することも可能になった。

「クアルコムとCSRが組むことで、自動車メーカーらに、より幅広い技術を提供できるはずだ」

CSRの幹部からクアルコムの自動車部門のトップに移籍したパトリック・リトルはそう語った。

編集=上田裕資

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