欧米のような既存マーケットにおける高級品の売上の伸びは、旅行者頼みになりつつある中、中東では高級ファッションが今まさにブームを迎えている。経営コンサルティング会社Bainの最近の報告では、中東で個人が高級品に支出した額は、2015年に87億ドル(約1兆200億円)に達した。2014年の68億ドル(約8,000億円)から大幅に伸びている。
裕福な産油国の女性たちは長年、高価なハンドバッグや靴でファッション性を発揮してきた。全身を覆うアバヤの下は、頭からつま先までD&Gなどのブランド品ということも珍しくなくなかった。
D&Gは既に、アラブ首長国連邦に13の店舗・ブティックを構え、バーレーンやクウェート、サウジアラビアの各地にも支店がある。そういった店舗の常連客は何十年にもわたり、袖や裾などにスワロフスキーのクリスタルを散りばめたり、繊細な飾りを施したり、自分なりのアバヤをカスタマイズして来た。
D&Gが今回発表した中東向けの製品ラインは、シチリア生まれの同社の活気ある美しさと気品をアバヤとヒジャブに反映させた。贅沢なレース使いのものや、鮮やかな花模様のもの、そして生き生きとしたレモンの柄をプリントしたものまである。
先日ファッション誌『Vogue』がウェブサイトで触れたように、トミーヒルフィガーやオスカー・デ・ラ・レンタ、DKNYといった欧米ブランドも、近年イスラム教の女性向けのコレクションを発表している。もし、D&Gのヒジャブとアバヤが成功すれば、他の有名ブランドがそれに追随することになるだろう。また、より多くの小売店が中東の顧客のニーズに合わせた戦略を取ることが予想される。
例えば、高級ブランド品を扱うeコマースのモーダ・オペランディ。先日、一点物のルビーのネックレスを41万3,000ドル(約5,000万円)で売り上げ、モーダの売上としては過去最高額となったが、それをロンドンのショールームで購入したのは中東の顧客だった。モーダはペルシャ湾岸諸国から上手く顧客を取り込んでおり、間もなくそこにショールームを開設する計画だ。そのショールームにD&Gのアバヤが入荷されるかどうかは明らかにされていないが、今後の展開が注目される。