王健林の純資産は288億ドルで、香港の長江実業グループを率いる李嘉誠氏に20億ドルの差に迫った。(王健林氏の資産は中国の株価が急落する前の昨年5月には、一時的に李嘉誠氏を上回った。)
元軍人で政府の役人だった王健林は不動産会社から事業を起こし、今ではエンターテイメントやスポーツ分野にまでテリトリーを広げている。彼の資産が昨年飛躍的に伸びた背景には、グループの不動産部門である大連万達商業地産と、中国最大の映画館チェーン万達電影院線(中国株式市場が大荒れする中で、同社の株価は昨年1月から575%上昇した)の2件のIPOの成功がある。
4年前にアメリカの映画館チェーンAMCエンターテインメントを買収した王健林は、海外のM&Aをさらに加速させている。昨年前半には米国で100億ドルを投資する方針を表明。スペインのサッカークラブ、アトレチコ・マドリードに出資して株式を20%取得したほか、「アイアンマン」ブランドを持つトライアスロン競技主催企業を6億5000万ドルで取得した。
また、最近は『ハングオーバー』や『ダークナイト』などで知られるハリウッドの映画会社レジェンダリー・エンターテインメントの買収にも動いている。
「今後の10年を、世界に誇れる本物の中国ブランドを構築することに費やしたい」と王健林は昨年5月のフォーブスの取材に語っている。
王健林の資産の飛躍的な増加は、世界第二の経済大国の富が急速に膨らんでいる証でもあるが、一方で2015年は中国の資産家たちにとって不確実性に満ちた1年だった。中国のウォーレン・バフェットとも称され、中国で最も注目される企業家の1人である復星集団の郭広昌(グオ・グアンチャン)は、“調査に協力するため”に数日間行方不明になり、汚職の疑いをかけられたのではないかと憶測を呼んだ。
政府の反腐敗運動のターゲットは、中国証券監督管理委員会副委員長の姚剛(ヤオ・ガン)などの政治権力者だけでなく、投資ファンドを運営する徐翔(シュー・シャン)のような金融ビジネスの実力者にまで及んでいる。