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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

text by Akihiko Mori | photographs by Keith Ng

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「国境ではなく市場を見る」

グーグルやフェイスブックの創業者がそうであったように、グローバルに打って出ようとする“エンジニア社長”も若き起業家の特徴のひとつだ。

トランスリミットは、高場はもちろん、社員の9割をエンジニアが占める。「世界でプレイされるものを僕たちはつくりたい」と話す高場は決してビッグマウスではない。事実、1,000万ダウンロードを超えたゲーム『ブレインウォーズ』『ブレインドッツ』のユーザーの95%は海外だ。

プロゲートの加藤もエンジニア社長だ。「これからプログラミングで人生が変わる体験を提供できるのは、東南アジアなどの新興国。『コード・アカデミー』などが先行する市場に、コンテンツのクオリティを武器に切り込みたい」と話す。

また、独自のプラットフォーム戦略でグローバル市場を狙う傾向もあるようだ。エンジニア社長でもある「BASE」CEOの鶴岡裕太(25)は「お母さんも使える」をキャッチコピーに、無料の簡単ECサイト作成サービスを提供する。鶴岡は大学生の頃に独学でプログラミングを始め、BASEをリリース。創業3年弱で登録店舗は20万店を突破し、BASEを使うオンライン店舗での流通総額は数十億〜百億円にのぼる。現在はここに新しくオンライン決済サービス「PAY.JP」もリリース。「オンライン上の経済活動を支援できる、インターネットで最適化された“銀行”のような役割を担いたい」。あらゆるインターネット上の経済活動をカバーするプラットフォームとして展開していきたいと考えているという。

インターネットを通して世界を見る彼らに国境はすでに見えていない。見えているのは自社のサービスがカバーするグローバルの巨大市場だけだ。

こうした若いスタートアップに対し、東南アジアやインドなどの新興国でスタートアップに投資するBEENOS創業者の佐藤輝英は「起業家はマーケットの変化があるところに生まれてくる。日本は起業家の数ではアメリカやインドに負けるかもしれませんが、質では全くひけをとらない印象」と話す。「環境は整った」「資金調達のための環境は十分に整っている」。今回の取材では、そう全員が口を揃える。エンジェル投資家や、リスクをとってシード期から投資を行うVCが増え、今回の撮影場所でもあるイーストベンチャーズとスカイランドベンチャーズによる「ハイブ渋谷」のような、インキュベーションスペースが生まれ、機能してきたことなどがその要因に挙げられるだろう。

ベンチャーキャピタリストの佐俣アンリとシード期から並走したペロリの中川は「どれだけのユーザーに使ってもらえるか、サービスの価値をつくることが、起業家のすべて」と前置きしながらも「今は起業家にとって非常に資金調達がしやすい環境。スタートアップに集まる資金は、肌感で言えば数年前に比べて5〜8倍程度に増えているのではないか」と話す。

調達資金の主な用途は人件費だ。多くの資本が集まるようになれば今後、日本のスタートアップに関わる人口の拡大が見込める。

この1年間、DeNAのペロリ買収後、KDDIによるnanapi、ミクシィによるフンザ(「チケットキャンプ」運営)などの大型M&Aが続いた。それは、イグジットを経験した起業家が増えていることを意味している。資金を手にした若き起業家は、シリアルアントレプレナーとして新たな起業への道や、エンジェル投資家として、次の世代を育てる道を歩み始める。実際、中川綾太郎は、フリークアウト取締役COO佐藤裕介や、nanapiCEO古川健介らとともに起業家投資家集団「トーキョー・ファウンダーズ・ファンド(TFF)」に名を連ね、次の世代をグローバル視点で発掘する若手のエンジェル投資家としての役割も担う。若手の起業家の中からも、資金を手にして終わりではなく、スタートアップのエコシステムの拡大に貢献する動きが始まっている。

森 旭彦 = 文 キース・イング = 写真

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