フロントグリル風の部分にはLEDライトが埋め込まれている。はみ出すほど大きなホイールが四隅に張り出し、フロントからリアエンドまで滑らかな曲面のボディが連なる。パワートレインがプラグインの燃料電池なのも、話題の一つだ。約200kmのEV走行に加えて、燃料電池車として900kmを走ることができる。
新しいスマートボディ構造によって、中央のBピラーなしでも強度を保てるため、ボディサイズの割に広々としている。乗り降り時にはシートが30度回転し、ドアが90度も開いて快適に乗降ができるし、シートが回転してラウンジ風に向かい合わせに座れる仕組みだ。ドライバーが後ろ向きに座れるということはつまり、自動運転車なのだ。ドアの内側にディスプレーがあり、スマホのようにピンチやスワイプで操作して目的地を設定したり、交通情報などの表示もでき、自動運転に切り替えることができる。とはいえ、ステアリングホイールが無くなるわけではないから、渋滞を抜けてワインディングロードに出たら運転をすればいい。むしろ、電気モーターの圧倒的な加速感を生かして、スポーティに走らせることもできる。
未来満艦飾のリサーチカーを形にして見せる一方で、最新の技術で走るクルマが社会に受け入れられるために、人間とクルマのコミュニケーションまで考えられている。最新技術だけではなく、社会に受け入れられるまでの道筋まで含めて開発する。それがメルセデス・ベンツが目指す未来なのだ。
Tips 1:ヴィザヴィ(ラウンジ、最高のラグジュアリー空間)
「都市化が進み、渋滞に悩まされたり、駐車する場所もなかなか見つからないなど、モビリティとしてのクルマの魅力は薄れています。将来は、プライベートな空間と時間を備えるラグジュアリー・グッズとして発展するでしょう」と、メルセデス・ベンツCEOのツェッチェ氏。19世紀末に作られた馬車のように向かい合わせに座る「Vis-a-Vis」というモデルに着想を得た室内空間。自動運転時には前席のシートがくるりと後ろ向きに回転する。リラックスを目指しただけではなく、写真のようなビジネスミーティングにも対応する。
Tips 2:外部とLEDでコミュニケーション
最もユニークなのが、クルマが周囲とのコミュニケーションを取る機能だ。「F 015」では、例えば、自動運転中はLEDを青く光らせて、歩行者を確認しているという意志を表示して人間に伝えたり、歩行者が横断歩道を渡ろうとすれば、自動停止した後に「Please go ahead」と音声で意志を伝える。リア中央に表示されるQRコードを読むのは実用的とはいえないが、「燃料電池のプラグイン・ハイブリッドなので、テールパイプあたりにしゃがんでも排ガスを出さない」というアピールだろう。
Tips 3:CarPlayをいちはやく市販車に導入
Photo by Harold Cunningham/Getty Images
市販車でも十分にメルセデス・ベンツの未来感を体感することができる。「Mercedes me」と呼ばれるプラットフォームがあり、様々なシーンを通して、顧客が自動車メーカーとつながる仕組みだ。グループ内で運営するカーシェアリングを利用できたり、事故時のオンライン緊急対応がうけられたり、ローンプログラムの相談ができたり、さらには新車開発に参加したりもできる。この発表にあわせて、アップルの車載OS「CarPlay」をいち早く市販車に導入した点も見逃せない。(※欧州仕様。日本での導入時期は未定)
Tips 4:直感的な、未来のインパネ周り
「F 015」の運転席には、ステアリング・ホイールこそ残されているものの、自動運転時に映像を楽しんだり、機能を操作することを重視した設計になっている。車内の幅いっぱいにデザインされた写真のインパネに加えて、前後のドアトリムの内側、そしてリアに合計6個のディスプレーを組み込んでいて、クルマの内部を“デジタルアリーナ”に変えることができる。視線で操作するアイトラッキングやジェスチャーコントロール、ピンチやスワイプのように、直感的に操作できるように設計されている。
全長:5,220mm
全幅:2,018mm
全高:1,524mm
動力:モーター+水素燃料電池スタック