IPOリサーチ企業のルネサンス・キャピタルによると、2015年のIPOは169社で合計300億ドルを調達した。IPOの数は前年から39%の下落で、調達額は65%の下落となった。ただし、2014年はアリババが1社で220億ドルをIPOで調達しており、この比較はあまり意味が無いかもしれないが、米国市場が底をつき、長い上昇相場にはいった2009年の新規公開数は63社で調達額は219億ドルだった。2015年のIPO数と調達額は2009年以来の低水準と言える。
2015年の不調の原因は、注目を浴びるハイテク新興企業が上場を選ばなかったことだと結論づけたくなる。第4四半期にスクエアやアトラシアンといったユニコーン企業が上場した一方、ウーバー、エアビーアンドビー、ピンタレストは株式公開ではなく民間からの資金提供を選んだ。
しかし、2015年の不調は、ハイテク株の新規公開が減少したことだけが、その原因ではない。
ルネサンスは米連邦準備制度と欧州中央銀行の金融政策をめぐる不透明感と、中国の景気減速に対する懸念を指摘している。しかし、おそらく2014年と2015年の最大の違いは、新規上場企業の上場後のパフォーマンスが悪化していることと、エネルギー関連取引が減少したことだ。
2015年のIPO銘柄は平均で公募価格から4%下落し、58%のIPO株がそれを下回って取引されている。公開時に高値をつけた株もその後は下落した。シェイクシャック株は1月の公開以降に高値がついたが、これは浮動株比率が低いことで少数の株式をめぐる奪い合いとなったからだ。しかし、5月に96ドルの高値をつけて以降、株価はその半値となっている。
一方で、エネルギー株の取引の減少も続いた。2011年と2012年のIPOのうち20%以上がエネルギー関連株であったが、その後急に減少した。2013年には10%以下になり、2015年には7%にまで落ちた。
2015年のIPOのうち46%がヘルスケア分野であり、78の株式公開が67億ドルを調達した。しかし、これらの取引とパフォーマンスの3分の1を担っていたバイオテク銘柄の好調が続かなかった。
がんの免疫療法に取り組むナントクエストには2億700万ドル、アルツハイマーの薬に特化したアクソヴァント・サイエンスには3億1500万ドルの資金が集まったが、両社ともにその後値を下げた。
リターンの急落と取引量の減少に加えて、近年の上場へのプロセスはかつてほど簡単ではない。投資会社が後ろ盾し、上場ではなくM&Aを選んだ企業も多い。また、スーパーマーケットチェーンのアルバートソンズや高級デパートのニーマンマーカスが今秋行ったように、上場を延期する企業もあった。
株式を公開することにより、投資家からの厳しい条件を受け入れなければならない場合もある。例えばスクエアは11から13ドルの範囲での初値を設定したが、9ドルで新規株式公開をすることを余儀なくされた。
ルネサンスによると、IPOを取り巻く環境は金融危機以来、最悪の水準にあるという。
バイオテク株はその強さを維持できるのか。2015年の取引のリターンが良かった上位3銘柄はスパーク・セラピューティクス(+120%)、セレス・セラピューティクス(+104%)、アクラリス・セラピューティクス(+101%)だ。シェイクシャックは96%のリターンで4位に続き、その後にはまた2つのバイオテク銘柄が続く。
ルネサンスは「2015年の低調は2016年にもちこされる」と予測している。