ビジネス

2015.12.27

「イノベーション女子」ペットショップとは違う、譲渡の店で新風 / 友森玲子 ミグノンプラン代表

photograph by Jan Buus

どうしても、「生き物を売る」ことに抵抗があった。

12年間ペットサロンを運営していたこともある友森玲子(38)は根っからの動物好き。でも、「値段をつけ、可愛がってくれるかもわからない相手に委ねるのは、絶対にイヤ」という、強い信念を持っていた。

東京・北参道の「ミグノンプラン」は、そんな友森が昨年オープンさせた「保護動物を譲渡する店」。行政に殺処分されそうな動物たちを自ら引き取りに行き、幸せな未来を切り開いてくれると確信した相手に譲渡する。ペットサロン、動物病院からなり、ここで得た利益は動物たちを保護するために使う。3階には保護した動物たちのためのシェルターもある。

きっかけは、糸井重里との対談だった。

「保護動物だけがいる譲渡のお店があれば、みなそこに行くのに」

以前から陰ながらサポートしてくれていた糸井に、友森はそんな話をしていた。動物を飼いたいと思った消費者は、まずペットショップを覗くのがお決まりだ。そこに悪意なんてないけれど、それしか選択肢がないのだ。でも、保護動物を譲渡する場所があれば、きっと、みなそこへ行く。30代後半、守りに入りそうになっていた人生を奮い立たせた。

「店をスタイリッシュにすれば、これまでサポートしてくれなかった人たちも、絶対にこっちを向いてくれる」という糸井のアドバイスもあり、洗練された店づくりにもこだわった。

資本金の目標額は3,000万円。気が遠くなるような数字だったが、かつて勤めていた動物病院の院長らにプロジェクトを話してみたところ、なんと2、3日で3,000万円が集まってしまった。

株主には、利益を還元するのではなく「1年で何匹救うことができたか」で評価してもらう。

「『犬何匹救いました』と言うと、株主たちは『よくやった!』と。株主総会ではそんなやり取りがあるんですよ」

一般の人々への譲渡会は月2回ほど行っている。ネット上に保護動物の情報を載せるだけでは、どうしても人気が集中してしまう。でも、実際に会う場を提供すれば、なかなか譲渡先が見つからなかった動物を、心から気に入ってくれる人が現れる。

「こうした場は、町中につくるべき」と友森は言う。隔離された場所ではなく、東京の真ん中につくったからこそ、近所の住民たちが散歩ボランティアに協力してくれるようにもなった。

「仕事帰りにジムに行く感覚で、活動に参加してもらえればいいですね」

“動物愛護”という言葉が持つ、どこか寂しい響きとは違う、ポジティブで真っすぐな思いがここにはある。


とももり・りょうこ
動物病院に勤務した後、2002年にペットサロンを開業。07年、サロン内で動物愛護団体「ランコントレ・ミグノン」を設立。14年5月にランコントレ・ミグノンの活動をサポートする株式会社「ミグノンプラン」を立ち上げる。営利事業を行いながら、その利益は保護活動のために使う。

古谷ゆう子 = 文 ヤン・ブース = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.17 2015年12月号(2015/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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