ポートフォリオ会社の変革プログラムに対する簡単なテストがある。イグジットの18カ月前にオペレーティングパートナーが退任し、CEOが交代し、変革オフィス(トランスフォーメーション・オフィス)が縮小・閉鎖されたと想像してみてほしい。新たな経営陣が到着したとき、その価値はまだ維持されているだろうか。多くのプログラムにおいて、答えは「ノー」ではないかと筆者は疑っている。今日の市場において、この問いへの答えは過去10年間のどの時期よりも重要になっている。
ベイン・アンド・カンパニーの「2026年グローバルプライベートエクイティレポート」によると、未売却のポートフォリオ会社は約3万2000社、価値にして約3.8兆ドル(約600兆円)に上り、平均保有期間は7年近くに達している。リミテッドパートナー(LP)への分配金の純資産価値(NAV)に対する割合は、4年連続で15%を下回っている。ベインの年央アップデートでは、イグジット価格が直前の評価額を5%を超えて下回ると、ほとんどのLPがジェネラルパートナー(GP)への信頼を失い始めると付け加えられている。
低金利のレバレッジや確実なマルチプル(バリュエーション倍率)の拡大が期待できなくなった現在、事業改善が成長の大部分を担っている。ベインの推計によると、10年前には2.5倍のリターンを得るために年間5%のEBITDA成長が必要だった典型的な案件で、現在では12%が必要とされる。2022年から2025年第3四半期までのバイアウト案件のイグジットにおいて、創出された価値のほぼ3分の2を売上高成長が占めた。
だが、これはプライベートエクイティ(PE)が求めるスピードで成長を牽引できることを前提としている。事業改善が案件の根幹となるカーブアウト(事業分離・買収)において、DealEdgeの調査では、売上高増加率の中央値が2012年以前の約31%から2012年以降には17%に低下し、利益率(マージン)の拡大は29%からわずか2%へと急落したことが判明した。
これがオペレーティングパートナーの質の突如たる低下を反映しているとは考えにくい。可能性の高い説明は、改善がどのように生み出されているかにある。多くの改善は「定着」ではなく「維持」されるように設計されている。そのため、経営陣が目を離した瞬間に価値は蒸発してしまう。これは内部収益率(IRR)、投資倍率・分配金割合(DPI)、イグジットマルチプルに重大な影響を及ぼす。
維持対定着
ポートフォリオ会社の変革の多くは、よくあるパターンを辿る。100日計画でバリューレバー(価値創出のテコ)が指定され、オペレーティングパートナーが変革オフィスを立ち上げ、主要業績評価指標(KPI)がダッシュボードに表示され、定期的なレビューによって新しいモデルが維持される。これが「維持(サステインメント)」だ。この価値創出手法は、新しい働き方を壊れやすいものとして扱い、継続的な努力、監視、およびペナルティの脅威によってそれを防衛する。
問題は、その下にある組織自体が独自のルールに従って動き続けていることだ。予算の決定方法、承認権限の保持者、昇進の基準、報奨や是正の対象となる行動などだ。それらのルールが過去の働き方を優遇している場合、経営陣の関心が他に向いた途端、組織は元の状態へと逆戻りする傾向がある。変革に関するマッキンゼーの研究によると、価値損失の約5分の1は取り組みが完全に実行された後に発生している。筆者は、この数値は実際にはさらに高いと考えている。
維持可能な価値を構築するための戦略
「定着(インベッドメント)」戦略は異なるアプローチをとる。根底にあるルールを特定し再設計することに最大限の力を注ぎ、新しい行動が「最も抵抗の少ない道」となり、古い行動が理にかなわないようにするのだ。権限、報酬、責任に関する真の決断を伴うため、初期段階では間違いなく難易度が高く、反発も大きくなる。しかし、筆者はスポンサー(PEファンド)やオペレーティングリーダーに対し、価値創出の方法について見直すことを促したい。なぜか。まず保有期間から考えてみよう。保有期間が7年に迫るなか、維持タクティクス(一時的な維持施策)では今日の市場が要求するリターンを生み出すことも、イグジットまでその価値を維持することも難しい。リファイナンス、経営陣の交代、そして売却プロセスそのものが、KPIを維持するための日常ルーティンから経営幹部の注意を逸らすことになり、保有期間が長くなるほどこうした局面が増える。監視や注意に依存した成果は、買い手が最も厳しく査定するイグジット直前の1年間ほどにおいて最も脆弱になる。
保有期間が長い場合、早い段階で定着戦略に注力すれば、成果の消失を防ぐための常設組織に資金を投じる必要がなくなるため、事業コストを削減できる。対照的に、維持された成果では、変革オフィス、余分な報告層、外部アドバイザーを維持し続けなければならない。事業の規律が、一人のヒーロー的リーダーや変革オフィスではなく、予算サイクル、意思決定権限、インセンティブ構造に組み込まれていれば、プラットフォームは価値を失うことなく経営陣の交代を吸収できる。年間の実行ペースで2000万ドル(約31億6000万円)のコスト削減を報告しているが、維持に年間400万〜500万ドル(約7億8900万円)かかっている架空のプログラムを考えてみてほしい。洞察力のある買い手は、持続可能な価値を1500万ドル(約23億7000万円)近くであると見なし、それに応じて企業価値を評価するだろう。
売却時、買い手は通常、スポンサー主導で創出された価値がクロージング後に蒸発しがちであることを経験上知っており、提示された成果に対して懐疑的だ。価値が維持されることを証明できるスポンサーは、希望価格に対してはるかに強力な論拠を持つことになる。買い手やレンダー(融資元)は、EBITDAがどれだけ改善したかだけでなく、それがどのように生み出されたか、そして所有権が移転しても存続できるかをますます重視するようになっている。特別なガバナンスや継続的な経営陣の関与に依存する改善は、質の低い価値とみなされる可能性がある。質の高い価値をどのように固定化するかを決めるタイミングは、売却の数カ月前ではなく、価値創出計画(バリュー・クリエーション・プラン)を策定するときであり、ポートフォリオ会社の変革戦略にはこの視点を最初から組み込むべきだ。
実践における「定着」の姿
定着戦略はシステム思考とデザインに基づいているが、大半のケースでは、最も大きな価値を生み出すいくつかの具体的な施策に集約される。第一に、意思決定権限を改定・徹底し、新しいプロセスが意思決定への唯一のルートとなるようにすることだ。例えば、価格設定の例外処理は地域リーダーの判断ではなく、新しい価格設定フォーラムを経由することを義務付ける。第二に、削減額をトラッカー(管理表)上で追跡するのではなく、ベースラインの予算から直接削減するように予算ルールを変更すること。第三に、インセンティブや昇進基準を新しい行動様式と連動させること。最後に、新しいルーティンを計画カレンダーや中核システムに組み込み、変革オフィスが解散した後も自動的に機能するようにすることだ。
前のサイクルでは、レバレッジとマルチプルの上昇が、絶え間ない手入れを必要とする過渡的な成果を補っていた。しかし、EBITDAの要求水準が2倍以上に高まった現在のサイクルにおいて、そうした隠れ蓑はほぼ消え去った。最も高いリターンをもたらすプログラムとは、必ずしもEBITDAを最も速く増加させるものではないだろう。買い手のデューデリジェンスチームから「これらの成果はどのように達成されたのか」と問われた際にも、その価値が揺るがないプログラムこそが、高いリターンをもたらすのだ。



