エンタープライズAIのサイクルが始まって4年が経ち、大企業の多くはAIへの投資が成果を上げていると言えるようになった。だが、その成果が十分に大きいと言える企業ははるかに少ない。
これが、ペンシルベニア大学ウォートン校ヒューマンAIリサーチ(WHAIR)と調査会社GBKコレクティブ(GBK Collective)が本日発表した第4回年次調査報告書『The Adaptive Advantage: Who's Winning with AI and How(適応の優位性:誰がどのようにAIで勝利しているのか)』の中心的な発見である。マネジャー、ディレクター、VP、経営幹部と定義される米国の企業リーダー1007人を対象にした調査で、80%がAI投資についてプラスのリターンを報告した。一方、そのリターンが「強くプラス」だと答えたのは28%にとどまった。
今年の報告書は、この2つの数字の差に焦点を当てている。そして、その説明は派手さのないもの、すなわちスコアカードから始まる。
削減時間がデフォルトの指標に
リーダーたちはAIに大きく賭けている。83%が、AIは今後2〜5年で自社の業界を根本的に変革する、または大きな影響を及ぼすと予想し、87%が今後12カ月でAI予算が増加すると見込んでいる。47%は10%を超える増加を予想している。
しかし部門内では、AIはいまだに時間で成果を証明することを求められている。最も一般的なROI指標は削減時間で、40%の部門が挙げた。主要指標の中で最も使われていないのは純新規収益で、27%だった。
この選択は結果と密接に連動している。純新規収益、営業コンバージョン、生産量、顧客満足度など、少なくとも1つの成長指標を測定している部門では、35%が強くプラスのリターンを報告している。効率性だけを測定している部門では、この数字は13%である。
「企業はAIが自社の業界を変革すると信じているが、多くは依然として、時間を節約することでAIに成果を証明させようとしている」と、ウォートン校のオペレーション・情報・意思決定学教授で、WHAIRのファカルティ共同ディレクターであるプラサンナ・「ソニー」・タンベは述べた。「より強いリターンを得ている企業は、さらに踏み込んでいる。ワークフローを再設計し、明確なオーナーシップとガバナンスを整え、成長にとって重要な成果に照らしてAIを測定している」
短期志向のマインドセットは、まだ追いついていない。今後12〜24カ月におけるAIの主な役割を尋ねたところ、リーダーの52%が生産性向上またはコスト削減を挙げた。新たな収益、新製品、より優れた顧客体験を通じた成長を挙げたのは22%だった。
念頭に置くべき注意点が1つある。これらは自己申告に基づく相関関係の発見である。報告書自体も、例えば、AIへの総支出を追跡できると強く確信しているリーダーは、はるかに強いROIを報告している(56%対10%)一方で、AI全般に対する熱意も高いため、「差の一部は能力ではなく確信を反映している可能性がある」と指摘している。とはいえ、このパターンは行動に移すに足るほど強い。ただし、KPIを切り替えるだけでリターンが生まれることの証明ではない。
オーナーシップと標準化が数字に表れる
企業がAIを中心にどのように組織を構築しているかは、何を測定しているかと同じくらい明確にリターンと相関している。
新たに最高AI責任者(CAIO)を任命した組織では、リーダーの58%が強くプラスのROIを報告している。既存の役員の職務範囲にAI監督を追加した場合、この数字は24%に下がる。そうした役割がなく、計画もない場合は8%まで低下する。現在、組織の3分の2がCAIOまたは同等の役割を設けていると報告しているが、報告書によれば、今年の増加のほぼすべては専任ポストの創設ではなく、既存役員への職務再割り当てによるものだった。
プラットフォーム戦略も同様の形を示している。承認済みの単一AIプラットフォームに標準化した組織の半数が強いROIを報告した。一方、正式なポリシーの下で複数の承認済みツールを認めている組織では30%、定まった方針なしに実験を続けている組織では9%だった。報告書の見立ては、何らかの定まった立場がある方が、ないよりも優れているというものだ。
コストが最大の制約となっている。より強いリターンを阻む障壁として最も多く挙げられたのは、ツール、コンピュート、ライセンスの価格(34%)で、スキル不足(27%)を上回った。リーダーの3分の2近くが、上昇するトークン、ライセンス、APIのコストをAI活用拡大の大きな障壁と見ており、この見方はVP以上の回答者の74%に及んだ。
エージェントは一般化、しかし自律性はまれ
部門の3分の2(67%)が、何らかの形でAIエージェントを使用していると回答している。だが、各ステップで人が承認しなくてもエージェントにタスクを完了させているのは17%にすぎない。
最大のグループである48%は、GBKのブライアン・スミスが「監視付きの中間層」と呼ぶ状態にある。AIが作業を行い、何かが実行される前に人間が確認し承認するという形だ。さらに35%は、AIを提案または下書きのみに使っている。
「多くの企業は監視付きの中間層にとどまり、自律性に対して費用を払いながら、すべての行動を確認している。そして、そこがリターンの最も弱い領域だ」と、GBKのAI・クラウド・エンタープライズテクノロジー部門のエグゼクティブバイスプレジデントであるスミスは述べた。「エージェントから最も大きな価値を引き出している組織は、エージェントが担える業務を決め、その周囲に自動監視を配置し、すべてのステップに承認を与えることをやめている」
データはU字型の曲線を描いている。完全な自律性を持つエージェントを使用している部門では、31%が同調査のワークフロー変革ベンチマークを達成している。AIが助言のみを行う部門では25%に達する。この両極の間では、すべての行動を承認する場合は16%、事後にサンプルを確認する場合は18%へと成功率が下がる。リターンも同じパターンをたどる。
企業が前に進めない理由として、自ら挙げているのは人材よりもリスク許容度である。リーダーは障壁として、データセキュリティ(43%)、規制(24%)、AIの推論に対する不信(23%)を挙げた。スキル不足は最下位の8%だった。
説明責任は未解決である。エージェントがミスをした場合、責任の所在はガバナンスまたはリスクチーム(28%)、導入した従業員のマネジャー(26%)、従業員本人(25%)にほぼ均等に分かれた。11%は、誰に明確な責任があるのかわからない、または誰も責任を負っていないと答えた。この不確実性は組織図の中間層に集中しており、マネジャーとディレクターでは20%だったのに対し、VP以上では3%だった。
成果を分ける段階は、組み込みである。リーダーの73%は、AIによって自部門の働き方が大きく変化したと答えているが、AIが中核プロセスに完全に組み込まれていると答えたのは28%にとどまる。報告書では、この要素がROIと最も強く相関していることが示された。同調査の3つの変革マイルストーンをすべて達成している部門はわずか20%である。達成している部門では、67%が強くプラスのROIを報告している。
リーダーと従業員が語る職場像は異なる
同調査は今回初めて、初級および中堅レベルの従業員409人にも調査を行った。彼らと管理職との間のギャップは、ほぼすべての準備状況指標に表れている。
- ワークフローの変化:リーダーの73%は、AIによってワークフローが大きく変化したと答えている。従業員で同意したのは58%だった。
- 研修:リーダーの78%は従業員が十分な研修を受けていると答えている。従業員でそう答えたのは56%だった。
- 自信:リーダーの79%は、従業員が日常的なAI利用に自信を持っていると答えている。従業員で同意したのは62%だった。
- ビジョン:リーダーの79%は、経営陣が明確な長期AIビジョンを示していると答えている。従業員で同意したのは64%だった。
報告書は、職位によるギャップを今年のデータで最も一貫した発見だとしている。このギャップはすべての業界、すべての企業規模カテゴリーに見られ、購買・調達を除くすべての部門で確認された。
これはテクノロジーへの反発ではない。初級および中堅レベルの従業員の73%は、AIが自分の役割にプラスの影響を与えたと答えており、AIを使っている従業員の84%は時間の節約になっていると回答している。自分を抵抗感があると表現した7%でさえ、その多く(79%)が時間の節約を報告している。
「強力なAIへのアクセスは急速に遍在化しつつある」と、GBKコレクティブのパートナーで、ウォートン校講師のジェレミー・コーストは述べた。「優位性は、組織がそれを使って何ができるかに由来する。ワークフローを再設計し、リーダーと従業員の足並みをそろえ、AIを測定可能なビジネス成果へと転換することだ」
マーケティングリーダーにとって、際立つ数字が1つある。マーケティングおよび営業部門は、同調査の組織的整合性の基準を満たす可能性がどの機能よりも低く、25%だった。一般管理部門は53%、IT部門は52%だった。一方で、強いリターンと最も関連が深い成長指標、すなわちコンバージョンや顧客満足度は、マーケティングチームがすでに担っているものである。
利用は増加、熱意は冷却
リーダーによるAIの日次利用は今年、16ポイント上昇して62%となり、91%が週1回超の頻度で使用している。一方、感情は逆方向に動いた。自分を「興奮している」と表現する割合は8ポイント低下して51%となり、「慎重」は7ポイント上昇して44%、「懐疑的」は8ポイント上昇して25%となった。同調査の歴史上、利用と感情が逆方向に動いたのは初めてである。
認知能力の低下に関する懸念は続いている。VP以上のリーダーの48%、初級および中堅レベルの従業員の46%が、自身のスキルまたは認知能力が低下していることを懸念している。マネジャーとディレクターでは32%だった。上級層はAIによる変化も最も大きい。VP以上の回答者の82%は、自分の焦点がAIの出力を管理することへ移ったと答え、67%はAIがなければ生産性が大幅に低下すると回答している。
初級職が最も大きな圧力に直面
リーダーの37%は、自部門でAIに関連した人員削減があったと報告し、33%は採用の減速または凍結があったと答えた。今後2〜5年を見通すと、24%が初級職の採用は減ると予想している。経営幹部職が減ると予想したのは14%だった。一方で、82%はAIが新しい従業員の早期貢献に役立つと答えている。
この調査は、AIのリターンは人員削減から生まれるという前提を複雑にしている。強いROIを報告した部門は、他の部門よりも人員削減や採用凍結を行っている可能性が高かったわけではない。むしろ、マネジメント構造を変更している(64%対47%)、AI利用を監視している(92%対74%)、AIを人事評価に組み込んでいる(87%対65%)、従業員に十分な研修を行っている(91%対73%)可能性が高かった。
削減が実施された場所では、不安がつきまとう。AIを理由に部門で人員削減が行われたリーダーのうち、61%が自身の役割を懸念している。削減が行われていない場合は18%だった。
3つの基準をすべて満たすのは7%
報告書は成功を3つの指標で定義している。価値の証明、ワークフローの変革、組織の整合である。3つすべてで成功している組織は7%にすぎない。企業規模では、どの組織がそこに到達するかは説明できない。部門、業界、職位を考慮すると、いずれの指標も売上規模の階層による差は見られなかった。
「圧倒的大多数の企業がAIを利用しており、そのほとんどが何らかのリターンを得ている」と、ウォートン校のセバスチャン・S・クレスギ記念マーケティング教授で、WHAIRのファカルティ共同ディレクターであるステファノ・プントーニは述べた。「リーダー企業を分けているのは、意味のある価値を生み出すほど十分に、AIを中心に事業を変えているかどうかだ」
報告書自身の2027年予測は、コスト上昇によって部分的な導入を正当化しにくくなる中で、この2つのグループの距離が広がるというものだ。
調査方法:GBKコレクティブは2026年7月9〜29日、従業員1000人以上、売上高5000万ドル(約78億9000万円)超の米国民間企業に勤務するフルタイム従業員1416人を対象に、15分間のオンライン調査を実施した。サンプルには、マネジャー以上1007人と、初級および中堅レベルの従業員409人が含まれる。前年比較には、マネジャー以上のベースを用いている。



