AIが多くのホワイトカラー職を奪いかねない状況の中、ブルーカラーの仕事がこれほど魅力的に見えたことはない。将来を見据えてキャリアを築きたい多くの若者にとって、熟練技術職は今や「プランA(最優先の選択肢)」になっている──ただし、トレーニングを受けられればの話だ。
「全員が大学へ」という文化の中で縮小または完全に廃止されてきた熟練技術職のトレーニングプログラムは、今では需要に追いつこうと奔走している。シカゴ大学NORCによる最新の調査は、ブルーカラー分野の課題がもはや「人材が集まらないこと」ではなく、「限られた枠に対して応募者が多すぎること」であることを示している。
NORCはこのテーマに関して、6000人以上の有権者、保護者、公立高校の生徒を対象に調査を実施し、政治的立場を超えたあらゆる層で、AIや技術職トレーニングへのアクセスに対する懸念が広がっていることを明らかにした。
NORCの調査結果は以下の通りだ。
- 熟練技術職の授業を受けたことがある生徒はわずか30%
- 技術職の授業履修を希望した生徒の3分の1は、開講されていない、または定員に達していたため履修できなかった
- 技術職の授業が提供されていない学校の生徒の51%が、受講に関心があると回答
- 有権者の79%と保護者の72%が、熟練技術職の授業削減や廃止を重大な問題だと回答
- 有権者の95%と保護者の80%が、熟練技術職に関する高校の授業が米国の生徒たちに有益であると回答
- 保護者も有権者も、選択科目への資金提供の最優先事項として熟練技術職を挙げており、STEM、医療、ビジネス、体育、芸術を大差で上回っている
かつては若者がこうした機会を知らないという「認識の格差」によって生じていたスキルギャップは、まもなく「アクセスの格差」によって生じるようになるかもしれない。これは解決しなければならない問題だ。
スキル、関連性、そして自信
これらの産業への関心が高いにもかかわらず、42%の生徒が自身の学校で技術職の授業が提供されていないか、存在すること自体を知らないと回答している。そのような授業を提供している学校でも、多くの生徒が門前払いをくらっており、中には複数回断られた生徒もいる。技術職の授業を受けようとした生徒の16%は、定員オーバーまたは単純に開講されていないという理由で受講できなかった。こうした経験を複数回した生徒は、そのうちの35%に上る。
トレーニング機会の不足は、マイノリティの生徒に不均衡な影響を与えている。熟練技術職の授業でキャンセル待ちリストに入れられた経験がある生徒は全体で14%だが、白人の生徒(9%)と比較して、黒人(23%)やヒスパニック系(17%)の生徒の割合が高くなっている。
これは痛ましいことだ。なぜなら生徒たちは、学んだ具体的なスキルを遥かに超える恩恵を報告しているからだ。技術職の授業を受けた生徒の59%が教育の関連性を指摘しており、学校での学びが卒業後の生活に役立つと感じたと回答した。一方で、技術職の授業を受けたことがない生徒で同様に答えたのはわずか38%だった。
技術職を学ぶ生徒は、大学進学と就職の両方に対する準備がより整っていると感じている。「大人と協力して働くことに抵抗がない」と答えた割合は、履修しなかった生徒が45%であるのに対し、技術職の授業を受けた生徒は62%に達した。他者と協働する能力に関しても、技術職の生徒(61%)はそうでない生徒(48%)よりも高くなっている。
高校で技術職の授業を受けることは、より焦点を絞ったキャリア探求のプロセスを生み出す。「希望するキャリアに就くためのステップを理解している」と答えた技術職の生徒は68%(そうでない生徒は54%)、「自分の関心に合ったキャリアを理解している」と答えた生徒は66%(同52%)だった。
熟練技術職を「高等教育への道を閉ざすもの」と見なす人々にとっては皮肉なことに、技術職の生徒の方が、学校が大学に必要なスキルや知識の習得に役立ったと感じている割合が高い(48%対37%)。
AIが促す技術職の成長
AIは複数の面で熟練技術職にとって追い風となっている。データセンターの建設が建設関連の雇用の急増をもたらしただけでなく、AIに対する不安から、多くの保護者が子供たちの従来の大学進学ルートを再考するようになったのだ。
NORCの調査によると、約半数(49%)の保護者が「AIによって子供の将来のキャリア機会が減少する」と懸念している。調査に応じた有権者においては、AIが雇用に与える影響を心配する割合が56%に達した。
若者たちも懸念を抱いている。高校生の10人に6人が、AIのせいで雇用の機会が減るのではないかと少なくともある程度心配している。また、10人に3人近くの生徒が、AIに簡単に代替されない仕事を求めて、当初志望していたキャリア計画の見直しを行っている。
政府はどう対処すべきか
熟練技術職のトレーニング機会の不足を懸念し、大半の有権者(84%)は、政府が熟練技術職の教育やプログラムに対してより多くの資金を提供すべきだと回答している。43%は「大幅な資金増額を行うべきだ」と主張した。また、69%が「AIによる悪影響を受ける可能性が低い分野のトレーニングに絞って政府が資金を提供するべきだ」と考えている。
約86%は責任が選挙で選ばれた政治家にあると考え、高校レベルでの熟練技術職や実践的学習の支援をさらにおこなうべきだと信じている。51%は政治家によるこの分野でのより積極的な行動を望んでいる。
公平を期すならば、連邦レベルではすでに熟練技術職トレーニングに対する一定の支援は存在する。今年7月に始まったばかりの「ワークフォース・ペル助成金(Workforce Pell Grants)」は、短期の職業訓練プログラムの費用に充てることができる。認定見習い制度(Registered apprenticeships)は労働省から一部資金援助を受けており、今年は主要産業部門において成果連動型見習い制度に1億6200万ドル(約255億円)が交付された。また、労働力革新機会法(WIOA)のトレーニング資金も、バウチャーのように機能する個人トレーニング口座(Individual Training Accounts)を利用して受講生が技術職トレーニングの費用を賄うもう一つの方法となっている。
未来への投資
たとえ生徒がトレーニング費用を支払うための資金が潤沢に流れ込んだとしても、需要に応えるだけの十分なトレーニング枠がなければ、ほとんど意味をなさない。だからこそ、先月18州の優れた公立高校の熟練技術職教員25人とそのプログラムに200万ドル(約3億1500万円)を授与したハーバー・フレイト・ツールズ・フォー・スクールズ(Harbor Freight Tools for Schools)のような取り組みが存在することは心強い。
このような投資は学校と雇用主との深い連携を促進することができ、過去の受賞者の71%が、地元の企業からコラボレーションに関する問い合わせが増えたと報告している。
ここにある機会が生徒のためだけにとどまらないことは明らかだ。学校は長年推進してきた大学進学偏重の姿勢を広げ、熟練技術職のコースを対等な立場で受け入れなければならない。
産業界・企業側においては、先見の明のあるリーダーたちが自身の分野に対する関心が高まっているこの好機をとらえ、高校と有意義につながり、教育から雇用への明確で魅力的なパスウェイ(道筋)を構築すべきだ。雇用環境が急速に変化する今こそ、将来の労働力に投資し、生徒、地域社会、企業のすべてに貢献するより優れた人材パイプラインを構築すべき時である。



