素晴らしいカンファレンスから戻ってきたばかりだとしよう。ノートにはメモがびっしりと書かれ、スマートフォンには興味深いスライドの写真が溢れている。
これまで考えもしなかったアイデアに触れ、帰りの道中では、これから変えていくべきことについて計画を練っていたことだろう。
だが、月曜日がやってくる。
受信トレイは未読であふれている。
カレンダーには会議が三重に詰め込まれている。そう、不在の間に積み上がった会議だ。
正午までに対応を求める連絡が入る。重要案件だ。いつだってそうである。
そして、知らず知らずのうちにカンファレンスのノートは引き出しの奥へと仕舞われ、スマートフォンのスライド写真はカメラロールの底へと沈んでいく。金曜日を迎える頃には、そもそも何にそれほど熱くなっていたのかすら、思い出すのもやっとだ。
筆者はカンファレンスでの講演を生業にしているが、こうした光景を幾度となく目にしてきた。
これは記憶力の問題ではない。
モチベーションの問題でもない。
エネルギーの問題でもない。
計画性の問題なのである。
イベントに参加するために相当な時間とお金を投資しているにもかかわらず、帰宅後に何も起きないことがあまりにも多い。
そこで、カンファレンスで得た学びを無駄にせず定着させるために、実践できることを以下に紹介する。
改善点だけでなく「うまくいっていること」も書き出す
多くの人は、自分が間違っていることのリストを抱えてカンファレンスから帰宅する。
だが、それは学びの半分にすぎない。
テルアビブ大学の研究者シュムエル・エリスとインバル・ダヴィディは、一連の演習に臨む兵士を調査した。
一方のグループは、訓練日ごとに失敗点のみを振り返った。
もう一方のグループは、失敗点と成功点の両方を振り返った。
両方を振り返ったグループの方が、はるかに大きな改善を示した。
また研究者らは、人間は成功体験よりも失敗点の方を、最初からより詳細に理解していることも突き止めた。
筆者の最新のベストセラー書『The Solution Mindset』では、10の問題解決スーパーパワーの1つとして「Fail Successfully(うまく失敗する)」を挙げている。これは、成功だけでなく失敗から学ぶことに前向きな重点を置きながら失敗する力である。
だからこそ、金曜日が来る前に、すでに自分が正しく実践できているとカンファレンスで確認できたこと3つと、なぜそれが効果的なのかを書き出してみよう。
改善リストに取りかかるのは、そのあとだ。
3週間以内に、とにかく行動を開始する
テルアビブ大学のミナ・ウェストマンとドブ・エデンによる研究では、休暇の前・中・後にわたり、76人の事務職員を追跡した。
休暇中、バーンアウト(燃え尽き症候群)の数値は低下した。
しかし、復帰からわずか3日後には、すでに数値が再び上昇し始めていた。
3週間後にはどうなったか。元の水準に戻っていたのである。
休暇による効果は完全に消え去っていた。
この研究はカンファレンスではなく休暇を対象としたものだが、本物の休暇による気分の高まりが3週間で消えてしまうのであれば、数日間のカンファレンスによる高揚感がそれ以上長く持続する見込みは薄い。
帰ってきた瞬間からカウントダウンは始まっている。
『The Solution Mindset』における第1のスーパーパワーは「Just Start(とにかく始める)」である。
始める計画を立てることでも、始めるための委員会を結成することでも、始める許可を求めることでもない。
だから今すぐ、ノートの中からアイデアをひとつだけ選び、今週中に最初の小さな一歩を踏み出そう。
メールを1本送る。
クライアントとの会議を予約する。
ベンダーとテストを実施する。
販売代理店に電話をかける。
日の目を見ない完璧な計画よりも、今すぐ踏み出す小さな一歩の方が価値がある。
1人の人に話し、真剣に聞いてもらう
頭の中に留まったままのアイデアは、そこで命を落とす。
だが、単に誰かに話すだけでは不十分だ。
相手がどのように話を聞くかが、実は非常に重要であることがわかっている。
エルサレム・ヘブライ大学のドタン・ディ・カストロとアブラハム・クルーガーらの研究チームは、744人を対象とする5つの研究を実施した。
その結果、上司に話を聞いてもらえている、つまり「真剣に耳を傾けてもらえている」と感じている従業員ほど、創造性が高いことが判明した。
その理由は心理的安全性にある。
誰かが真剣に向き合い、時間をかけて話を聞いてくれると、私たちは「自分のアイデアがどう受け止められるか」を計算するのをやめ、アイデアそのものを深掘りし始める。
ある実験では、研究者が聞き手の視線の先にちらつく画面を配置した。
話し手はそれに気づき、相手の聞き方を低く評価した。
研究者らは、常に気を取られるものが溢れる環境において、聞くふりをすることは不可能だという結論に至った。
では、どうすればよいのか。
今週中に1人の人を見つけ、カンファレンスで得た最も優れたアイデアをひとつ伝えよう。
スマートフォンの電源を切り、ノートパソコンを閉じた状態で、10分間の時間を求めてみよう。集中した時間を作るのだ。
もしあなたがチームをカンファレンスに送り出したリーダーなら、あなた自身がその聞き手になろう。
何を持ち帰ったかを尋ね、その答えにしっかりと耳を傾けるのだ。報告書や、何かを学んだことを証明するスライドを求めるのではない。ただ、聞くことに徹するのである。
結局のところ、カンファレンス後に何をするかの計画によって、それが単なる「経費」に終わるか「投資」になるかが決まる。
うまくいっていることを振り返り、今日ひとつ新しい行動を始め、1人の人に話を聞いてもらおう。
どれも時間はかからず、いずれも説得力のある研究によって裏付けられている。さあ、引き出しからノートを取り出そう。
金曜日は、もうすぐそこだ。



