暗号資産

2026.10.27 09:21

トークン化株式は本当に投資家に恩恵をもたらすのか

Adobe Stock

Adobe Stock

今月、米証券取引委員会(SEC)は大々的な発表もなく、米国株のトークン化への扉を開いた。新たな「イノベーション免除制度(Innovation Exemption)」の下、承認されたプラットフォームは上場株式のブロックチェーン版を提供できるようになった。アピールポイントは聞き慣れたものだ。眠らない市場、より迅速な決済、小額の所有権、容易な国境を越えたアクセスといった具合だ。

トークン化株式は普通の株式にない何を実際にもたらすのか?

最大のメリットとされる「24時間年中無休の取引」から見てみよう。これにブロックチェーンは不要であり、その大部分はすでに実現している。ブルーオーシャン(Blue Ocean)、ブルース(Bruce)、ムーン(Moon)といった夜間取引市場では、投資家は週5日、1日ほぼ23時間米国株を取引できる。ブルースは現在、ピーク6(PEAK6)とロビンフッド(Robinhood)の支援を受け、ナスダックの取引技術と従来の清算・保管インフラをベースに、週末取引の追加を進めている。規制当局の承認を前提として、既存の市場インフラの上で週7日24時間の米国株取引が実現しつつあるのだ。トークンは必要ない。

その他のセールスポイントも、精査してみると説得力に欠ける。単元未満株取引はすでに多くの証券会社で標準化されている。米国の決済サイクルは2024年に翌日決済(T+1)へと移行しており、大半の投資家にとってT+1と即時決済の差は実感できないものだ。国境を越えたアクセスは主にライセンスと証券業務の問題であり、技術の問題ではない。これらを削ぎ落とすと、「何が得られるのか?」という問いへの答えは、往々にして単に「ブロックチェーン上で決済される」ということに過ぎない。それはバックオフィスを運営する企業にとっては重要かもしれないが、注文を出す個人投資家にどのような恩恵があるのかを理解するのは難しい。

トークン化は現行システムがすでに解決した問題を再燃させるリスクがある

例えば、売買スプレッドを狭く保ち、即座の売買を可能にするマーケットメイキングという業務を考えてみよう。現在、マーケットメーカーは自ら株式を保有していなくても、ロケート(調達先の確認)と証券貸借市場を利用して事後に株式を調達することで、投資家に株式を提供できる。

これがトークン化株式でどう機能するかは、まだ未解決の問題だ。一部のモデルでは、トークンの背後に今日の清算・貸借構造の多くを維持する可能性がある。だが、ディーラーが提示前にトークン自体を保有する必要があるなら、それは在庫に資本を固定し、流動性をトークンと普通株に分断し、おそらくスプレッドを拡大させることを意味する。投資家はそのコストを、取引のたびに支払うことになる。

さらに所有権の問題もある。トークン化株式であっても、配当、議決権、そして現物株との交換権を備えた株式であるべきだ。SECがトークン化株式に対して普通株と同等の権利を保持するよう求めているのは当然である。しかし投資家は、プラットフォームが破綻した場合に何が起きるのか、また、プライマリー市場が閉じている間にトークンが取引される際、どのような価格が提示されているのかを問う必要がある。アップル株を所有することと、アップルの株価に連動する商品を保有することは同じではない。

「休息」の代わりとなるものは何か?

担保の移動や国境を越えた決済を行う機関投資家にとって、共有台帳はいずれ実質的なコスト削減につながるかもしれない。しかし、それはバックオフィスの話だ。個人投資家に対して「革命」として売り出されるトークン化は、これまでの多くのフィンテックがそうであったように、古い商品に新しい包装紙を被せ、その下に新たな複雑さを隠したものになるリスクを孕んでいる。

そして、業界の構造はすでに出来上がっている。この10年間、業界はワンタップでの取引、「無料」の手数料、画面上に舞い散る紙吹雪など、取引の即時化に時間と資金を費やしてきた。より多くの人々が参入したが、多くの人が成果を上げられたわけではない。取引時間の延長はリスクをさらに高める。シンガポールの投資家がニューヨーク時間に縛られる必要は皆無であり、夜間市場の存在によってすでにその必要はなくなっている。しかし、取引が週末にまで拡大するにつれ、最後まで残されていた自然な「休息」が消滅する。プラットフォームはそれに代わる真のセーフガード、すなわちリスク上限設定、損失アラート、クーリングオフ期間、明確な価格設定、そして投資教育を提供しなければならない。

これこそが、私たちが構築している個人投資家向けプラットフォーム「リアル・トレーディング(Real Trading)」の根底にある考え方だ。私たちはインフラの方式にはこだわらない。重要なのは、投資家が適正な価格、真の所有権、そして自身が直面する最悪の瞬間からの保護を得られるかどうかである。取引自体はすでに容易だ。だが「うまく取引すること」は難しい。だからこそ、私たちはプロが頼りにするツールを個人に提供する。実際の取引所への直接アクセス、初日から組み込まれたリスク管理機能、透明性の高い手数料、そして継続的なメンタリングだ。私の著書『Real Trading』で主張しているように、証券会社は顧客の敵ではなくパートナーであるべきなのだ。

したがって、株式市場をトークン化する前に、真に重要な問いを投げかけるべきだ。それは投資家により良い価格、強固な権利、あるいはより安全な市場を提供するのか? それとも、十分に機能している既存のシステムに、コストと複雑さの新たな層を付け加えるだけなのか? 前者であることを誰かが証明しない限り、立証責任は技術の側にある。原則が変わるべきではないのだ。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事