発言する際に「場を制する(存在感を示す)」能力は、キャリアにおける大きな資産となる。「パブリックスピーキング」という言葉に身構えてしまう人も多いかもしれないが、実のところ、私たちは誰もが話し手だ。超満員の講堂で行うカンファレンスの発表であれ、ビデオ通話での数人の同僚に向けた話であれ、人前で話すことは現代のビジネスライフに不可欠な要素である。
ここで朗報がある。場を味方につけるのは、多くの人が考えているよりも簡単だ。自身の声、ボディランゲージ、そしてメッセージが与える影響を理解することで、すでにある自身の強みを、敬意と関心を集めるためのツールへと変えることができる。
力強い声を養う
力強い声は、場を制するための最も重要な要素の1つだ。これは、大声を出したり大げさなテンションで話したりすることではない。速すぎず遅すぎない緩急のある抑揚で、明瞭かつ自信を持って話すことを意味する。
筆者が最初の広報(PR)の職を得られたのは、力強い声を持っていたからだった。採用された後、オーナーになぜ他の候補者ではなく自分が選ばれたのかを尋ねた際に、その事実を知った。当時、ビジネスの大部分は電話で行われており、筆者の新上司は、明瞭で自信に満ちた声が即座に説得力と信頼感を与えると考えたのだ。
この力強い声を身につけた経緯は、少し意外に思えるかもしれない。10代から20代前半にかけて、筆者は本格的にバレエを踊っており、ジョフリー・バレエ団の『くるみ割り人形』に出演した経験もある。ダンスには、正しい姿勢、持久力、そして呼吸のコントロールが不可欠だ。呼吸が動きを支え、エネルギーを与える。声にも全く同じ支えが必要なのだ。
また、合唱やアンサンブル、ミュージカル劇の経験を通じても、自身の声を見つけ、相手に届く呼吸法を学んだ。結局のところ、両親がダンスやボイスレッスン、コンテストの送迎に費やしてくれた費用は1セントも無駄にならなかった。キャリアを通じて使い続けることになる素晴らしい「楽器」、すなわち「自分自身」を育む手助けをしてくれた両親には、感謝してもしきれない。
読者の皆さんの中にも、過去の経験が知らず知らずのうちに備えとなっているケースがあるはずだ。たとえば、スポーツや舞台芸術などは、程度の差こそあれ、呼吸の管理や身体のコントロールを必要とする。
発声練習や呼吸法によって、存在感のある声をさらに伸ばすことができる。まず最初のアドバイスとして、筆者は常にクライアントに対し、胸式呼吸ではなく腹式呼吸を練習するよう促している。正しい呼吸法を身につけるとは、鼻から息を吸い、お腹を膨らませてから息を吐くことだ。米国肺協会(American Lung Association)によれば、これが正しい呼吸法であり、身体のリラックス状態を保ちながら、声を強力に支えることができる。
自身のボディランゲージを把握する
私たちのボディランゲージの多くは無意識のうちに現れるため、それをコントロールするには意識的な把握が必要となる。ここでもダンスや演劇のバックグラウンドがプロとして役立った。キャリアの初期、筆者は話の内容を際立たせる場面で、自然と身振り手振りを交えていることに気づいた。長年、腕や身体全体を使って物語を伝える経験を重ねてきたことで、身体が動作を記憶していたのだ。
画面に向かって過ごす時間が増える中で、ボディランゲージが今なお重要であることを忘れてはならない。ビデオ通話では足の震えは見えないかもしれないが、その緊張は表情や姿勢に影響を与える。オンラインでの通話やプレゼンでは、背筋を伸ばして肩を開き、快適に座れるようデスクやモニターをセッティングしよう。カメラはレンズを直視できる位置に配置する。そして手元の動きも忘れてはならない。カメラに映るよう少し高めに挙げる必要があったとしても、ジェスチャーは聞き手にとって重要な信号となる。
対面であれば、ボディランゲージはさらに顕著になる。クライアントのコーチングやメディアトレーニングのワークショップを行う際、筆者は姿勢や意図的なジェスチャー、その他の言語によらないサインを用いて、メッセージを妨げるのではなく強化する取り組みを行っている。目標は、すべての動きを振付のように決めることではない。話をしながら、自分の身体が何を伝えているかを意識できるようになることだ。
原稿の暗記ではなく、メッセージの真髄をつかむ
場を動かすこととは、暗記したプレゼンを完璧にこなすことではない。会話がどのように展開しようとも、自信を持って自然体で伝えられるほど、自身のメッセージを熟知していることだ。
リハーサルは重要だが、プレゼンを丸暗記するのではなく、聞き手に最も記憶に残してほしい3つのポイントを整理しよう。それらのポイントを多様な表現で伝える練習をし、予想される質問を考えておく。メッセージへの理解が深まるほど、「次に何を言おうか」に意識を取られることなく、聞き手にしっかり向き合えるようになる。
同様に重要なのが、聞き手を知ることだ。彼らはすでに何を知っているか。彼らにとって最も重要なことは何か。あなたに何を求めているのか。聞き手の関心や知識水準に合わせてメッセージを調整することは、専門性を損なうことではない。専門性を伝わりやすくすることを意味する。目指すべきは講義をすることではなく、聞き手と対話をすることだ。
「すでに経験済み」であることを思い出す
自身が思っている以上に、すでに多くの「場」を自分のものにしてきたはずだ。採用面接を受けて内定を得た経験や、提案を通して賛同を得た経験、複雑な内容をクライアントや同僚に説明して意思決定を助けた経験があるはずだ。
そうした経験こそ、エグゼクティブ・プレゼンス(指導者としての存在感)が、ステージに上がったり重要な会議に出席したりした際、突然その場で作り出されるものではないことの証明だ。正しい呼吸法、声、ボディランゲージ、そしてメッセージの扱い方をより意識的に行うことで、その存在感を強めることができる。
次に場を仕切る、あるいは存在感を示す必要があるときは、すでに自分という「楽器」を持っていることを思い出してほしい。あとはその使い方を学ぶだけだ。
なお、歌やダンスのレッスンはあくまでオプションである。



