米ホワイトハウスは23日、ロシアとウクライナがウクライナ南部ヘルソン州オレシュキでの一時停戦に合意したと発表した。頭上を無人機(ドローン)が飛び交うオレシュキでは、深刻な人道問題が発生していた。ウクライナのNGO「Truth Hounds」のオクサナ・ポカルチュク共同事務局長は14日、東京都内の早稲田大学で、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」などと共催したシンポジウムに登壇し、「『人間狩り』――ウクライナ前線地域で民間人や人道支援要員を狙うドローン攻撃」と題して講演した。
ポカルチュク氏によれば、2年ほど前からロシア軍による民間人や救護・人道支援要員へのドローン攻撃が激しくなっている。国連ウクライナ人権監視団の集計では、前線付近で短距離ドローン攻撃により、2025年に民間人577人が死亡し、3288人が負傷した。ポカルチュク氏によると、2026年6月の一カ月間だけで111人が死亡し、710人が負傷した。死傷者は2024年の約2倍のペースで増えているという。
民間人死傷者が増えている背景について、キーウやリビウなど前線から遠い地域では、住宅などを巻き込む長距離ミサイルやドローンによる攻撃が主な要因となっている。一方、前線から40~50キロ程度の範囲では、安価な市販部品を使った短距離ドローンによる攻撃が目立つ。攻撃の多くには、FPV(一人称視点)型の自爆ドローンが使われている。2025年以降は、電波妨害の影響を受けにくい光ファイバー式ドローンが大量投入されているほか、一部ではAI(人工知能)を使った終末誘導も導入され、ドローン攻撃への対処が難しくなっている。
ポカルチュク氏が特に強調したのが、FPVドローンのロシア側操縦者は「標的(人、車両、建物)を目視している」という事実だ。同氏は「操縦者はゴーグルや画面を通してリアルタイムで映像を見ることができるため、人、車両、建物といった特定の標的を選ぶことができます。標的を選び、追尾しながら、リアルタイムで操作するのです」と語る。「操縦者には買い物袋を提げた女性、自転車に乗った高齢男性、停留所にいるバス、赤十字の標章を付けた救急車も見えています。誰を攻撃しているのかを正確に把握しているのです。流れ弾でも、精度の低いミサイルでもありません。一つひとつの攻撃が、意図的な選択なのです」(同氏)。
そのうえで、最近特に懸念されているのが、負傷者を助けるために現場へ向かう人々への攻撃の激化だという。同氏によれば、非政府系の人道支援要員を対象にした攻撃は、2024年の20件から2025年には38件へ増え、2026年は最初の8カ月だけで43件に達した。
最初の攻撃後、数分から数時間を置いて同じ場所を再び攻撃する「ダブルタップ攻撃」も増えている。ポカルチュク氏によると、2024年から2026年に緊急対応要員が巻き込まれた短距離ドローン攻撃のうち、50%超がダブルタップ攻撃だった。数時間後に再攻撃する事例は、攻撃対象が当初の標的から、被害対応に当たる人々へ拡大した可能性を示している。
このため、救助活動が遅れたり、中断したりする。高齢者や障害のある人々の避難が取りやめられ、人道支援団体も支援を必要とする地域から撤退せざるを得なくなる。ドローン攻撃の目撃者はポカルチュク氏らに「バスは来なくなり、店は閉まり、そこら中をドローンが飛び回っている」と証言したという。
そのうえで、ポカルチュク氏は「民間人の間に恐怖を広めることを主な目的とする暴力行為や威嚇は、国際人道法で明確に禁止されています。民間人を故意に攻撃した場合、戦争犯罪に当たる可能性があります」と指摘する。さらに「本当に必要なのは正義です。だからこそ、国際刑事裁判所(ICC)が必要です。日本がICCへの公的な支持を続けることは非常に重要です。日本がICC最大の分担金拠出国であることを評価しています」と語った。



