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「これって、子どもたちが喜んでくれるかな」。小児病棟、急性期病棟で働いてきた看護師が患者のことを思ってつくる商品。国際交流基金が、「新現代日本のデザイン100選」として世界への出展を決めた、人の心に触れる、温かなイノベーション!

「看工連携」をご存じだろうか。メディカル企業が医師との協同で医療機器を開発することを「医工連携」と呼ぶが、最先端企業の人間は医師に協力は仰いでも、看護師に声をかけることはめったにない。だが、患者と長く触れ合う看護師たちの知恵にこそ、ビジネスのアイデアが眠っている。

 「患者さんたちの気持ちを少しでも和らげてあげたら」という思いで起業したのが、福井県鯖江市に住む4人の子どもの母親であり、一看護師だった山本典子である。彼女のささやかな行動は、一躍、自治体や政府から注目の的となり、さまざまな賞を受賞して海外に紹介されるまでになった。
「私は京都生まれの京都育ち。京都にずっといたら、 起業はしていませんでしたよ」
 北陸の訛りで快活に笑う彼女が、夫の郷里である鯖江市に移住したのは2000年。中小・零細の眼鏡工場が多く、共働きが当たり前の町で、彼女は病院勤務を始めた。そこで気になることがあった。「包帯を患部に固定するサージカルテープを、同僚たちが白衣のポケットから床に落とすのです。テープはむき出しのままだから、粘着部分にゴミが付着します。京都の病院で働いていたときも見かけた光景で、あれから何年も経つのに進化していなかったのです」 起業にもっとも理解を示してくれ おそらく日本全国で見られる日常的な光景だろう。

 だが、地方の小さな病院には、すべての医療機器滅菌する経済的余裕はない。このささいなことが院内感染を招き、弱い者から命を奪っていく。特にテープは人間が手で触るものだけに、埃とともに菌が付着しやすい。夜、帰宅した彼女は夫に、あるアイデアを話した。プラスチックケースに完全に収納され、埃に触れることなく患者の治療に使えるテープだ。

 3D造形の仕事をしている夫は黙ったまま、その場で設計を始めた。
 こうして夫婦でつくり上げたのが、医療用サージカ ルテープカッター「きるる」である。地元・鯖江商工 会議所の「新産業創出推進事業」でグランプリを取り、07年にはグッドデザイン賞を受賞した。
 山本は医療現場の課題をデザインで解決する「メディディア」を起業。夜、子どもたちの食事をつくり終えると、福井高専の夜間講座に通い、3D設計とプ リンターの技術を学んだ。(以下略、)

井上晶夫

 

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