世界で最も多くの来園客を集めるテーマパークのトップが、世界的大企業から毎年何百ものパートナーシップの打診を受けていると聞いても、驚く人はいないだろう。しかし、彼がそのすべてを断っていると知れば驚くかもしれない。奇妙に思えるかもしれないが、このアプローチこそが、同パークに最も魔法のような魅力をもたらしているのだ。
先月、1日あたりの平均入場者数が世界最多のテーマパークがディズニーの運営によるものではないというニュースがレジャー業界を揺るがした。テーマエンターテインメント協会(TEA)の最新データによると、米フロリダ州オーランドにあるディズニーのマジック・キングダムは、2024年の年間入場者数が1783万6000人でテーマパークとして世界最多となり、1日平均では4万8732人の来園者を記録した。
しかし、この報道によって、同年にドバイの「グローバル・ビレッジ」がわずか202日間の営業で1000万人を動員し、1日平均4万9505人を記録してディズニーを首位の座から引きずり下ろしたことが明らかになった。実際、同パークは年間の55%の期間しか営業していないにもかかわらず、通年営業している香港ディズニーランド、ディズニー・アニマル・キングダム、パリのディズニー・アドベンチャー・ワールドの年間入場者数を上回るほどの人気を誇る。
ディズニーで最も著名なテーマパークデザイナーのひとりだった故エディ・ソットがデザインしたグローバル・ビレッジは、大きく2つのエリアに分かれている。ひとつは、29カ国のショップ、レストラン、職人の実演、ショーなどを集めた、非常に「インスタ映え」するパビリオン群で構成されている。
もうひとつのエリアには、大観覧車やジェットコースター、ドロップタワーから、5Dショー、シミュレーター、曲面スクリーンの映像に合わせて座席が動くフライングシアターまで、31のアトラクションが揃う。ウォークスルー型のアトラクションには、お化け屋敷や古代遺跡をテーマにしたものがある。中央にはスタントショーのエリアや、音と光のショー(ソン・エ・ルミエール)が催されるラグーンが広がる。
こちらの記事で解説したように、グローバル・ビレッジは1997年、わずか10カ国を表現した露店のポップアップマーケットとして誕生した。本格的なテーマパークへと変貌を遂げたのは、現在の394.9エーカーの敷地に移転し、常設のパビリオンやアトラクションを追加した2005年のことだ。ドバイの酷暑から来園者を守るため、営業期間は10月から5月までの夕方から深夜にかけてに限られている。
巧妙なことに、これによりグローバル・ビレッジには、来園者に迷惑をかけることなく施設を改修し、新たなアトラクションを追加するための丸5カ月間の休園期間が生まれる。毎年、最高の状態と新しい魅力を用意して開園し、来園者を惹きつけているのだ。水曜日にスタートした最新シーズンも例外ではない。
シリアとクウェートのパビリオンはファサード(外観)を刷新して復活し、昨シーズンはバングラデシュパビリオンの一部だったスリランカは、独立した自国のパビリオンを持つことになった。
新アトラクションの目玉は、急カーブとスリリングなループを特徴とする新しいジェットコースター「Tokyo Rush(トウキョウ・ラッシュ)」だ。これは、グローバル・ビレッジにある30以上のライドを含む約200のアトラクションのひとつだ。さらに年間4万5000回ものパフォーマンスが披露され、今シーズンはスタントショー『Fast Live 2: The Police Strikes Back』がデビューを果たす。ほかにも主要なステージショーが2つ加わる。異なる人生の道を歩む2人の兄弟を描いたミュージカル『Bollywood Idol』と、アクロバティックなアクションアドベンチャー『Bank Heist』だ。人気に応えて再登場するダンスショー『Slam』に加え、キッズ・シアターには「ケアベア」や「しゅつどう!パジャマスク」も登場する。
魔法のような魅力の秘訣
例年通り、最大の目玉となるのは3500のショップと250の飲食店だ。グローバル・ビレッジには各地の郷土料理を提供するレストランやフードカートが立ち並び、その多くが非常に珍しいためSNSで拡散され話題となっている。ロンドンのカムデン・マーケットから直輸入された「Baba G's」はラム肉のパティを重ねたインド風ストリートフードを提供し、イタリア風の「Roots」はくり抜いた柑橘類の皮に盛り付けたレモンソルベを販売している。これらを経営陣が選定するプロセスは、単に魔法の杖を振るような簡単なものではなかった。
グローバル・ビレッジは、ドバイ・ホールディング・エンターテインメント(DHE)が所有している。同社は、テーマパーク複合施設の「ドバイ・パークス&リゾーツ」、世界最高の観覧車、中東唯一の屋内熱帯雨林施設から、映画館チェーンのロキシー・シネマズ、コカ・コーラ・アリーナ、アラビアン・ラジオ・ネットワークまで、あらゆるエンターテインメント事業を統括するコングロマリットだ。
グローバル・ビレッジの最新シーズンの開幕を前に、DHEのきわめて優れた最高経営責任者(CEO)であるフェルナンド・エイロアは、筆者に対して次のように説明した。「グローバル・ビレッジの秘密は、まさにその本物志向(オーセンティシティ)にあります。私たちがグローバル・ビレッジで最も時間を費やしていることのひとつは、特定の国のパビリオンにいる場合、そのパビリオンにある製品も人もその国のものであることを確認することです。したがって、本物でない商品が国のパビリオンで販売されることはあり得ません。それは私たちが避けようとしていることです」
さらに彼はこう付け加える。「飲食において、有名ブランドや国際的なブランド、フランチャイズの参入は常に避けるようにしています。毎年、そうした大手ブランドからグローバル・ビレッジ出店の打診を何百件も受けますが、私たちはそれを望んでいません。まずは小規模な企業に自らのコンセプトをアピールする機会を提供したいからです。グローバル・ビレッジで創業し、今や市内や国全体に複数の店舗を構える企業や飲食店の例は数多くあります」。これは決して大げさな話ではない。
レストランの「Bosnian House」やパキスタンの「Bundoo Khan」は、グローバル・ビレッジからスタートし、ドバイの他の場所やアラブ首長国連邦(UAE)全域へと拡大していった。オランダのスイーツブランド「Mini Pancakes」は、さらに先へと進んだ。ヌテラ、マーズ、バウンティなどのソースで知られる同ブランドは、2014年にグローバル・ビレッジで「ベスト・リテール賞」を受賞。その後、2015年のミラノ万博や10カ国以上のフェスティバルで目玉のひとつとなった。
Mini Pancakesのトメク・オールダースCEOは、2018年に現地紙『ガルフ・ニュース』に対し、「グローバル・ビレッジは、当社にとってUAEおよび世界へと羽ばたく素晴らしい跳躍台となりました。2015年のミラノ万博で目玉のひとつとなれたのは、グローバル・ビレッジでベスト・リテール賞を受賞していなければ不可能なことでした」と語っている。
地元のこだわり
このような成功事例を受け、エイロアは地元ビジネスを優先する方針を強めた。「私たちは多くの中小企業と提携し、1シーズンにわたって商品を試す機会を提供しています。グローバル・ビレッジは企業が顧客を獲得するためのプラットフォームであり、ドバイ経済庁とも連携して深く関わっています。まさに小規模ビジネスのインキュベーターなのです。私たちの秘密は、グローバル・ビレッジにあるものが唯一無二であるという点にあります。したがって、恐縮ではありますが、国際的なブランドなどの他のブランドを多く受け入れるわけにはいきません。パーク内に入れたくないのは、そうすると体験が本物でなくなってしまうからです」
エイロアは2021年からDHEの指揮を執っており、老舗から新進気鋭の企業まで地元のサプライヤーに精通している。体験型エンターテインメント業界の第一線で20年以上の経験を持ち、グローバルなトレンドにも造詣が深いため、グローバル・ビレッジのアトラクションのポートフォリオを拡大するうえで欠かせない存在となっている。
Tokyo Rushについて、彼は「このコースターは、グローバル・ビレッジの中では大型の部類に入ります。そのため、少し変化をつけてはいますが、常にファミリー層を対象としています。過度な絶叫系アトラクションを導入するつもりはありません。それがグローバル・ビレッジの市場だとは思わないからです」と語る。
ポジショニングと同様に重要なのが、その多様性だ。「あらゆる人のための何かが存在する、というのがこのコンセプトです。食事が好きなら、250から300の飲食店があります。買い物が好きなら、何千もの巨大なショップがあります。アトラクションが好きなら、何百ものアトラクションがあります。音楽が好きなら、さまざまなパビリオンから西洋、インド、アラブなど、あらゆるジャンルの4万5000回ものショーが開催されます」
「たくさんお金を使いたいならそうできますし、使いたくない人にとっても手頃な価格です。チケット代は非常に手頃です。ですから、これら個々の要素の組み合わせこそが秘密なのだと思います」
まったく新しい世界
グローバル・ビレッジとディズニーのパークとの大きな違いは価格だ。入園料は1日約$7(約1万未満円)(25ディルハム)だが、ライドには別途チケットが必要で、1つあたり$4(約1万未満円)(15ディルハム)から$20(約1万未満円)(75ディルハム)かかる。対照的に、ディズニーのマジック・キングダムの事前予約チケットは2027年分で1日あたり最高$229(約3万円)に達しており、全アトラクションに乗れるとはいえ、待ち時間を短縮する優先パスにはさらに1つあたり$5(約1万未満円)〜$10(約1万未満円)かかる。これは手の届きにくい価格となり得る。
ドバイ在住のシーマ・サブワニがInstagramでコメントしたように、グローバル・ビレッジの「チケット価格はほかのテーマパークより合理的で、子どものいる家族はテーマパークの高額な入場料を払えない」のだ。
TEAの入場者数ランキングに名を連ねる他のいくつかのテーマパークも、通常のチケットではライドに乗れない仕組みをとっている。スウェーデンのリセベリや、ウォルト・ディズニーがディズニーランドの構想を得たことで知られるデンマークのチボリ公園などがその例だ。同様に、英国のアルトン・タワーズやスペインのポートアベンチュラのように季節限定で営業するパークもある。グローバル・ビレッジはテーマ性がより明確で、ライドの数もTEAのランキングにある他のパークより多いにもかかわらず、奇妙なことに歴史的にそのリストに含まれてこなかった。
「テーマパークやウォーターパークがレポートに含まれるには、最低限、ゲートで仕切られている(入場チケットが必要である)こと」とするTEAの基準を満たしているにもかかわらずだ。実際、TEAの「グローバル・エクスペリエンス・インデックス」(入場者数リストの正式名称)の編集長であるマーティン・パリッキも、グローバル・ビレッジをテーマパークとして表現している。
こうした事態を受けて、地元の業界専門企業チーム・レジャー・コンサルティング(Team Leisure Consulting)のマネージングディレクターであるフィル・テイラーは、TEAのデータを集計するエンターテインメント+カルチャー・アドバイザーズ(Entertainment + Culture Advisors)に対し、グローバル・ビレッジが除外されている件に注意を促した。「グローバル・ビレッジは間違いなく世界で最も優れた実績を上げているテーマパークのひとつとなっており、TEAのリストに含まれる資格が十分にある」と彼は語った。エンターテインメント+カルチャー・アドバイザーズのプリンシパル、エドワード・ショーは「我々は掲載に値するカテゴリーや施設を絶えず見直しており、今後の数年間においてもグローバル・ビレッジについて検討を続けていく」と説明した。
グローバル・ビレッジは時間の試練に耐えてきただけでなく、その歴史の長さこそが人気の核心にある。何十年も前に訪れた子どもたちが、今では自分の子どもを連れて戻り、子どもの頃の思い出を追体験している。「これはドバイの歴史の一部です。30年以上もここに存在しています」とエイロアは言う。「グローバル・ビレッジは街とともに成長してきました。30年前のドバイは今日とは比較にならないものでしたし、グローバル・ビレッジも同様です。非常に小さな場所から始まり、今日では1日あたりの入場者数で世界最大級のテーマパークとなりました。この街の文化的インフラの一部であり、家族の一部であり、ここを訪れることがひとつの伝統となっているのです」



