デジタル技術の革新や業務効率化が急速に進む昨今、働く現場で求められるスキルセットにも変化の兆しが見られる。しかし、テクノロジーがどれほど進化しようとも、人と人が組織として協働する以上、根底にある対人能力の重要性は変わらない。企業の採用動向や求める人材像について、帝国データバンクが全国1333社を対象にアンケート調査を実施している。
それによると、主な採用形態として「中途採用がメイン」と回答した企業が81.1%に上り、「新卒採用がメイン」の18.9%を大きく上回る結果となった。企業規模別では、大企業において新卒採用メインが55.2%と過半数を占めた一方、中小企業では中途採用メインが8割超、小規模企業では9割超に達した。規模が小さい企業ほど、即戦力の確保や教育コストの観点から中途人材を軸に据える実態が浮き彫りとなっている。

そうした中、企業にどのような人材像を求めているかを問うたところ、「コミュニケーション能力が高い」が30.6%でトップとなった。次いで「真面目、または誠実な人柄である」が29.2%、「意欲的である」が28.4%と続く。一方で「専門的なスキルを持っている」や「AIやデジタル技術を活用できる」といった項目は低位にとどまる結果となった。
採用形態別に求める要素を比較すると、明確な差異も現れている。新卒採用メインの企業では「素直である」が31.8%と目立ち、周囲のアドバイスを吸収して伸びていく成長可能性を重視する傾向がうかがえる。これに対して中途採用メインの企業では、「責任感がある」が28.4%、「行動力がある」が20.2%と高く、即戦力として自律的に業務を遂行する姿勢が強く求められている。

実際の採用現場からも、資質を重視する率直な声が寄せられている。「素直な性格が成長する第一の資質と考えている」(長崎県・新卒採用メイン企業) 「長く働いて仕事を覚えてくれるように、積極性とコミュニケーションスキルを特に重視している。資格や知識、経験は入社後に身につけることが可能だが、資質を変えることはなかなか難しい」(神奈川県・中途採用メイン企業) 「中小企業の場合、個人によるスキルでは限界があり、チームによる総合力が不可欠。そのためにも真面目で誠実な人材でないと長く続かないと考える」(広島県・その他サービス)
多くの企業が指摘するように、実務知識や専門技術は業務経験を通じて補うことが可能だ。しかし、チームの雰囲気を良好に保ち、他者と協調しながら物事を前に進める姿勢や対話力といった人間的な資質は、一朝一夕に身につくものではない。
人材の獲得競争が激しさを増す中で、企業側は目先のスペックや保有スキルだけにとらわれず、自社の風土に馴染みチームワークを発揮できる素質をいかに見抜くかが問われる。同時に、働くビジネスパーソンにとっても、専門知識のアップデートにとどまらず、他者と円滑に対話し信頼関係を築く基礎的なコミュニケーション能力を磨き続ける姿勢こそが、長く組織で価値を発揮するための確かな基盤となるだろう。
出典:帝国データバンク「企業の採用形態と求める人材像アンケート」より



