Close RECOMMEND

PICK UP

Anadolu Agency / Getty Images

ウクライナの首都キエフの独立広場(マイダン)で起きた抗議デモを受け、米国務省の高官らは即座に、ロシアの侵攻によってウクライナは「かつてないほど結束を固めた」との見方を示した。ホワイトハウスも駐ロ米大使も、共和党国際研究所も同様の見解を発表した。政治問題について論じるブログ「トーキング・ポインツ・メモ」も、シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」もそうだ。米国では気難しい現実主義者の数人だけが、ウクライナ国内の深い亀裂について指摘し続け、従来からの同国の情勢に大きな変化はないだろうと主張した。

米議員らは党派やイデオロギーの違いを超えて、次のように確信した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ国民に決定的な敗北を喫した、ウクライナの政治家たちは新たな親欧米勢力の下に一致団結した、ウクライナの慢性的な政治的内紛の時代は過ぎ去った。そして同国では、できる限り早く欧州の一員と認められなくてはならないとの考えが、幅広く共有されるようになった──。

だが、2015年が終わりを迎えようとする今、ウクライナ政治に対するこの幾分楽観的な読みが誤りだったことを証明するような事態が生じている。同国議会では、大統領支持者と首相支持者らの殴り合い(それも、相当にひどいケンカ)が起きた。「連立」という名前の下に集まりながら、相手をひどく嫌い、文字通り、ののしり合った。もちろん、どのような連立にも内部には、ある程度の緊張がある。だが、アルセニー・ヤツェニュク首相(支持率の急落を理由に地方選挙の延期を要求)とペトロ・ポロシェンコ大統領(ごく僅差だが、首相よりは高い支持率を維持)の連立は今まさに、崩壊しようとしている。

さらに、この一件はウクライナ政府の上層部内の混乱を示す唯一の例だ、というわけではない。アルセン・アバコフ内相とグルジアの前大統領で現ウクライナ・オデッサ州知事のミヘイル・サーカシビリも先ごろ、この争いに加わった。幸い二度目の殴り合いは起きず、アバコフ内相がサーカシビリ知事の顔面に向けて、水がいっぱいに入ったグラスを投げつけた「だけ」だった。内相と知事は少なくとも名目上、いずれもポロシェンコ大統領と同盟関係にある。この点で、二人の対立は今日的な意味を帯びているといえる。

重要なのは、ばかげた光景を笑う(一歩引いてよく考えてみれば、国会議員たちが議場で殴り合っていることに、面白いことなど何一つないといえる) ことではない。ウクライナの政権幹部が「何か」の下に「一致団結している」との考えは誤りだと認識することだ。誰が政権に加わるべきかについても合意できず、ましてや政府がどのような政策を施行すべきかに関する合意などありようもない。そして、これらのケンカや緊張状態は全て、現在のウクライナ「政府内」で起きていることだ。この点を忘れないでほしい。明確に親ロシアの立場を取り、かなりの規模を持ち、勢力を拡大している「野党」が関わっているわけではないのだ。

ウクライナの指導者たちは、内輪もめはやめると宣言した。だが、そんな宣言は何も新しいものではない。彼らは何のためらいもなく、約束を破るだろう。今回は違うはずだと考える理由などない。

いくつもの楽観的な見通しを示す言葉の一方で、ウクライナの政治システムは従来と変わらない、見覚えのある、がっかりするような口論と内紛の繰り返しに陥っている。ウクライナの現政権が、この国に必要な抜本的改革を実行できると考える理由もまた、ほとんどない。

編集 = 木内涼子

記事が気に入ったら
いいね!しよう

LIKE @Forbesjapan

Forbesjapanを
フォローしよう

FOLLOW @Forbesjapan

あなたにおすすめ

合わせて読みたい