ロサンゼルス・ドジャースといえば、大谷翔平や山本由伸ら日本人スターで知られているが、ロースター全体を見れば、もう1人の日本人選手、ベネズエラ出身選手、韓国出身選手も名を連ねている。要するに、世界各地から集まった選手たちなしに、ドジャースがワールド・チャンピオンになることはなかっただろう。P-1Aビザに感謝しなければならない。
比喩的な野球界の頂点に立つドジャースのことが頭に浮かんだのは、JD・バンス副大統領の最近の演説を耳にしたからだ。彼は、トランプ政権がマイクロソフトをはじめとする複数のテクノロジー企業について、H-1B労働者がグリーンカードを申請できる既存プログラムから「停止」する方針を示した。マイクロソフトによる近年の雇用について、彼はこう語った。「マイクロソフトは解雇した労働者1人に対し、1.5人の外国人年季奉公人を代わりに雇い入れた」
筆者の見解では、バンスの発言は時の経過に耐えられないだろう。その理由は単に、昨年マイクロソフトが新規従業員のために申請したH-1Bが、同社の全従業員数のわずか1%にすぎないからというだけではない。かつてロナルド・レーガンが述べたように、事実とは頑固なものである。そして事実は、マイクロソフトの、ひいてはテック業界全般の雇用に対するバンスの描写を否定している。
バンスの描写は明らかに、テクノロジー企業が高コストで高スキルの米国人を低コストで比較的スキルの低いテクノロジー労働者に置き換えようと積極的に動いている、という印象を与えようとするものだった。しかしバンスがつくり上げた「真実」ほど実態からかけ離れたものはない。
その証拠に、カーネギー・チャイナによる最近のレポートを見てほしい。そこには「中国は世界におけるエリートAI人材の最大の輩出源として、圧倒的な地位を築いた」と記されている。それ自体は悪いことではない。レポートがさらに指摘しているように、人材の流れはおおむね中国から米国への「一方通行」であり、しかもその規模は相当なものだ。
レポートによれば、「頭脳流入と頭脳流出を比較すると、米国は2025年に2145人の研究者を純増させた一方、中国は1729人の純減となった」。言い換えれば、米国の人工知能(AI)分野におけるリードは確かに実在するが、それは何より世界各地から米国への人材流入によってもたらされた結果なのだ。彼らは年季奉公人などではない。
とはいえ、中国のAIが米国のリーダー企業に徐々に迫りつつあることは、ますます周知の事実となっている。中国と米国のAI格差の縮小で注目すべきは、それがテクノロジー人材の流れにも反映され始めている点である。テック業界で最も優秀な頭脳の出所が変化しつつある大きな要因は、トランプ政権による外国人AI労働者への規制が次第に厳しくなっていることだ。H-1Bに関するバンスの発言、マイクロソフトなどの企業をH-1Bプログラムから「停止」した措置、さらにはOpenAIやメタといった大手テクノロジー企業との過去の「和解」(H-1B労働者への制限と考えてよい)がそれを示している。
バンスが見過ごしているらしい現実は、AIのトップ人材にとっての機会がますます米国外に広がっているということだ。再びカーネギー・チャイナのレポートを参照されたい。バンスにも読んでほしいところだ。2022年には世界のトップ学部AI人材の46%が中国出身だったのに対し、2025年の中国シェアは57%に上昇している。米国のシェアは? 13%にまで低下している。話はさらに悪くなる。
世界有数のAI人材供給源としての中国の成長に伴い、中国人AI労働者のうち中国国内で働く比率は、2022年の57%から2025年には69%に上昇している。バンスは聞いているだろうか。もし聞いていなくても、彼の上司が聞いていることを願う。
トランプ大統領は、超知能(Super Intelligence)を制した者が勝者になると語った。それはよい。だが米国内での勝利は、グローバル人材なくしてあり得ない。ドジャースだけでなく、世界をリードするテクノロジー人材の多くがどこに集まっているかを見てほしい。



