大学時代のアメリカンフットボールのシーズン第3試合、第2クォーター序盤のことだ。ミドルラインバッカーだった私は、激しいタックルの後、肩を押さえながらふらふらと立ち上がった。実際に「バキッ」と音がしたのを覚えている。
痛かったが、私はそのまま試合を続行した。出場時間を減らしたくなかったので、黙って肩を冷やし、その後の数週間もフィールドに戻り続けた。それは大きな間違いだった。
痛みは悪化した。しかも、はるかにひどくなった。対処するまでに時間をかけすぎたため、最終的には手術以外の選択肢がなくなった。私のシーズンはそこで終わった。最初に痛めた時点で治療を受けていれば、残りのシーズンすべてではなく、数試合を欠場するだけで済んだかもしれない。
そこには、企業のリーダーにとっての教訓がある。
私がこの肩の負傷を思い出したのは、ある2人の経営幹部との話し合いの場だった。彼らは組織の大きな変化や離職を経験しており、適切な人材の採用難に直面していた。どれも破滅的な状況には見えなかったが、話を進めるにつれ、組織文化に関する警告サインがいくつも浮かび上がってきた。
そこで私は、なぜ対策を講じないのかと尋ねた。彼らの答えは意外なものだった。「痛みがまだ十分ではないのです」
彼らは状況が良好でないことを分かっていた。従業員満足度は低下し、離職も目立っていた。しかし、行動を起こさざるを得ないほど悪くはなかった。少なくとも、「まだ」その段階ではなかったのだ。
私はこれを「ペイン・ギャップ(痛みのギャップ)」と呼んでいる。職場の問題に本来対処すべき時点と、リーダーがようやく「十分に痛い」と判断して行動を起こす時点との間にある距離である。
興味深いことに、デロイトの『2026 Global Human Capital Trends』では、関連する問題として「カルチュラル・デット(文化の負債)」という概念が挙げられている。これは組織が自らの文化を軽視したときに蓄積する負の結果を指す。デロイトは、より緊急性の高い課題に注意が向けられる中で脇に追いやられがちな、コミュニケーション不全や心理的安全性の欠如といった未解決の問題を指摘している。
ペイン・ギャップとのつながりを見いだすのは難しくない。文化上の問題を、今は特に深刻に見えないからと無視すれば、いずれそれを修正するためのコストが膨らむのを許しているだけかもしれない。
では、管理可能な文化の問題を、痛みを伴う問題に変えないためにはどうすればよいのか。経営幹部に勧めたい5つのことを紹介する。
1. 何が変わっているのかを従業員に尋ねる
企業は顧客を失う前に問題を発見するため、膨大な時間を費やして顧客の声に耳を傾けている。同じ考え方を従業員にも適用すべきである。
MITスローン経営大学院の研究者らは、「ボイス・ギャップ(声のギャップ)」と呼ぶものを調査した。これは、従業員が職場でどれだけ発言権を持っているかと、どれだけ持つべきだと考えているかの差である。1,307人の労働者を対象にした同研究では、このギャップが大きいほど、仕事の満足度とウェルビーイングが低く、燃え尽きの度合いが高く、別の仕事を探すことへの関心も高いことがわかった。
新たに手の込んだ調査をする必要はない。この6カ月で何が変わったのかを人々に尋ねればよい。何が難しくなったのか。何に不満を感じているのか。何を変えたいのか。異なる人々から同じことを聞くようになったら、とりわけ注意深く耳を傾けるべきである。
2. 小さな警告サインに注意を払う
組織文化の問題が、危機として突然姿を現すことはめったにない。優秀な従業員が思いがけず退職する。採用に時間がかかるようになる。かつて会議で発言していた人の口数が減る。熱意あるマネジャーが不満を募らせる。欠勤がじわじわ増える。
これらはどれも、単独なら説明をつけて片づけることができる。だが、いくつも重なれば注意を払うべきである。
離職、欠勤、採用、従業員からのフィードバック、生産性をまとめて見て、その変化の兆候に着目する。複数の指標が悪い方向へ向かっているなら、なぜそうなっているのかを尋ねる前に、何らかの恣意的な基準値に達するまで待つべきではない。
3. 本音の対話をする
調査には役割がある。だが、誰かと向き合って座り、「本当のところ、どうですか」と尋ねることの代わりにはならない。
直属の部下と、彼らの仕事やあなたとの関係について話す。何が妨げになっているのか、仕事を不必要に難しくしているものはないかを尋ねる。私が好んで使う質問の一つは、「私には何が見えていないのか」である。
そして、答える時間を与える。
誰も不満を言っていないからといって、すべてが順調だと思い込んではならない。人は必ずしも、意欲を失いつつあることを表明するわけではない。時には、出すアイデアが減り、期待されたことだけをこなし、静かに退職を考え始める。
4. 聞いたことを行動につなげる
多くの組織がつまずくのはここである。
Perceptyxの『State of Employee Listening』レポートによると、組織の95%が従業員の声を聞く取り組みを維持または強化しているものの、そのプログラムが望ましい事業成果を生むと確信している人事リーダーはわずか27%にすぎなかった。ただし、従業員の声を聞き、行動に移す成熟したプログラムを持つ組織は、そうしたプログラムを持たない組織に比べ、財務目標を上回る可能性が6倍も高かった。
従業員が提起するすべての問題を解決することはできない。だが、重要な2つか3つを選び、それに対して行動することはできる。何を聞いたのか、何を変えるのか、何を変えられないのかを人々に伝える。意見を繰り返し求めながら、それを無視しているように見えることは、人々が意見を出すのをやめるかなり確実な方法である。
5. 文化にも業務と同じ注意を向ける
経営幹部は、売上、コスト、業務パフォーマンスを日常的に精査している。文化も同じ議論の場に置かれるべきである。これは、私の著書『Culture Spark』と『Culture Ignited』でも強調してきたことだ。
組織内のさまざまな階層の人々を定期的に集め、リーダーシップが見落としているものは何かを尋ねる。最も満足している従業員だけを招いてはならない。懐疑的な人々の声も聞く必要がある。そして、文化を年に1度のリトリートで話し合うものではなく、定例の経営幹部の議題に組み込むべきである。
それは今、特に重要である。デロイトは最近、「労働者は目まぐるしいペースで方向転換を求められている」としたうえで、組織の65%が、AIによって自社の文化を大きく変える必要があると考えていると報告した。
最後に
私の右肩には、今もあのフットボールでの負傷によるこぶが残っている。それは、比較的管理可能だった問題に、手術が必要になる前に対処する機会が十分にあったことを思い出させる。
企業にも警告は現れる。離職が少し増える。熱意が少し薄れる。以前にはなかった採用上の問題が生じる。どれも破滅的には見えない。だからこそ、その不快感を我慢して事業を続けたくなる。だが、まさにそのときこそ行動すべきなのである。



