近年、多くの企業が従来の階層型組織から、よりフラットな管理構造へと移行している。経営層と従業員の間の階層を取り払うことで、企業はコストを削減し、意思決定を迅速化し、従業員により直接的な責任を持たせることができる場合がある。
しかし、経営層が組織図の変更だけに目を奪われると、管理職のポジションを排除することで、重要な責任から明確な担当者が失われる事態にも陥りかねない。以下では、フォーブス・ビジネス・カウンシルのメンバーが、管理職の階層が消滅しても組織が意図的に維持、あるいは再割り当てしなければならない責任について解説する。
1. 企業カルチャーの維持
管理職の階層がフラット化するなかで、従業員体験を維持し、共通の価値観を強化し、人々の協働における基準を確立する責任者を確実に置く必要がある。カルチャーを運任せにしたり、戦略の副産物として扱ったりしてはならない。それには目に見えるリーダーシップ、一貫したコミュニケーション、そしてあらゆるレベルでの責任感が不可欠だ。— ジェフリー・ハーゾグ(Avenue Z)
2. リーダーと従業員のコミュニケーション
管理職のポジションを排除するのであれば(本来は排除すべきではないが)、リーダーと従業員の間のコミュニケーションが損なわれないようにしなければならない。これは、従業員が円滑に仕事をするために必要な明確さを得られるよう、リーダーがより多くの役割を果たす必要があることを意味する。— ジェニ・フィールド(Redefining Communications)
3. 戦略の現場への落とし込み
中間管理職は、戦略を日々の優先事項に翻訳する。その層を取り除くことは、仕事を担う人々に戦略が届かなくなることを意味してはならない。「私たちは何を、なぜつくっているのか」と「今週、何に集中すべきか」を、誰かが引き続き結びつけなければならない。これを大規模に行うことはさらに難しい。人々は誤った問題を効率的に、しかも長く解決し続けてしまう可能性があるからだ。構造はフラットにしても、文脈の流れは保つべきである。— サヒル・バルガバ(ScheduleX)
4. 役割の明確化
管理階層を取り除けば、人々により大きな行動の自由を与えられるかもしれない。だが、それでも自分が何を担い、成功とはどのような状態かを知る必要がある。リーダーは明確な成果を設定し、人々が意思決定できるよう権限を与え、障壁が生じた際には「最高障害除去責任者」として動くべきだ。フラットであることは、説明責任が弱まることではなく、より大きな権限を与えられることを意味すべきである。— イェスパー・ウィズ=フォグストルプ(Moneypenny)
5. 意思決定の責任
管理階層の排除は企業のスピード感を高めることができるが、それは誰かが最終決定の責任を負い続ける場合に限られる。さもなければ、階層構造が混乱に置き換わるだけだ。すべての重要な決断には、決定権を持ち、その結果に責任を負う明確な責任者が必要となる。管理職の削減はボトルネックの減少を意味すべきであり、決断を下す責任者の減少を意味してはならない。— ラジャ・ワリア(GNW Consulting)
6. 戦略的優先順位付け
企業が管理階層を削除する際にも、どの機会が成長計画を促進し、何が妨げになるかを判断する人物が必要だ。組織図を変更する前に、そうしたトレードオフの責任者を定義しておくことを勧める。これを怠ると、チームは個々のプロジェクトでより迅速に動くものの、ビジネスの焦点を見失い、成長が停滞することになる。— パーナ・サーカー=バス(Brand and Buzz Consulting, LLC.)
7. 人事における厳しい対話
誰かが厳しい対話の責任を負わなければならない。フラットな構造は業務を非常に良く分散させるが、給与、パフォーマンス、解雇に関する決定はSlackのチャンネル上に自動的に分配されるわけではないため、責任の分散には向かない。管理職を排除した場合、同僚に対して「期待に応えられていない」と伝え、それに対処する権限を行使するのは誰なのだろうか。流動的な組織に必要なのは、階層の削減であって、大人の削減ではない。— ベアテ・ファン・ロー=ボーン(BvLB Advisory)
8. 戦略的アライメント
組織がフラット化するにつれ、戦略的な整合性を維持しなければならない。リーダーシップと意思決定は常に一体であるべきだと考える。従業員がより迅速な意思決定を行えるよう権限を与えることはできるが、それらの決定は組織の方向性、価値観、目標と結びついていなければならない。管理階層の削減はスピードを向上させるべきであり、責任を断片化させるべきではない。— ハニ・アッシ(Advanced Technology Company)
9. 従業員の成長支援
管理階層を削減すると、人材を育成する人材も削減されてしまうことが多い。業務は再分配されるが、キャリアに関する対話は密かに消えていく。組織をフラット化させるのであれば、従業員の成長を誰が手掛けるのかを意識的に決定すべきだ。誰かがフィードバックを与え、可能性を見出し、人々を前進させなければならない。— スフィアン・チョウドリィ(Kinetik)
10. 規範となる存在(ロールモデル)
階層構造は、企業が効率的に成果を生み出すための実用的なデザインにとどまらない。適切に機能していれば、出世の階段は企業が望ましい能力や人物像を育み、それを組織全体に波及させる役割を果たす。管理職が消えるとき、組織はロールモデルやメンターが一緒に消えてしまわないようにしなければならない。企業は、望ましい特性を示す人々を報いる新しい方法を見つける必要がある。— コンスタンティン・ノル(Anthem Laboratories Inc.)
11. メンターシップ
管理階層を取り除くことはできても、人を育てる責任を取り除くことはできない。医療の世界では、各レベルがその後に続くレベルを教える仕組みとして、これが制度に組み込まれている。企業にも、人々の成長を支援する責任を誰が負うのかについて、同じ明確さが必要である。— ジェレミー・フリーズ(医学博士)(Humata Health)
12. 実務指導(徒弟制度)
中間管理職は経費の承認以上のことを行っている。彼らは仕事を1行ずつ確認し、率直なフィードバックを与え、誰がより大きな任に就く準備ができているかを判断する。その階層を取り除くと、その責務がどこにも着地しないことが多い。若手ごとにシニアスポンサーを指名し、報酬にも反映させることで、明示的に割り振る必要がある。さもなければ、後継者の層は知らぬ間に薄くなり、誰かが辞めたときに初めて気づくことになる。— ダウレン・ケリムクロフ(Atameken National Chamber of Entrepreneurs)
13. 依頼のフィルタリング
削ってしまったことに気づかなかった仕事は、依頼を吸収することだった。かつて管理職は、チームに届くべきではない依頼をカットし、どの良いアイデアを保留にするかを判断していた。それがなくなると、すべての依頼が断る立場にない人へと届くようになった。スケジュールは埋まり、本当の仕事は後回しになった。— スネハル・ニムジェ(Outdoo AI)
14. 承認権限
管理職は、支出、アクセス権限、顧客への約束などの重要な行動に対して「Yes」または「No」を言う階層だ。フラット化してもそれらの決断は消えず、最も素早く行動する人によって、あるいは現在では誰も監視していないAIエージェントによって行われることになる。どの行動に決断が必要で、誰が(あるいは何が)その決断を行うのかを定義し、すべてを記録することで、承認を明確に保つべきだ。排除すべきは判断ではなく、管理職なのだ。— アマン・ラージ(Decawork)
15. 業績への説明責任
管理階層を取り除くことは、成果を測定する規律を取り除くことを意味してはならない。重要な成果にはすべて、責任者、KPI、定期的なレビューのリズムがなお必要である。よりフラットな企業は、説明責任が管理職に依存するのではなく、業務運営の仕組みに組み込まれているとき、より価値を高める。— ジョー・カーター(Twin Flame Group TX)
16. 品質の監督
仕事の品質が低下していることに気づき、直接そう伝える責任者が依然として必要だ。組織図をフラット化すると、誰も気まずい会話をする権限を持たないため、そのフィードバックループが真っ先に消滅する。管理職という肩書がなくても、パフォーマンスに関する対話の明確な責任を特定の人物に割り振るべきだ。— ヨハン・ハジ(The BnB Group)
17. 従業員の不調察知
誰かが静かに苦しんでいることに気づく人物が必要だ。これはプロセスではなく、距離感の問題である。組織がフラット化しすぎると、それを察知できるほど近くに誰も座らなくなる。私は500人を管理し、10年間管理職をトレーニングしてきた。真っ先に消えるのは戦略ではなく、人事よりも先に不調を察知する人物なのだ。— ドロタ・セデック(Alterland SA)
18. 顧客エスカレーション管理
顧客のエスカレーションプロセスの責任者を残しておくことだ。階層化された組織では、管理職が怒りのメールを受け止め、誰が修正するかを決め、フォローを完了させる。その職務を再割り当てせずに階層を排除すると、顧客が待たされている間にエスカレーションがチーム間をたらい回しにされる。顧客の階層ごとに単一の責任者を指名し、技術部門や財務部門を巻き込む権限を与え、解決までの時間を測定すること。フラットであることは問題ないが、無責任状態であることは許されない。— ジェイ・シン(Testmu AI)
19. 顧客フィードバックの実行・フォロー
顧客からのフィードバックをビジネスの改善に結びつける責任を守ること。カスタマーサービスは単に苦情を処理するだけでなく、研究開発に活かされるべきだ。何が欠けているか、何が不満か、何があればサービスの価値が高まるかを顧客に尋ね続けることだ。顧客は教えてくれる。管理階層を削除しても、それらの回答に基づいて行動する責任を削除してはならない。— ショーン・L・ダベンポート(Genwealth 360 Inc.)
20. 部署間の調整(クロスファンクショナルな調整)
部門をまたぐ業務の担当者を指名しておくこと。例えば観光業界において、顧客が1つの予約問題を解決するために営業、財務、オペレーションの調整を行う必要があってはならない。部門間調整の責任者は、チームを結集させ、次のアクションを確認し、問題が解決するまで責任を持ち続ける権限を必要とする。— アグン・アフィフ(Komodo Luxury)



