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経営・戦略

2026.10.23 15:29

なぜ新市場参入では「取引」より「関係構築」が先なのか

stock.adobe.com

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数年前、私は協業を築きたいという思いを胸に、ある中国の大企業の本社を訪れた。

信頼する友人からの紹介があったので、話はもう大方進んでいるつもりでいた。先方のチームとは気軽に雑談を交わし、ビジネスの話題にも触れたが、誰も特別にその機会について掘り下げたい様子はなかった。

そして、私たちは夕食に行った。

食事をし、笑い、互いの話をした。私はつたない中国語も交えながら、旅や人生について語り合ううちに、皆が心を開き始めた。

ビジネスの話はほとんどしなかった。それでも、その晩が終わる頃には、すべてが違って感じられた。両チームは打ち解け、協業は前進した。

その後、こうした場面を幾度となく経験した。私はその会議に「ビジネスの話をしなければ」と思って臨んだが、実際に必要だったのは互いを知り合うことだった。

これは、新市場に参入する際に大切だと学んだ数多くの教訓の一つだ。本稿ではアジアを中心に述べるが、その根底にある原則は他地域の市場にも当てはまると考えている。

売り込む前に現地に足を運ぶ

ビジネスにおいて関係性はどこでも重要だと思っているが、アジアで長年仕事をしてきた経験から、多くのビジネス文脈において人間関係の構築はとりわけ不可欠だと感じている。もちろん、人も状況もそれぞれ異なり、関係構築が中心的な焦点にならないケースもある。

「アジアにおける商機を考えれば、優れた製品や印象的な数字、国際的ブランドがあれば自ずと注目される」という見方に出会うことがある。しかし、私の経験ではそうではなかった。国際的な仕事をする中で、私は現地市場のリーダーたちが慎重であることに気付いた。私の経験では、彼らは機会を分析し、相手が誰であるかを理解したがる傾向がある。国際的な知名度は助けにはなるが、それだけでは十分でない場合もある。

自ら身銭を切る必要がある。私が中国で強固な関係を築けた理由の一つは、時間をかけてきたことだ。現地に身を置き、市場に参加し、そこに投資する意思があることを示してきた。他の場所と同様、自分が市場に投資する前に、市場が自分に投資してくれると期待することはできない。

求める前に、まず与えよ

世界のどこであれ新市場に参入する際、リーダーは学ぶ姿勢をもって臨むべきだ。イベントに参加し、コミュニティに加わり、関わり方を探し、そしてなによりも価値を提供する方法を模索することで、人々・文化・ビジネス環境を理解する努力をすべきだ。

中国企業との仕事では、米国、カナダ、オーストラリアなど他市場への進出を目指すリーダーに数多く出会ってきた。私は長年にわたり国際的なネットワークを築いてきたので、紹介をしたり、人脈を共有したり、役立つリソースにつないだりすることが多い。「あなたは私のために何ができるか」から始めることはない。

中国、他のアジアの国、あるいは世界の別の地域の国に進出しようとしているのであれ、「ここで自分の成長を助けてくれる人は誰か」と問うのではなく、「自分が力になれる場所で成長しようとしている人は、ここに誰がいるか」と問いかけるべきなのだ。

関係性がもたらす「複利効果」を理解する

私にとって最も価値あるビジネス関係のいくつかは、始まった時点ではビジネスの関係ではなかった。

例えば、ある親しい中国人の友人とは、お互いがまだ若かった頃に出会った。それぞれキャリアを築きながらつながりを保ち、私は何年にもわたって彼の会社が大きく成長するのを見守ってきた。やがて、お互いのビジネスにおいて協業することが理にかなうタイミングが訪れた。私は彼のチームを招いて自社が築いているものを体験してもらい、後に彼の会場の一つでイベントを企画した。そこから、協業は自然と発展していった。

だが、ビジネスが始まったからといって価値提供を止めたわけではない。今日に至るまで、直接の関係を超えて彼にとって有益な紹介やリソース、機会を探し続けている。この関係においても、他の人間関係においても、そうした実践が波及効果を生み出してきた。

一つの信頼関係が新たな紹介を生み、それがさらに多くの関係へとつながっていく。信頼は複利で積み上がっていくのだ。

紹介を優先する:信頼を加速させる力

私の経験では、信頼ある紹介は関係構築のプロセスを劇的に短縮しうる。

本稿の冒頭で紹介したエピソードも、ある紹介から始まったものだった。相手が信頼する人物からの紹介があったからこそ、最初から信用を持ってその企業に入り込むことができた。

しかし、紹介されたからといって関係を獲得したことにはならない。実質的には、他者の信用の一部を借りているに過ぎない。それでもなお、耳を傾け、価値を提供し、自ら信頼を築いていく必要性が消えるわけではない。

一つの地域が単一の市場であるとは限らない

もう一つの教訓は、韓国でのビジネスから得たものだ。当初、私は中国で学んだことの一部がそのまま応用できると考えていた。最初のアプローチは十分に練られたものではなく、中国で通用したやり方が韓国で必ずしも通用しないことにすぐに気づかされた。

これは重要な教訓を再認識させてくれた。異なる市場間でそのまま移植できる万能のプレイブックは存在しないということだ。あらゆる市場や地域には、固有のビジネス環境や人間関係のダイナミクスが存在する。加えて、先に述べたように、人も状況もそれぞれ唯一無二である。一つの市場での経験が別の市場への参入に役立つことはあっても、再び「学ぶ立場」に戻る必要性までは消えない。

取引ではなく、協業を築け

もし今日、ある企業を新しい国の市場に進出させるための準備期間が6カ月与えられたとしたら、私の最初の指示はシンプルだ。「飛行機を予約せよ」。

そこで時間を過ごせ。イベントに出席し、人と出会い、コミュニケーションの取り方を学び、「学びに来た」という姿勢で市場に入れ。そして、見返りを期待する前に、まず貢献する方法を探せ。

私が共感する中国語の概念の一つに「合作(hézuò)」がある。これは「協業」を意味する。私にとってこの言葉は、深く大切にすることを学んだ理念、すなわち「双方に勝つ機会があるべきだ」ということを表している。

アジアでビジネスをしてきて学んだ教訓は、どこでビジネスをするにしても、私のアプローチそのものを変えることとなった。

どの新市場に参入しようとするにせよ、私の助言はこうだ。必要になる前に関係性に投資し、すべてのやり取りを取引に変えることなく、自分の時間、知識、人脈、リソースを惜しみなく提供することだ。

やがて真の相性が見えてきたとき、ビジネスの話はもっとも簡単な部分になりうる。

(forbes.com 原文)

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