来月、数百万人のアメリカ人が2026年米中間選挙の投票所に集まる。米国民が連邦議会における次期代表者を選出するなかで、有権者の最大の関心事は一言で言えば経済である。強い軍事力も有権者にとって引き続き優先事項だが、中東での戦争や、ウクライナ、台湾などへの対外関与をめぐる論争のなかで、米国の選出議員たちは中間選挙が最終判断を下す前から米国で孤立主義の潮流が高まっていると警告している。
トランプ政権による国防費の増額要求は反発に直面している。これまでに下院および上院は、2027会計年度向けの政権による過去最大となる1兆5000億ドル(約237兆円)の国防予算要求を承認していない。議会は現行の支出水準を延長するため9月1日につなぎ予算(短期的な資金延長)を成立させたが、これは12月11日までしか効力を持たない。
承認されれば、提案されている国防予算は「軍人への昇給」に加えて、「弾薬、航空機、戦車、艦艇」の購入に充てられる。また、「重要な弾薬について複数年契約を最長7年まで拡大」し、「サプライチェーン全体にわたる長期投資を促進」するとされる。しかし2月、ワシントン・ポスト紙は一部の政府高官が「大幅な軍事費増額を承認する決定に抵抗した」と報じた。一方、ピート・ヘグセス米国防長官は9月30日、米軍が「将官・提督を20%削減する」と述べ、「私はこれを説明責任と呼ぶ。長年遅れていたものだ」と語った。
海外駐留米軍の撤退をめぐる議論も行われており、実際に撤退も進んでいる。イラクおよびシリアの特使も務めるトム・バラック駐トルコ米大使は、2024年の米国・イラク間の合意を受けて、9月30日のイラクからの米軍撤退を歓迎した。他方、ドナルド・トランプ米大統領がイランとの紛争をめぐる欧州側の協力不足に苛立ちを示したと伝えられるなか、ヘグセスは欧州への米軍派遣の1件を取り消し、撤退を命じ、同地域での米軍のプレゼンスを縮小した。政権は、欧州諸国は「欧州防衛の主要な責任を引き受けなければならない」と主張した。
一方、連邦議会では、共和党のランド・ポール上院議員が軍事費の増額は「財政的に無責任」だと主張している。同様にポリティコは8月、「複数の有力共和党議員が、国防費要求の1兆5000億ドル(約237兆円)確保に向けたトランプ政権の二正面アプローチに懐疑的だ」と報じた。
政策アナリストも米国の国防費や海外でのプレゼンスを疑問視している。ディフェンス・プライオリティーズのシニアフェロー兼軍事分析ディレクターのジェニファー・カバナー博士は、9月10日に発表された報告書で、米国はアジアにおける「防衛コミットメントを絞り込むべきだ」と主張した。ディフェンス・プライオリティーズはチャールズ・コーク研究所から多額の資金提供を受けており、またナショナル・フィランソロピック・トラストを通じ数百万ドルの資金を得ている。同トラストは自ら、裏にいる寄付者の身元を必ずしも開示しないドナー・アドバイズド・ファンドだと説明している。
コーク系およびソロス系の組織から多額の資金を得ているクインシー・インスティテュート・フォー・レスポンシブル・ステイトクラフトの非常勤フェローであるスティーブン・コシアックは、4月に「トランプの1兆5000億ドル(約237兆円)国防予算要求: 常軌を逸し、負担不能で、不要である」と題する報告書を発表した。同じくクインシー・インスティテュートの非常勤フェローであるエルダー・マメドフは、米国がイランと合意に達した場合、米国は湾岸地域でのプレゼンスを大幅に縮小すべきだと主張している。
米国の国防費や海外でのプレゼンス縮小を求める議論の背景には、さまざまな動機がある。元ラトビア外交官のマメドフは、「カタールゲート」と呼ばれる金銭による影響力行使スキャンダルをめぐり、欧州議会の社会民主進歩同盟(S&D)グループの外交政策顧問としての職務を停止され、ベルギー当局に送致された。さらに、マメドフが公然と批判してきた亡命イラン反体制派組織のイラン国民抵抗評議会は、彼を「イランのロビイスト」と呼んでいる。
欧州議会での職務停止後、マメドフはクインシー・インスティテュートの非常勤フェローとなり、米国の海外における軍事的役割の大幅な縮小を引き続き主張している。例えば、彼は米国のイランとの戦争を「違法かつ理由なき侵略戦争」と呼んでいる。また、「米国は誠実に交渉しないため、関与しても意味がない」とも主張している。時として、孤立主義的な声は世界各地の米国の敵対勢力の声と区別がつかないことがあり、他方で国防予算増額の支持者は、こうした立場は米国と同盟国の利益を弱めると主張している。
シカゴ・グローバル評議会によれば、多くのアメリカ人にとって、米国の世界における役割縮小への支持は、国内問題に注力したいという願望を反映している。しかし、こうした議論で見落とされがちなのは、米国の積極的な国際関与が第2次世界大戦後に構築された国際秩序を支えているという点だ。それは米国経済にとっても不可欠である。
米政府監査院によれば、米国防総省(DoD)は「国内最大級の雇用主の1つ」であり、『FEDweek』は国防総省が約300万人の軍人および文民従業員を抱えていると報じている。この数字には世界各地の米軍人および連邦職員が含まれる。業界団体の航空宇宙産業協会(AIA)は、米国の航空宇宙・防衛産業は約210万人の雇用を支え、そのうち約半数が防衛関連であると付け加えている。
この巨大な世界規模の労働力を踏まえ、年間の米国防予算の一部は米軍人および連邦職員の給与に充てられている。米国防予算はまた、国防総省職員の福利厚生と医療保険もカバーする。
対外軍事販売も米国経済を押し上げてきた。米国務省によれば、2025会計年度の「政府間対外軍事販売と直接商業販売による輸出ライセンスを合わせた総販売額は3311億8000万ドル(約52兆3000億円)に達した」。
対外軍事販売(FMS)プログラムを通じて実施された1043億8000万ドル(約16兆5000億円)のうち、759億ドル(約12兆円)が2025年にパートナー国および国際機関によって資金提供された。加えて、米陸軍は5月に「同盟国への米国製兵器輸出を効率化するマーケットプレイスを立ち上げる計画」であると発表した。これは兵器販売プロセスを迅速化することで、米国と同盟国・パートナー国との防衛協力をさらに強化するものだ。
米国はまた、優先ウクライナ要件リスト(PURL)にも関与している。このプログラムの下、NATOの同盟国およびパートナー国は米国製兵器を購入し、それをウクライナに送付する。アトランティック・リゾルブ作戦を監督する監察総監によれば、同盟国は同プログラムを通じて63億ドル(約9950億円)を拠出または誓約している。
より広く見ると、米国のウクライナ支援は米国の国家安全保障と防衛の強化に寄与していると、戦略国際問題研究所(CSIS)が発表した報告書は指摘している。同シンクタンクによれば、2022年2月から2024年4月の間に、議会はウクライナ戦争関連の米国支援として1130億ドル(約17兆8000億円)を計上した。この1130億ドル(約17兆8000億円)のうち、「最大680億ドル(約10兆7000億円)が米国内に投資される見込み」である。CSISはさらに、米国がウクライナに装備を送るのに合わせて、議会は米国の製造業者や企業が在庫を補充できるよう資金を計上し、これが「37州の主要ベンダーおよび重要サプライヤー」に影響を与えたと報告している。言い換えれば、米国はウクライナに防衛支援を送ると同時に、資金を使って米国自身の在庫を最新技術と新型兵器で補充してきたのだ。
国防総省とより広い防衛産業が米国経済に貢献するもう1つの例として、TDエコノミクスの2026年9月の州別経済予測は、防衛産業が地域経済を下支えしていることを示している。連邦政府および防衛産業基盤に属する企業は、専門的で熟練した労働者を必要とし、これが高給の仕事につながっている。全米各地の防衛企業、製造工場、軍事基地も数千人のアメリカ人を雇用しており、米国は全米で新たな工場の開設を続けている。
最後に、米国の求人件数が低く雇用が弱い時期にあり、労働市場への不安が続くなかで、防衛産業基盤における労働力は拡大を続けている。ClearanceJobsによれば、米国中西部の企業に発注された複数の新規契約には、施設の近代化、雇用創出、防衛産業基盤の強化のための数億ドルが含まれている。例えば、2026年2月、Avio USAはバージニア州ピッツィルバニア郡で防衛・ミサイル・宇宙用途の新しい固体ロケットモーター製造施設に5億ドル(約789億円)以上を投資し、1000人以上の雇用創出が見込まれると発表した。また、2026年7月、ロッキード・マーティンは6000万ドル(約94億7000万円)以上の投資を発表し、ペンシルベニア州アーチボルドの事業規模を倍増させ、700人以上の新規雇用を創出するとともに、ペンシルベニア州ジェサップでPrSM、THAAD、PAC-3などのプログラムを支援する弾薬および部品の生産を拡大する。加えて、国防文民訓練部隊(DCTC)や予備役将校訓練部隊(ROTC)などのプログラムは、国防総省および米軍でのキャリアに向けて米国の男女を準備させている。
言い換えれば、国防予算増額の支持者は、それが米国の国家安全保障を強化し、防衛セクターを支え、雇用を創出することで米国の労働力を強化すると主張している。国防総省と防衛産業基盤は米国の労働力および経済において重要な役割を果たしている。国防予算を拒否または縮小すれば、米国の兵器や備蓄への支出は削減されるが、同時に米国の労働力と経済にも影響を及ぼすことになる。
選出議員が2026年中間選挙の選挙活動を仕上げるなか、米国の有権者は国防費をめぐる議論の行方を見守ることになる。中間選挙を終えて議会が戻ると、下院と上院は、国防費に関するつなぎ予算の12月11日の期限が迫っていることを念頭に、提案されている1兆5000億ドル(約237兆円)の国防予算を再評価する。国防予算の増額に関する決定は国家安全保障と防衛産業基盤の双方に影響するため、国防専門家は展開を注視することになるだろう。
免責事項: マーク・テムニツキーは、2018年6月から2025年3月まで、米国防総省の取得・維持担当国防次官室内の各部門に契約支援を提供した防衛請負業者であった。この立場で、彼は議会向け報告書の作成、立法監査の実施、防衛取得および防衛イノベーションに関する政府高官向けのブリーフィングおよびアクションメモの作成を行った。防衛請負業者としての契約支援業務は、弾薬の備蓄、防衛生産、防衛製造、兵器契約には関与していなかった。2025年3月をもって、彼はもはや防衛請負業者ではない。



