AIは、実物の製品の設計、シミュレーション、試験へ急速に進出している。製品の設計や検証は、産業技術の中でも特に高度な専門性を要する分野だ。米半導体大手エヌビディアと独産業技術企業シーメンスは、複雑なシミュレーションの高速化や設計業務の自動化に取り組む。米半導体設計ソフトウェア企業のケイデンス・デザイン・システムズとシノプシスも、AIシステムを開発している。対象は半導体から航空機まで幅広い。
製品の設計・製造を変えるAI、産業界の開発競争
2026年10月、シーメンスはAIを活用する工場向けの新機能を発表した。フランスのAI企業Mistral AI(ミストラルAI)もエヌビディアとの協業を拡大している。学習済みのパラメーター(重み)を公開するAIモデル、物理現象の予測技術、自律的に設計作業を進めるAIエージェントを組み合わせる計画だ。製品の設計と製造の仕組みを変えようとする競争が、産業界全体で進んでいる。
試作前に多くの設計案を比較、開発費の削減にも期待
製品開発への影響は大きい。従来の設計シミュレーションには数時間から数日かかる場合があり、メーカーは高額な試作品の製作や量産に進む前に、十分な数の設計案を比較するのが難しかった。物理現象を予測するAIなら計算にかかる時間を短縮し、技術者が多くの設計案を試して問題を早期に見つけ、開発費を抑えられる可能性がある。
航空宇宙、自動車、半導体など、複雑な製造工程を持つ業界にとって、期待される効果は設計作業の高速化だけではない。AIは、製品の構想を立ててから最終的な設計に仕上げるまでの開発工程そのものを変えるかもしれない。
AIの誤判断は損失や事故を招くか、設計技術の管理も焦点に
ただし、AIの役割がプログラムの作成やコンテンツ生成から、現実の機械や設備にかかわる判断へ広がると、誤りが引き起こす影響は格段に深刻になる。AIエージェントは、高額な損失や危険な事故を招くことなく、複雑な設計業務を確実にこなせるのか。学習済みの重みを公開するAIモデルや、欧州が進めるAIの自主管理は、既存の産業ソフトウェア企業に対抗できるのか。製品の設計・製造に欠かせないAIモデル、シミュレーション技術、設計工程を誰が管理するのか。



