エージェント型AIについて企業と話をしていると、議論はたいていプロセスから始まることに気づく。
企業はAIエージェントに注文を処理させたり、顧客の要望に対応させたり、想定外の事態が起きたときにどうすべきかを判断させたいと考えている。紙面上では、プロセスは一見シンプルに見える。ワークフローがあり、それを支えるシステムがあり、各ステップには責任者がいる。
しかし、話がより具体的になると、興味深いことが起きる。
誰かがこう言うのだ。「通常はこうします。ただし……」
興味深いのは、この「ただし」の後に続く部分である。
紙に書かれたプロセスは、プロセスの一部にすぎない
多くの成熟した企業は、プロセスを文書化している。長年かけて磨き上げられたワークフロー、方針、承認体系、システムを備えている。
しかし、文書化によって、プロセスを機能させるすべての要素が捉えられるわけではない。
人は情報を解釈する。異例の状況を察知する。例外が妥当かどうか、エスカレーションすべきかどうかを判断できる。経験豊富な従業員は、システム上は正しく見えても、特定の顧客や取引先の状況を踏まえると筋が通らないことに気づくかもしれない。
やがて、こうした判断は組織運営の一部となっていく。その一部は文書化されるが、多くは人の仕事の進め方そのものに溶け込んでいく。
結果として、企業が「持っていると考えているプロセス」と「実際に動いているプロセス」との間にギャップが生じうる。
長年、このギャップは比較的見えにくいままだった。人が自然にそれを埋めてきたからだ。エージェント型AIによって、それが見えやすくなる。
AIエージェントにはワークフロー以上のものが必要だ
従来の自動化は、ルールが明確なときに特にうまく機能した。これが起きたらそれをする。情報をあるシステムから別のシステムへ移す。しきい値に達したら承認を発動する、といった具合だ。
生成AIは、質問への回答からコンテンツの作成・要約まで、AIが情報に対してできることを拡張した。しかし、こうした用途の多くでは、次に何をするかを決めるのは依然として人である。
エージェント型AIには、さらに先が求められている。企業は、情報を解釈し、業務システムをまたいでアクションを起こせるエージェントの可能性を模索している。それをうまく行うには、コンテキストが必要になる。すなわち、その状況が実際に何を求めているのかを、文書化されたプロセスが指示する内容だけでなく、人(またはエージェント)に伝える周辺知識、履歴、判断である。
たとえば、顧客注文の処理という、ごくありふれた業務を考えてみよう。文書化されたプロセスでは、在庫があり、顧客が適切な与信限度内にあり、必要な承認が得られていれば、注文を進められるとされているかもしれない。
経験豊富な従業員は、それだけではないことを知っている。
長年の取引先が一時的な問題を抱えている場合、自動的に拒否するのではなく、見直すべきかもしれない。異例に大きな注文は、正式な基準を満たしていても、もう一度確認する価値があるかもしれない。一見ルーチンに見える案件でも、顧客や注文について現場が知っている情報を踏まえ、別の対応が必要になることもある。
これは、文書化されたプロセスが間違っているということではない。実際のプロセスには判断が含まれているということだ。
人は、こうした調整を必ずしもルールとして意識せずに行える。次のステップに進む前に一旦立ち止まり、何かを確認したり、同僚に尋ねたりする。やがて、こうした小さな判断は、仕事の進め方そのものの一部になっていく。
AIエージェントは、ワークフローだけからこうしたすべてを確実に導き出すことはできない。
エージェントにも同じことを学ばせるべきか
あらゆる例外を捉え、組織の暗黙知をすべてルールに変換しようとするのは現実的ではない。望ましいことですらないかもしれない。
企業がエージェントに何をさせるかを定義し始めると、現場の人々が実際にどのように意思決定しているのかを、より詳しく見ざるを得なくなる。これまで自然に行われてきた慣行が、突然、精査の対象となるのだ。
しかし、こうした慣行を可視化すると、別の問いが浮かび上がる。エージェントにも同じことを学ばせるべきなのだろうか。
一部の慣行は、企業が依存する価値あるビジネス判断を反映しているかもしれない。一方で、時代遅れの方針への対処策や、何年も前には理にかなっていたが見直されないまま残っている習慣にすぎないかもしれない。
この区別は重要だ。今日の仕事の進め方をそのまま再現するようエージェントに指示することは、うまく機能しているものだけでなく、とうに変えるべきだった慣行まで引き継がせることになりかねない。
既存の慣行に従うようエージェントに指示する前に、企業はその慣行がなぜ存在しているのかを問うべきである。
AIは企業に「本当の運用実態」を突きつける
エージェント型AIをめぐる議論の多くは、エージェントが最終的にどれだけの業務を担えるようになるかに焦点を当てている。しかし、エージェントに何をさせるかを決めることは、企業に対して、今日どのように業務が行われているかを、より詳しく見るよう迫るものでもある。
「ただし」の後に続くものは、プロセスが実際にどのように機能しているかについて、多くのことを明らかにしてくれる。
企業はエージェントに既存のプロセスを教え込むことができる。問われるのは、そのプロセスがどれだけのコンテキストに依存しているか、そしてエージェントがそのコンテキストを保持することを学ぶべきかどうかである。



