10月1日、ナイキのエリオット・ヒル最高経営責任者(CEO)は、同社が事業運営モデルを変更する意向であり、その構造改革に伴い人員削減が必要になることを認めた。ヒルCEOは、どれだけの雇用が消滅するのか、どこで削減が行われるのか、あるいはどの従業員が影響を受けるのかについては明確にしなかった。同氏によると、それらの決定は2027年以降に順次開始されるという。
従業員にとっては、自らの職業上および経済的な将来に関する不確実な状態が何カ月も続くことになる。
明確な時期を示さないナイキとは対照的に、メタが今年4月に発表した計画では、全従業員の約10%に相当する約8000人の人員削減を行うことが従業員に知らされた。同社はさらに6000人の採用計画も取り消した。メタは4月に声明を出し、約1カ月後の5月20日から解雇通知を開始した。
「有意義な事前の通知を行うことと、長期間にわたって曖昧な状態に置くことの間には重要な違いがある」と、ラトガース大学の組織心理学プログラムで教職を務める組織心理学者のカトリーナ・モントン博士は語る。「前者は準備のための計画立案と尊厳の維持を支援できるが、後者はそれ自体が重大なストレッサー(ストレス要因)となり得る」
決定が確定する前に人員削減を発表する理由
影響を受ける従業員を特定する前に人員削減を伝えることには、雇用主側にも正当な理由がある。
大規模な構造改革には、法務や人事を含む複数の業務部門にわたる連携が必要となる。また、国によっては決定が最終決定となる前に事前協議の要件を満たさなければならない場合もある。
ナイキは、事業運営の強化、サプライチェーンの近代化、地域ごとの責任体制の再編、インドでの能力構築に向けた数年規模の取り組みについて説明した。
ヒルCEOは発表が引き起こす不確実性を認め、決定が下されるにあたって、直接的な対話、透明性の確保、そして影響を受ける従業員への支援を行うと約束した。これらの約束がどのように実践されるかは、今後見極める必要がある。
失業の可能性に直面している人々には、自身の財政状況を見直し、転職の機会を探り、医療保険の選択肢を検討し、失業への備えをする時間が必要だ。突然の解雇はそのような検討期間を奪い、従業員が十分な情報に基づいた判断を下せないまま放置されるリスクがある。移行支援を伴う事前の告知は、雇用関係を終了する際により配慮の行き届いた方法となり得る。
ローマー=フリードマン・バーマン法律事務所の創業者兼マネージング・パートナーであるピーター・ローマー=フリードマン氏は、雇用主は人員削減を行う前に労働者に対して「可能な限り長い予告期間」を与えるべきだと考えている。「連邦のWARN法は、大量レイオフの前に雇用主が労働者へ60日前に通知することを義務づけているが、ほとんどの労働者が新しい仕事を見つけるには到底十分な時間ではない」
事前通知以外にナイキが果たすべき対応について問われたローマー=フリードマン氏は、「少なくとも6カ月分に相当する手厚い退職金と福利厚生の提供」、そしてレイオフが特定の従業員グループに不当に偏って影響を及ぼさないための保護措置を提言した。
人員削減の不確実性の長期化が従業員に与える影響
事前に行われる警告は、従業員にとって貴重な準備時間となる。しかし、不確実な状態が長期化することは、重大な精神的・組織的コストをもたらす可能性もある。
学術誌『ヒューマン・リレーションズ』に掲載された2005年の研究では、公立病院における人員削減プロセスの3つの段階で従業員の反応を調査した。研究者らは、雇用の不確実性と自身で状況をコントロールできているという感覚が、感情的消耗や仕事への満足度に直接関係していることを突き止めた。
また研究者らは、不確実性、自己コントロール感、満足度に関する組織全体での指標は、人員削減が進むにつれて改善あるいは安定することも発見した。
「人間的な観点から見れば、不確実性の長期化は非常に大きな負担となる。なぜなら、自らの収入、アイデンティティ、人間関係、そして将来の計画に対する極めてリアルな脅威に対処しながら、業務に集中することを求められるからだ」とモントン氏は指摘する。「時間が経つにつれ、そのストレスは人々の注意力とエネルギーを奪う。エンゲージメントが低下し、リスクを取ることや自分の意見を言うことに消極的になり、自己防衛や他の選択肢の準備に傾倒するようになる。これは必ずしも回復力や忠誠心の欠如を意味するのではなく、職場での自分の未来が不確実であると感じたときの合理的な反応なのだ」
従業員にとって、実生活での影響は深刻なものになり得る。
マイホームの購入を検討していた人はその決断を延期するかもしれない。別の従業員は新たな金銭的負担を負うことを躊躇するかもしれない。子供や親族を養っている従業員は、医療保険の維持や定期的な支出の確保について不安を抱くかもしれない。
このような不確実性は、離職する意図のなかった従業員に対しても、他の選択肢を模索し始めるきっかけを与える可能性がある。自分の職務が削減されるかどうかを知るために何カ月も待つのではなく、念のために転職活動を開始する人もいるだろう。雇用主にとって、これは手放したくない優秀な人材を失うという別のリスクをもたらす。
雇用主がどの職務を削減すべきか熟考している間に、重要な優秀人材は残留すべきかどうかをすでに判断し始めている可能性がある。自主退職によって強制的な人員削減の人数が減る可能性はあるものの、退職者が必ずしも削減対象の職務から出るとは限らない。
人員削減は残留する従業員にも影響を及ぼす
全米の従業員1万3683人を対象とした研究で、研究者らは、レイオフ(解雇)、オフショアリング(海外委託)、アウトソーシング(外部委託)の後も会社に残った従業員と、人員削減を行っていない組織の従業員を比較調査した。
人員削減後も残留した従業員は、人員削減を行わなかった組織の従業員と比較して、組織の業績や自らの雇用の安定性に対する認識が低く、組織への愛着が弱まり、離職意向が高くなっていることが報告された。
これらの調査結果は、将来的な人材の引き留めや持続可能性について重要な懸念を提起している。
効率化を目的とした構造改革が、結果的に従業員の組織へのコミットメントを弱める要因を作り出すこともある。雇用を維持された従業員は、解雇を免れた罪悪感(サバイバーズ・ギルト)を抱き、自身の雇用の安定性や組織の長期的な方向性に疑問を持ち続ける可能性がある。
この結果は、人員計画が解雇等の影響を受けた従業員の支援だけで終わってはいけない理由を強調している。雇用主は、残された人々が置かれる環境についても配慮しなければならない。
学術誌『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・マネジメント』に掲載された分析研究では、1万1256人を対象とする37のサンプルを検証し、人員削減の影響を受けた従業員が感じる公平性と組織へのコミットメントとの間に正の相関関係があることが示された。
人員削減を免れた残留従業員にとって、結果がどのように配分されたかよりも、雇用主がどのように意思決定を行ったかの方が組織へのコミットメントにより強く関連していた。この発見は、一貫性があり偏りのない意思決定がいかに重要であるかを明確に示している。
「従業員はビジネス上の根拠、意思決定の基準、誰が決定を下しているのか、そして偏見や意図的な不当扱いを低減するためにどのような保護措置が存在するのかを理解する必要がある」とモントン氏は述べる。「たとえ結果が厳しいものであっても、プロセスが公正であれば人々はより高い尊厳と自己コントロール感を持つことができるため、公正なプロセスが極めて重要なのだ」
従業員が事業環境の変化や構造改革の必要性に直接影響を与えることは難しいかもしれない。しかし彼らは、経営陣によるコミュニケーションの透明性や、会社が支援の約束をどれだけ忠実に実行するかを厳しく評価するだろう。
成功に必要な人材、信頼、そして能力を維持したまま構造改革を乗り越えようとする組織にとって、不確実性の管理は、人員削減そのものの管理と同等の細心の注意を払う価値がある。



