その場で最も有能な人物であっても、チャンスを逃すことがある。
キャリアでの成功は、知識の量だけで決まるわけではない。人とどのように関係を築き、自身の価値をどう伝え、計画通りにいかない事態にどう対処するかという点も重要だ。
行動科学の研究者で著者のヴァネッサ・ヴァン・エドワーズとの会話の中で、彼女はこの点を物語るあるエピソードを語ってくれた。
ヴァネッサはテレビ番組のビジョンをまとめた15枚のスライド資料を用意していた。内容は熟知しており、プレゼンテーションの準備は万全だった。
しかし発表前、役員たちとの雑談で打ち解けることに苦戦した。プレゼンを成功させることに集中しすぎるあまり、良好な関係(ラポール)を構築する機会を逃してしまったのだ。最終的に放送局は採用を見送り、彼女には「番組を牽引するほどの存在感が感じられない」と伝えた。
ヴァネッサはその失敗に挫けることなく、それを出発点として「効果的な会話とは何か」についての長年にわたる研究を開始した。
彼女の経験は、すべてのプロフェッショナルが理解すべき教訓を示している。つまり、専門知識は重要だが、それを周りに認識してもらえるかどうかは、人とつながる能力にかかっているということだ。
最近の職場に関する研究も、このギャップを裏付けている。専門職の多くは技術的な資格や専門スキルが成功の決め手になると考えがちだが、採用担当者は技術的な準備と対人スキルの準備との間に30%以上の「認識のギャップ」が存在すると一貫して報告している。そして、主体的なコミュニケーション力こそがキャリアアップにおける唯一最大の決定要因だと位置づけているのだ。
この教訓を実践するための3つの方法を紹介する。
1. コミュニケーションを「性格」のせいにしない
ビジネスパーソンが犯しがちな最大の過ちの1つは、自身のコミュニケーション能力が固定化されたものだと思い込むことだ。
「自分は不器用だから」「人脈作りが苦手だから」「生まれつき大勢の前で話すのが得意ではないから」
こうした言葉は、後天的に伸ばせるはずのスキルを「変えられない自分の性質」にすり替えてしまう。
私自身にも身に覚えがある。ロースクール時代、授業で指名されるのが怖くてたまらなかった。人前で話すことは不安の種であり、その不快感を「自分には向いていない」という証拠にしてしまうこともできただろう。
人前で話す恐怖を克服するのに役立ったアプローチの1つは、自分を不安にさせるまさにその行動を実践する機会を探すことだった。不安のせいで黙っていたくなったときこそ、あえて挙手した。時間をかけるうちに、恐怖を後退する理由ではなく、スキルを磨く機会として捉えられるようになった。
この思考の転換は重要だ。自信とは、行動を起こす前に生まれるものではなく、行動の結果として後からついてくるものだからだ。
人脈作りが苦手なら、会話のきっかけを作る練習をしよう。会議での発言が難しければ、事前に発言内容を1つ用意し、必ず発言すると自分に誓おう。言いづらい会話に不安を感じるなら、最初の切り出し方をリハーサルしよう。
新しい性格を手に入れる必要はない。必要なのは、練習しようとする意志だけだ。
2. 自分らしさを失わずに適応する
効果的なコミュニケーションとは、どんな場面でも同じやり方を貫くことではない。目の前の会話が何を求めているかを察知することだ。ヴァネッサは最新の著書『Conversation: How to Connect with Anyone and Make Every Interaction Count』で、このテーマを深く掘り下げている。
目標は、場面ごとに別人に変身することではない。自分らしさを保ちつつ、アプローチを適応させることだ。
これはキャリアの初期段階において特に重要となる。その場で最も経験が浅いからといって、貢献できる価値がないわけではない。確信をもって語るのではなく、好奇心を持って会話に臨めばよいのだ。
そのための実践的な方法の1つが、より良い質問を投げることだ。
次に何を話すかばかり考えるのをやめ、目の前の人物に興味を持とう。関連する質問を重ねてみたり、思いもよらなかった視点を探ってみたりするのだ。相手に「単に良い印象を与えようとしているだけの会話ではない」と感じさせることが大切だ。
ただし、好奇心のために明確さを犠牲にしてはならない。
例えば、提案を行う際、不要な謝罪や予防線を張ることで力強いアイディアを弱めてしまいがちだ。「これが良い考えかどうかは分かりませんが……」という言い方は、聞き手が提案の中身を聞く前から自信のなさを伝えてしまう。
それを「〜という理由から、このアプローチを検討することをお勧めします」という表現と比較してみてほしい。
自分が知らないことを認めつつも、知っていることを自信を持って伝えることは可能だ。目指すべきは自分を完璧に見せることではなく、メッセージをわかりやすく伝えることである。
ヴァネッサは、自信に満ちた建設的な言葉を選ぶための実践的なステップとして、次の3つを推奨している。
- 最初の5単語を重視する:メールの出だし、履歴書の冒頭、LinkedInの肩書、会議や会話で発する最初のひとことすべてに当てはまる。
- 「〜と思います」「〜のはずです」ではなく「〜だと確信しています」と言う。
- 短く伝える:過去の著書で読者がハイライトした箇所を確認したところ、最も短く直接的な一文が最も熟読されていたという。
こうした変化は、単なる言葉のあやにとどまらない。行動科学の研究によれば、あいまいで自信なさげな表現をやめ、論理的で言い切るフレーズを使うプロフェッショナルは、肩書や実績だけに頼る同僚に比べ、キャリアの昇進や報酬において最大20%の優位性を得ているという。
3. 失敗を「アイデンティティ」ではなく「情報」として捉える
ヴァネッサにとって、テレビ番組での苦い経験は単なる恥ずかしい思い出で終わる可能性もあった。しかし彼女はそれを、自身のスキルの欠陥を特定し、人がいかにして意味のあるつながりを構築するかを探求する機会に変えた。
これこそが、単に挫折を経験することと、挫折によって自分を定義づけてしまうことの違いだ。
職場でうまくいかないことがあると、極端な結論を出してしまいがちだ。昇進できなかったから自分にはリーダーシップがないと思い込む。プレゼンが不発に終わったから自分は話し手として失格だと決めつける。交流会での会話がぎこちなかったから自分は人付き合いが苦手だと結論づける。
しかし、1つの経験が永続的な自分のアイデンティティになる必要はない。
「自分は何がいけないのか?」と問い詰めるのではなく、「ここから何を学べるか?」「足りなかったスキルは何か?」「次回はどう変えるべきか?」と問うてみよう。
この思考法により、失望的な結果を有益な情報へと変えることができる。
仕事における結果のすべてをコントロールすることはできない。だが、準備の仕方、フィードバックへの対処法、経験を成長に活かすかどうかは自分でコントロールできる。成長に必要なのは、すべての試みを成功させることではない。成功しなかった試みから学ぼうとする姿勢なのだ。
他者とのつながりをキャリア戦略に組み込む
多くのプロフェッショナルは、履歴書や資格、成果物、プレゼンテーション資料に多大な投資をし、それら自体が自分の魅力を雄弁に語ってくれると思い込んでいる。
もちろんそれらも重要だが、プレゼン前の雑談や同僚への質問、意見が対立したときの対応も同じくらい重要だ。人とつながる力は、能力の代用品ではない。それは、能力を可視化し、役立て、信頼へと変えるための手段なのだ。
今週、自分のキャリアを推進するのに役立ちそうなコミュニケーションスキルを1つ特定し、意識して実践してみよう。次の会議で、より深い質問を投げてみる。余計な謝罪をせずに自分の提案を共有してみる。憧れの人に連絡を取り、すぐに何かを要求するのではなく、相手を知ることに集中してみる。
小さな変化が、見過ごしていたかもしれないチャンスを生み出すはずだ。
意味のあるプロフェッショナルな関係を築くために、生まれつきカリスマ性のある話し手である必要はない。
必要なのは、その方法を学ぼうとする意欲だけだ。
ヴァネッサ・ヴァン・エドワーズとの対談をより深く知りたい方は、ポッドキャスト番組『Big Swings Only』の該当エピソードをお聴きいただきたい。



